2011年8月2日火曜日

抗がん剤とビフィズス菌で高い治療効果

がん治療にビフィズス菌、米で第1相治験へ 信州大発創薬VBアネロファーマ

信州大学発の創薬ベンチャー、アネロファーマ・サイエンス(東京・中央、三嶋徹也社長)は同社が開発した抗がん剤候補を使った治療法について、第1相臨床試験(治験)を来年初めにも米国で始める。がん組織の深部に集まるビフィズス菌の性質を利用して抗がん剤を送り込み、高い治療効果を見込む。製品化できればピーク時の年間売上高で400億~500億円以上を見込めると期待する。
「APS001F(開発番号)」は生きたビフィズス菌の一種で、「シトシンデアミナーゼ」という酵素を生産するように遺伝子組み換え技術で生み出した。
2011年8月1日 日経産業新聞

がん退治する免疫療法を実用化へ

NK細胞の新培養法開発

バイオベンチャー「テラ 」(東京都千代田区)は九州大と共同で、免疫細胞の一種「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)のがん攻撃能力を高める培養方法を開発、特許出願したと発表した。
この方法を使うと、がん細胞などを殺傷するNK細胞中の酵素の活性を約4~10倍に高めた上に、NK細胞の数を数百倍に増やすことができる。これまで報告されている方法よりもがん細胞殺傷効果が数倍高いという。
テラはこれとは別に、NK細胞を約6千倍に大量培養する方法を開発しており、これらの方式を組み合わせて、NK細胞を体外で培養して体内に戻し、がんを退治する免疫療法を実用化したいとしている。

2011年8月2日 短信

2011年8月1日月曜日

腎細胞がん、皮膚がんへ新分子標的薬

第2世代の腎細胞がん薬アキシチニブ 「ファイザーが狙うのはセカンドライン」

今年6月に米シカゴで開催された「ASCO(米国臨床腫瘍学会)2011」では、悪性黒色腫腎細胞がん肉腫といった難治がんな どで、分子標的薬などの有望な臨床成績が発表された。このほど、サイニクス社と米ヘルスケアコンサルタント企業Kantar Health共催の「ASCO 2011キーハイライト・セミナー」で来日したKantar Healthのオンコロジースペシャリストのゴードン・ゴコナワ氏(シニア・コンサルタント)が本誌のインタビューで、ASCOでの報告を踏まえ、注目さ れる開発品の臨床試験の結果や上市後のインパクトなどを語った。

アステラスの腎細胞がん薬チボザニブ 「市場でのポテンシャルは大きい」

腎細胞がん(RCC)は患者数が少ないながらも、国内で既に分子標的 薬4剤(ネクサバール=バイエル、スーテント=ファイザー、アフィニトール=ノバルティス、トーリセル=ファイザー)が上市され、薬剤が込み合ってきた市 場。しかし、大手外資や内資によって、これに続く分子標的薬が開発中で、アキシチニブ(ファイザー)などが効果や安全性の面から臨床現場から期待されてい る。

同剤はスーテントやネクサバールと同じマルチキナーゼ阻害剤だが、VEGF1、2、3を選択的に阻害する第2世代の分子標的薬といわれる。転移性RCC患 者に対するセカンドラインにおけるネクサバールと比較したフェーズ2試験(AXIS1032)では、主要評価項目のPFS(無増悪生存期間)が優れている ことが分っている(4.7カ月対6.7カ月)。毒性プロファイルを見ても大きな違いない。

ただし、セカンドラインの標準薬になり得るかどうかについては課題もあるものの、ゴードン氏によると、mTOR阻害剤アフィニトールの臨床試験結果 (RECORD-1試験)と比べても、患者背景は異なるものの、PFSはアキシチニブの4.8カ月に対し、アフィニトールは4.9カ月であり、「それほど 大きな差は出ていない」という。毒性に関しては、「大きな差は見られないが、日本人ではアフィニトールを投与した患者に間質性肺炎が出るということで懸念している」と解説。

これらを踏まえ、同氏は、アキシチニブ以外に、スーテント、トーリセルを有するファイザーの戦略について、患者の臨床的背景で薬剤の使い分けを進めるので はないかとの考えを提示。予後の良い患者では、ファーストラインでスーテント、セカンドラインでアキシチニブ、サードラインでトーリセル、予後の悪い患者 ではファーストラインでトーリセル、セカンドラインでスーテントもしくはアキシチニブという形で、患者の臨床背景によらず、アキシチニブをセカンドライン として位置付けるような戦略をとる可能性があるとの見方を示した。

アキシチニブ以外にも新規の分子標的薬の開発が進行中で、ゴードン氏はそれらの薬剤の特徴や想定される位置づけについても説明。FGFR/VEGFR阻害 剤ドヴィチニブについては開発元のノバルティスが、アフィニトール、スーテントの2剤を投与しても効果が期待できない患者のサードラインとしてのポジショ ニングを目指すのではないか、との考えを提示。一方、アステラス製薬が米アヴェオ社と開発中のVEGFR阻害剤チボザニブに関しては、外科手術後の予後の 良い患者を対象にしたフェーズ2試験で、PFSは14.8カ月という結果が得られている。現在ネクサバールと効果や安全性などを比較するフェーズ3試験が 行われているが、同氏は「PFSを改善するような有効性を示すデータが出れば、RCCの市場でポジショニングが可能。国内ではRCCのステージ4の患者の 6~7割が手術を受けるので、市場のポテンシャルはかなりある」と解説した。

大きく前進したメラノーマの治療 激化する大手外資による開発競争

メラノーマ(悪性黒色腫)の新薬の展望についても語った。メラノーマの治療をめぐっては、今年のASCOの会長が開催期間中に「今年はメラノーマの年である」と発言したように、今年最も注目されているがんと いっても過言ではないだろう。背景には、米国では今年3月に切除不能・転移性メラノーマで全生存期間を初めて延長させた抗CTLA-4抗体 YERVOY(一般名:イピリムマブ、BMSが開発)が承認され、大きく治療が大きく前進したことが挙げられる。加えて、第一三共が買収した Plexxikon社と提携先のロシュグループが開発中のベムラフェニブのP3試験結果が今年の米国臨床腫瘍学会で発表され、 BRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマ患者群で化学療法群と比較して、死亡リスクを63%、有意に低下させた。

ゴードン氏はこれら2つの薬剤が揃って使用可能になった場合のBRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマに対する使い分けについて、「ベムラフェニブは約 50%という非常に高い奏効率が得られているので、腫瘍が大きく、早い奏効を求める患者には有効。エルボイは奏効率がベムラフェニブよりは低いが、長く持 続する特徴があるので、腫瘍サイズは小さく、低悪性度のがん患者に対して有効なのではないか」とコメント。一方、BRAF遺伝子変異のない患者(野生型)に対しては、ファーストラインでエルボイと化学療法を行うことになるのでは、との見方を示した。日本では両剤ともにメラノーマに対しての開発はまだ行われていない。

転移性メラノーマの新薬開発は競合が激しく、BRAF遺伝子変異型の患者をターゲットとした新薬がGSK(フェーズ3)やノバルティス(フェーズ1/2) などにより、複数開発されている。また、BRAF以外をターゲットとするMEK阻害剤の開発が、GSK(フェーズ3)、アストラゼネカ(フェーズ2)が進 めているほか、さらに一歩進み、分子標的薬同士の併用療法の開発も活発化している状況。MEK阻害剤とRAF阻害剤の併用療法をGSK、ノバルティスが実 施しているほか、ロシュがベムラフェニブとMEK阻害剤の併用療法、さらにはロシュ/中外製薬がRAFとMEKのデュアルインヒビターの開発を進めるなど 「BRAF変異のある患者での効果を増幅する効果を狙った新薬」の開発は激戦の様相を呈し始めているという。

2011年8月1日 ミクスONLINE

抗がん剤と点滴静注と嘔吐新薬

薬食審・第一部会 制吐剤の新薬を審議、承認を了承

厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は7月29日、抗がん剤投与に嘔吐などを抑える小野薬品の制吐剤を承認することを了承した。9月にも正式承認となる運び。

プロイメンド点滴静注用150mg(一般名:ホスアプレピタントメグルミン、小野薬品):「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。

経口のNK1受容体拮抗型制吐薬イメンドカプセル(一般名:アプレピタント)のプロドラッグ。がん患者の中には経口剤の服薬が困難な人がいるほか、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤が多い。こういった医療現場からの注射剤へのニーズに応えるため、今回の注射タイプの制吐薬の開発を進めてきた。

2011年8月1日

外来でがん治療ができる化学療法室

高齢者の診療機能強化
化学療法室も設置へ 千葉大病院の新外来棟

千葉大付属病院(千葉市中央区亥鼻、宮崎勝院長)は、2011年度に着工する「新外来棟」の施設内容を明らかにした。県内初となる高齢者医療センターでは、患者は移動せずに各診療科の医師がセンターを訪れて診察に当たる。通院でがんなどの治療ができる外来化学療法室を設置するなど、急速な高齢化の進展に対応して、外来診療の機能を強化する。

県内の65歳以上の高齢者の人口は、団塊の世代が高齢期を迎えるのに伴い05~15年の10年間で増加率が50%に上り、30年後の2045年には高齢者人口は200万人に達する見込み。

こうした状況を踏まえ、新外来棟には高齢患者の診療強化に向け高齢者医療センターを新設。これまで複数の疾患を抱える高齢患者は、各診療科を自ら移動して受診していたが、同センターでは各医師が出向いて患者を診察する。

がんなどの化学療法に通院で対応する外来化学療法室では、患者は日常生活を送りながら治療が受けられる。

2011年07月31日 千葉日報

がん抑制メカニズムを解明

九大、がん抑制メカニズムを解明 特定タンパク質が関与

細胞核内の特定のタンパク質が減少すると、がんを抑制するタンパク質が活性化するメカニズムを、九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授らのグループが解明し、7月31日付米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。がんの新薬開発や、高度な予後予測につながる可能性がある。

鈴木教授らは人間の細胞核内にある「PICT1」というタンパク質の性質を解明。PICT1の量が減ると、がんを抑制する別のタンパク質「p53」が著しく増加することを発見した。

PICT1はこれまで全容が分かっておらず、がんを抑える作用があると予想されていた。

2011年8月1日 共同通信