2011年7月14日木曜日

世界最高水準のメラノーマ治療

世界最高水準のメラノーマ治療

国立がん研究センター中央病院
〒104-0045東京都中央区築地5の1の1
(電)03・3542・2511

国内の死因トップはがんだが、その中でも皮膚がんの患者数は決して多くはない。しかし、身体の表面の皮膚に生じるがんの種類は多く、悪性黒色腫(メラノーマ)のような非常に悪性度の高いものもある。

また、一見、シミやホクロ、あるいは湿疹のような形をしているため、見極めを誤って治療の手を加えると、進行や再発の原因にもなりかねず、診断と治療には高いレベルが求められる。そんな皮膚がん治療で全国トップの実力はもとより、世界最高水準の治療を行っているのが、国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科だ。

「国内では患者数が少ないため、薬の開発は遅れていました。日本はメラノーマの手術や放射線治療は世界レベルであっても、使える薬の種類や数が世界とは 違う。しかし、メラノーマの患者さんは国内にもいます。そのドラッグラグをずっとなんとかしたいと思ってきました。それがようやく解消されつつあります」

こう話す同科の山崎直也科長(51)は、皮膚がん治療一筋に、国内で最も多くのメラノーマの治療を行っている。その新薬について昨年秋から国際共同治験に参加した。皮膚がんの治療薬で、臨床試験を世界各国と同時に行っているのは史上初めての快挙である。

「新薬の効果が得られればメラノーマの治療は飛躍的に進歩します。まさに治療の転換期ともいえるのです」

もともと小児科医を目指して医学部に進学した山崎科長だったが、研修医時代に皮膚がんの治療に出合った。内臓のがんほど知られていないが、皮膚にできるがんも血管やリンパ管の中に入って流れに乗り、全身の臓器へと転移して命を奪うことがある。種類も多く、性質もがんによってさまざま。患者と向き合ううちに、いつの間にか皮膚がん治療に没頭していたという。

皮膚がんは進行の早い悪性度の高いものばかりではありませんが、小さくても顔にできた場合は、治療による傷跡がQOL(生活の質)を下げる恐れがあります。また、むやみにがんの部分に触れることで、再発や転移につながるため、診断と治療には高い専門性が求められるのです」(山崎科長)

しかし、日本では診断と治療が、まだ普及しているとはいいがたい状況だ。それを打開するため山崎科長は、皮膚がん治 療のガイドラインの改訂版にも着手している。夢は「日本から世界初の治療法を発信したい。私ができるのは、まず遅れている薬物治療の面で世界の最先端治療 に追いつくことです。私たち皮膚腫瘍科はチームワークが良く、メンバーは皆同じ目標を持っています。次世代の若い先生たちとともに、ぜひ世界ナンバーワン を実現したいと思っています」と山崎科長。

その夢に向けてまい進中だ。 

<データ>2010年実績
  • 悪性黒色腫88人
  • 有棘細胞がん52人
  • 基底細胞がん28人
  • 乳房外パジェット病19人
  • 隆起性皮膚線維肉腫10人
  • 血管肉腫9人
  • 病床数18床
2011年7月11日 zakzak

男性はがん死亡率が高い

がん患者の死亡率、女性より男性の方が高い 米研究

ほとんどのがんで、男性のがん患者は女性のがん患者よりも死亡率が高いとする研究結果が12日、米がん学会(American Association for Cancer Research、AACR)の学会誌「Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention」に発表された。

米国の研究チームは、36種類のがんについて、患者の5年後の生存率を調べた。その結果、男女の開きが最も大きかったのは口腔がんで、死亡の割合は女性 1人に対し男性5.51人だった。次いで開きがあったのは喉頭がんで、女性1人に対し男性5.37人。以下、下咽頭がん(同4.47人)、食道がん(同 4.08人)と続いた。

この傾向は、死亡率が最も高いがんにも見られた。肺がん患者の5年後の死亡割合は女性1人に対し男性2.31人、結腸直腸がんでは女性1人に対し男性1.42人だった。

また、すい臓がんは女性1人に対し男性1.37人、白血病は同1.75人、肝がんでは同2.23人だった。

研究者らは、このような男女差が生まれる原因を特定するのは難しいとしながらも、腫瘍の振る舞いが男女で違う可能性、メディカルチェックを定期的に受ける確率が男女で違う可能性を挙げた。

この研究によると、米国では、がんと診断された時点で、女性よりも男性の方でがんが進行している可能性が高いという。

2011年07月14日 AFP

がん抑制遺伝子

がん抑制遺伝子に肝臓硬くする働き 阪大など発見

がんを抑制することで知られる遺伝子p53が、肝炎や肝硬変の原因になっていることを、大阪大などのグループが明らかにした。p53は体中にあり、がん化した細胞を攻撃してくれる一方、肝臓で活性化し過ぎると、細胞を硬くしてしまう物質が多く現れていた。治療が難しい肝硬変を治したり、進行を抑えたりできるようになる可能性がある。

大阪大大学院医学系研究科の小玉尚宏研究員らは、肝臓で働くp53が多いマウスと少ないマウスをつくって比較した。p53が多いマウスは生後6週間で、 すでに肝臓が硬くなり機能が落ちる「線維化」が進んでいた。ヒトの肝細胞でも、重い肝硬変の細胞ほどp53が多く活性化していた。

肝炎ウイルスやアルコールの刺激でp53が活性化されると、CTGFというたんぱく質が多く現れるらしい。このたんぱく質は傷を治したり、軟骨をつくっ たりするのに欠かせないが、増え過ぎると細胞を硬くしてしまう。同研究科の竹原徹郎教授は「p53の発生をコントロールして線維化が抑えられれば、肝硬変の治療ができるようになるかもしれない」と話している。

2011年7月14日 朝日新聞

2011年7月13日水曜日

NK細胞を使ってがん細胞退治

がん細胞免疫逃れる仕組み解明/弘大・鷹揚郷研究グループ

弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座の大山力教授と、鷹揚郷腎研究所生化学研究部部長の坪井滋理学博士を中心とする膀胱(ぼうこう)がんの研 究者グループは、がん細胞がある種の糖たんぱく質を発現させて免疫から逃れるという新たな仕組みを解明した。この仕組みを持つ細胞の有無が悪性度の高いがん細胞の診断や患者の病後予測、治療方針を決める判断材料になるほか、仕組みを利用することで新しいがん治療薬の開発につながることが期待されている。
研究成果は、生化学分子生物学分野のトップジャーナルである「The EMBO Journal」電子版に6月28日付で紹介された。

がん細胞は血液やリンパ液の流れに乗って転移するが、血中にはがん細胞を攻撃するリンパ球の一種「ナチュラルキラー(NK)細胞」が存在しており、通常であればNK細胞はがん細胞の表面に発現するたんぱく質(MICA)を目印に攻撃し、転移を防御する役割を果たす。
しかし、がん細胞の中には目印となるMICAを消したり、切り離してNK細胞の攻撃を逃れて転移するものも存在することが、これまでに明らかになっている。
大山教授と坪井博士らの研究者グループは膀胱がんの転移について研究しており、MICAを消したり、切り離すがん細胞ではなく、酵素の一種「C2GnT」が出ている「特別なタイプ」(坪井博士)のがん細胞に着目した。

研究の結果、このがん細胞はMICAに特殊な形の糖を付けてC2GnTを作り出し、さらにガレクチンというたんぱく質がかぶさることで糖たんぱく質を発現し、NK細胞に認識できなくする“盾”のような仕組みを持って転移することが分かった。
大山教授、坪井博士によると、膀胱がんで膀胱を全摘出した患者への追跡調査で、手術後2000日の生存率はC2GnTを作るがん細胞を持たない患者が約9割なのに対し、C2GnTを作るがん細胞を持つ患者は約3割と大きな開きがあった。
またマウスを用いた実験では、C2GnTを作るがん細胞を移植した場合と、作らないがん細胞を移植した場合では、肺に転移する確率に10倍近い差が表れたという。

現在、研究者グループはがん細胞がC2GnTを作製できなくする試薬の開発を進めており、大山教授は「抗がん剤とは全く違い、自分のNK細胞を使ってがん細胞をやっつける薬となり、副作用はないものになる」と期待する。
研究者グループは、膀胱がん以外のがんにも解明した仕組みが当てはまるか研究を進めるほか、この仕組みを応用して臓器移植の拒絶反応を抑制する研究にも取り組む方針。

坪井博士は「がん細胞が死ぬのは、ある種の拒絶反応。移植の拒絶を抑えるためにこの仕組みを逆利用する」と述べた。

2011年7月13日 陸奥新報

抗がん免疫活性回復の新抗がん剤

北海道大学、がん細胞による免疫応答抑制の新たな仕組みを解明

がん細胞による免疫応答抑制の新たな仕組みを解明

<研究成果のポイント>
・がん細胞が免疫細胞に作用して,がん拒絶から発がん促進へ機能転換させることを世界で初めて解明。
・免疫細胞が産生する因子を介して,悪性度のより高い癌細胞の活性,抗癌剤抵抗を増強することを解明。
・癌細胞の免疫調節能に着目することで,抗がん免疫活性回復を主眼とした新しい抗がん剤開発に期待。

<研究成果の概要>
がん細胞のなかでも「癌幹細胞」という,より悪性度の高い集団が,悪性化,抗がん剤治療への抵抗性に大きく関係しているが,その活性にがん細胞周囲の正常細胞が関与することが注目されている。本研究では,通常はがん細胞排除に働く免疫細胞マクロファージが,癌幹細胞の働きにより逆に発癌活性能を獲得することを同定した。さらに,マクロファージからMFG-E8とIL-6という因子の産生を誘導することで,癌幹細胞の更なる活性化が惹起され,抗がん剤への治療抵抗に繋がることを明らかにした。以上の結果は,癌細胞による免疫制御に着目した新しいタイプの抗がん剤開発に繋がる画期的な成果です。


<論文発表の概要>
研究論文名:Tumor-associated macrophages regulates tumorigenicity and anticancer drug responses of cancerstem/initiating cells.(腫瘍関連マクロファージは癌幹細胞の腫瘍活性,抗癌剤抵抗性への制御能を有する)
著者:氏名(所属)地主 将久,千葉 殖幹,吉山 裕規(北大遺伝子病制御研究所・感染癌研究センター),増富 健吉(国立がん研究センター・癌幹細胞プロジェクト),木下 一郎,秋田 弘俊(北大医学研究科・腫瘍内科学),八木田 秀雄(順天堂大学・免疫学),高岡 晃教(北大遺伝子病制御研究所・分子生体防御分野),田原 秀晃(東京大学医科学研究所・先端医療研究センター)
公表雑誌:Proceedings National Academy of Sciences of United States of America(米国科学アカデミー紀要)


<研究成果の概要>
(背景)
抗がん剤による治療への抵抗性,再発の大きな要因として,「癌幹細胞」という,とりわけ悪性度が強く治療に反応しにくい特定の細胞集団が存在することが,最近判明してきました。この癌幹細胞の活性化,維持のメカニズムを解明することで新たな制がん法の開発に繋げることが可能となります。
(研究手法)
正常幹細胞の代表格である造血幹細胞の維持,活性には骨,線維芽細胞など幹細胞の周囲を構成する細胞群との相互作用の重要性が指摘されていました。そこで本研究では,がん細胞周囲に存在する正常細胞の機能に注目しました。とりわけ本研究では,癌幹細胞と免疫細胞との相互作用について検証しました。
(研究成果)
通常はがん細胞の排除に働くと考えられているマクロファージという特定の免疫細胞が,癌幹細胞との相互作用を介して発癌を促進する機能を獲得することを発見しました。その発癌活性に重要な役割を果たすのが,マクロファージから産生される「MFG-E8」と「IL-6」という分子で,これらは癌幹細胞に働くことで,その増殖活性や抗がん剤への抵抗能の誘導に重要な役割を果たすことを同定しました。以上より,癌幹細胞が本来腫瘍への拒絶能を有する免疫細胞機能を発癌促進の方向に転換することを明らかにした点で,大変重要な意義を有すると考えられます。
(今後への期待)
今後,癌幹細胞から特異的に産生され,免疫細胞の機能転換を引き起こす分子を同定し,その役割を検証することで,癌幹細胞と免疫細胞相互作用を標的とする新たなタイプの抗がん剤の開発が可能になると考えられます。これは既存の抗がん剤への感受性を高め再発予防につながる可能性を有するため,将来の制がんにおける有力な武器になりうると考えられます。

2011年7月12日 プレスリリース

2011年7月11日月曜日

がん染色体中心部の謎を解明

染色体中心部の謎に迫る=たんぱく複合体の構造解明-がん研究進展に期待・早大など

ヒトの染色体の中心部「セントロメア」にあるDNAとたんぱく質の複合体の立体構造が初めて解明された。早稲田大と大阪大、横浜市立大の研究チームが 10日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。この複合体が染色体になかったり、中心から外れた所にあったりすると、細胞分裂などの際、染色体が正しく 2本に分離しない。
研究成果は、染色体数の異常で起きるダウン症などの病気や、染色体がちぎれてがん細胞ができる仕組みを解明する重要な手掛かりになるという。

2011年7月11日 時事通信

2011年6月24日金曜日

がん排除する免疫システム

免疫応答開始に必要な免疫シナプスを形成するメカニズムを発見

微小管を伝う分子モーターのダイニンが免疫センサーを運び、細胞活性化を調節

私たちの身体は、外部から侵入したウイルスなどの抗原を除去したり、生体内で発生したがんなどの異物を見つけ出して排除したりする免疫システムを備えてい ます。このシステムに重要な細胞の1種がT細胞で、抗原の細かな違いを認識して特異的に反応する「獲得免疫」を開始させます。この獲得免疫により、再び同 じ抗原と出会った際には速やかに免疫応答を開始することができるため、ワクチンの原理にも利用されています。

T細胞は、抗原の情報を受け取る際に、抗原提示細胞と強固に接着して免疫シナプスを形成します。これまでの研究から、免疫シナプス形成の前には、T 細胞受容体などからなる小さな集合体「ミクロクラスター」が形成され、それらが接着面の中心へ移動することが分かっていました。しかし、この移動のメカニ ズムは不明なままでした。

免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫シグナル研究グループらは、細胞内の管状構造物「微小管」を足場にして駆動するモータータンパク質「ダイニ ン」が、このT細胞受容体のミクロクラスターを運搬することを見いだしました。この発見は、人工の細胞膜を作製して免疫シナプスを再現し、蛍光タンパク質 を融合した生細胞内分子イメージングで詳細に観察した結果によるものです。

さらに、この移動で免疫シナプスの中心に集まったT細胞受容体が分解されると、T細胞の活性化が収束することも突き止めました。これまでダイニンは、細胞 分裂や菌の鞭(べん)毛運動に必要な動力を生み出す分子モーターとして知られていましたが、それ以外にも、免疫応答の基本的なメカニズムである抗原認識と 活性に関わっているという新たな知見は、これまでの概念を変えた免疫調整薬開発につながると期待できます。

2011年6月24日 プレスリリース