2011年12月31日土曜日

抗がん剤新薬の副作用が少ない仕組み


新しいがん治療法、米国で臨床試験へ

信大医学部(松本市)内に研究所を置くベンチャー企業「アネロファーマ・サイエンス」(東京)は来春にも、ビフィズス菌を利用したがん治療法の臨床試験を米国で始める。がん組織は酸素の少ない「嫌気的環境」にあるため、嫌気的環境を好むビフィズス菌を薬の「運び屋」として利用。併せてがん組織の内部で抗がん剤を生成する仕組みにすることで正常な組織への影響を抑え、副作用が少ないがん治療法の確立を目指す。

 同社が実用化に取り組んでいる治療法は、抗がん剤になる前段階の物質「5―FC」と、5―FCを抗がん剤「5―FU」に変える酵素を作る遺伝子を組み込 んだビフィズス菌「APS001F」を患者に投与。ビフィズス菌が集まるがん組織の内部で抗がん剤に転換し、ピンポイントでがん組織を攻撃する。

 臨床試験は米国中南部にあるがん専門病院で実施。まず第1段階の試験で、がんの種類を絞らずに、胃がんや大腸がんなどさまざまな固形がんを対象に行う。 2年ほど実施した後、続く第2段階の試験で、第1段階で特に効果が高かったがんの種類に絞って投与。両試験で計40~60人の患者に実施する予定だ。

 同社はこれまで動物実験で有効性や安全性を確認。臨床試験については米国立衛生研究所や米食品医薬品局と打ち合わせを重ね、それを基に1月中に米食品医薬品局に実施を申請する。順調に進めば、春ころに1人目の患者に投与できる見込みだ。

 同社取締役で信大大学院医学系研究科の谷口俊一郎教授=分子腫瘍学=は「がんの種類によって、ビフィズス菌が集まりやすいものと、集まりにくいものがあるかもしれないので、臨床試験を通して見極めたい」と説明。「がん組織という局所だけで大量に5―FUを作ることができるため、副作用を減らすだけでなく、従来は5―FUが効かなかった種類のがんにも効果があるかもしれない」と期待する。

 臨床試験が順調に進めば、5―FUだけでなく別のさまざまな薬を運ぶ手法としても注目されそうだ。

 同社の三嶋徹也社長は「今までにないまったく新しいコンセプトの治療法を是非、世に出したい」と話している。
2011年12月31日 信濃毎日新聞

2011年12月27日火曜日

がん細胞に抑制効果の菌を発見

アクネ菌に皮膚がん抑制効果 三重大院講師ら確認

ニキビの原因となるアクネ菌が、皮膚がんの一種で転移の早い「悪性黒色腫」の抑制に役立つことを、三重大大学院医学系研究科の山中恵一講師らのグループがマウスを使った実験で明らかにした。米科学誌「プロスワン」電子版に22日、掲載された。
グループは、白血球内の免疫細胞の中に、アクネ菌と腫瘍に反応する細胞がある点に着目。悪性黒色腫を移植したマウスの患部に菌を直接注射したところ、周辺組織の免疫機能が活性化し、アクネ菌とともに腫瘍のがん細胞も排除し始めた。
  アクネ菌を1カ月間で2回注射したマウスは、注射していないマウスに比べて腫瘍の成長が半分にとどまり、がん細胞も大幅に減っていた。山中講師は「今後はアクネ菌のうち、どの成分が効果的なのかを解析し、新薬の開発につなげたい」と説明している。
2011年12月22日 中日新聞

がん患者らの新薬要望を容認へ

未承認薬、条件つき容認へ 重病患者を対象、厚労省方針

厚生労働省は、ほかに治療法がない重い病気の患者に対し、国内では承認されていない薬を一定の条件で使えるように制度化する方針を固めた。26日夜、薬事行政の見直しを検討している厚労省の審議会で大筋了承された。同様の制度は欧米にあり、がん患者らが要望していた。
 日本は欧米に比べて薬の承認時期が遅れるため、欧米で受けられる最新の治療を受けられないことがある。医師や患者が海外の薬を個人輸入して使っている例もあるが、偽造薬を買わされる危険性や、副作用が起きたときに対応ができるのか、などの問題がある。
 創設する制度では、欧米で承認済みで、国内で承認を得るための臨床試験(治験)が始まっている薬を対象とする。医療機関が厚労省に必要な届け出をすれ ば、複数の病気を抱えているなど治験に参加できない患者に、この薬を使えるようにする。患者にとっては治療の選択肢が広がることになる。
2011年12月27日 朝日新聞

2011年12月22日木曜日

がん増殖を抑制する新物質

がんの増殖を抑える新しい分子を東京大学などの研究チームが発見した。がん細胞の増殖を抑える新しいタイプの抗がん剤の開発が期待される。

発見された物質は、「プロスタグランジンD2(PGD2)」。実はPGD2は脳で作られて眠りを誘うことでは既知の物質だった。 しかし、今回の発見は、PGD2が がんの成長を抑えることをマウス実験で確認したのだ。

がん細胞が増殖するために、新造血管(新生血管)と呼ばれる栄養を送る血管を作ったり、ウイルスや細菌などから体を守る免疫細胞が異常になる。PGD2は、これらのがん増殖の環境を抑制していると推察されている。

乳房再建手術が がんの原因に

フランス厚生省は21日、豊胸手術や乳房再建手術で埋め込まれたシリコン製のインプラントががんの原因になる恐れがあるとして、インプラント摘出手術の費用を助成すると発表した。

問題になっているのは、ポリ・アンプラン・プロテーズ(PIP)という企業が豊胸手術に使っていたインプラント。英国の美容整形外科学会によれば、PIPは医療用に適していないマットレス用のシリコンを豊胸手術に使っていたとされる。

フランス厚生省によると、同国内でPIPのインプラント埋め込み手術を受けた女性は約3万人に上り、問題が発覚した昨年以降、これまでに523人が摘出手術を受けた。インプラントの破裂も1000件以上報告されているという。

同国は14日に医療関係者などで構成する委員会を設置してこの問題を協議。PIPのインプラント埋め込みを受けた女性に摘出を義務付けるかどうかについ て、厚生当局が23日に方針を発表する。乳房再建手術を受けた患者には、新しいインプラントを埋め込むための費用も還付する。

この問題では英国の当局も20日に注意を呼びかけ、「フランスで胸部インプラント埋め込み手術を受けた女性が未分化大細胞リンパ腫と呼ばれる免疫細胞系のがんで死亡したとの報告がある」と指摘していた。

ただし英国ではインプラント摘出までは勧告せず、PIPを含むあらゆる胸部インプラントが健康に及ぼす影響について監視を続けるとしている。

2011年12月21日 CNN

2011年12月21日水曜日

唾液がん検査は十分に有効

唾液から“がん”が発見できる時代へ!

人の唾液を調べて、健康・医療に役立てる研究が進んでいる。最近では、前立腺がんの腫瘍マーカー(血液検査)であるPSA(前立腺特異抗原)検査が唾液でも行えることが報告された。唾液でどこまでわかるのか。唾液検査の現状について専門家に聞いた。

 ■血液と唾液の関係

PSAは唾液中にも含まれ、前立腺がん手術後の再発・転移を調べるのにも有効だとの研究結果をまとめたのは、神奈川歯科大学の槻木恵一教授(唾液腺健康医学)らのグループだ。

 研究によると、前立腺がん患者31人を調べ、再発や転移が見つかった11人はPSAの血中濃度が高い上に、血中濃度が上がるにつれ唾液中の濃度も上がっていた。再発・転移のない20人は血中濃度が低く、唾液中にもほとんど含まれていなかったという。

 現在、唾液用の検査キットを開発中で、今年度中にはさらに大規模研究がスタートする運びだ。

 ■偽陰性なく十分有効

PSAは前立腺から分泌される物質で、がん以外でも前立腺に病気があると血中濃度が高くなる。

 では、なぜ唾液中にもPSAが現れるのか。

 槻木教授は「唾液は血液から作られていて、血液成分を反映するからです」と話し、唾液検査の精度をこう説明する。

 「欠点をいえば、口腔内の細菌や病変に影響を受ける場合があり、さらに唾液は血液より濃度の幅が大きい。ただし、PSA唾液検査では、偽陽性の可能性はあっても偽陰性はなく、スクリーニングに十分有効です」

 とくに大きな利点は「痛くない、簡単、誰でも採取できる」ところだ。

 ■唾液に有望な将来性

槻木教授は「最も大切な成果は、すでに広く使われている腫瘍マーカーが、唾液検査に応用できることが分かったこと。早く実用化に取りかかれるのです」と話す。

 これまでも唾液でがんを発見する研究はあったが、新しいマーカーを見つけることに重点が置かれているため、実用化にはまだ時間がかかる。たとえば、慶応大では唾液から、すい臓がん乳がん口腔がんを見つけるための新しいマーカーの開発が進められている。

 唾液腺と全身の関係や唾液中の無数の成分には解明されていないことが多く、今後も唾液腺関連研究の進展次第では、まだ多くの検査や病気予防への応用の将来性が秘められているという。

 槻木教授は、現在取り組む有望な研究テーマの概要をこう話す。

 「唾液には多数の抗菌物質が含まれ、この量の違いが、唾液の質の差となり健康のバロメーターになる。また、舌下部からある唾液成分が血液に再吸収されているが、その成分の働きが全身の健康に大きく関与していることに注目しています」
 今後の唾液研究に大いに期待したいところだ。

■唾液からわかる主な検査項目
○虫歯のなりやすさ
○歯周病の状態
○HIVウイルスの有無
○ストレスの測定
○喫煙習慣
○大麻や覚醒剤の使用の有無
△乳がん・前立腺がんのスクリーニング
△生体の活性度(免疫力)
△疲労度(ウイルスの量)
△妊娠しているかどうか
△性病関連の検査
△環境汚染の程度(環境ホルモンの量)

※○は検査が確立・実用化されている。
 △は研究中で今後の実用化が可能

2011年12月21日 ZAKZAK

2011年12月19日月曜日

京都と神戸の最新肺がん治療

がんを狙い打つ放射線治療

肺がん治療に用いられる放射線治療の問題は、副作用と効果のバランスが悪いことだ。放射線が目標となるがん細胞だけに照射されてがん細胞だけが死滅させられるのが理想だが、実際にはがん細胞だけでなく、周囲の正常な細胞にも放射線が当たってしまう。そのために吐き気、嘔吐、虚脱感、抜け毛などの副作用が引き起こされていた。さらに肺がんへの放射線治療を困難にしているのは、呼吸によって肺が動き、放射線治療の対象となる肺がん患部も動いてしまうことだった。そのため、肺がんへの放射線治療は正常細胞をも痛めてしまう治療例が後を絶たなかったのだ。

要するに正常細胞には放射線を当てず、狙ったがん細胞だけに放射線を当てれば良いだが、これが従来のがん治療機器では不可能だったのである。

しかし、近年の最新のがん放射線治療機器に機能された自動追尾装置ならば、がんの病巣を呼吸に合わせて追尾しながら、がん細胞だけにピンポイントで放射線を照射できる手法が確立された。

従来ならば、呼吸に伴って肺がん患部が揺れ動くために、放射線を照射する対象の病巣部を正確にリアルタイムで捉えることが不可能だったが、最新鋭の機器ならば正常な臓器や組織への放射線量を少なくすることができ、副作用の軽減が期待できるのだ。がん患部への照射と、エックス線で透視した画像処理を並行することで、がん病巣の位置を常に把握できる。治療中から照射ヘッドの向きを変えることで、動くがん病巣への放射線照射をリアルタイムで追尾可能になった。

従来の放射線治療法と比べると、がん病巣への同じ放射線量を照射しつつ、正常な肺への放射線量は2割減となった。治療時間は1回30分程度で、公的医療保険が適用されることが特筆される。

現在のところ世界中でも、京都大病院と神戸市の先端医療センター病院だけが、この最新機器でのがん治療を実施している。

子宮筋腫とがんを見分ける新手法

PET使い子宮筋腫・肉腫を判別

近年に女性の晩婚化や少子化が原因で増えているとされる子宮筋腫は、子宮肉腫や子宮がんへの変異が心配されることが多い。
従来、子宮筋腫と子宮肉腫を見分ける診断は難しいものだった。しかし、陽電子放射断層撮影(PET)を利用することで、患者の負担は最小でも9割以上の高い精度でがん診断することができるようになった。
この「PET診断法」は、福井大産科婦人科の吉田好雄准教授と福井大高エネルギー医学研究センターの岡沢秀彦教授が開発した手法で、米国核医学学会「がん腫瘍(しゅよう)診断部門」では「最高賞」を獲得している。

2011年12月16日金曜日

再発・転移乳がんに新薬抗がん剤

乳がんに新薬抗がん剤

抗がん剤「ハラヴェン」がカナダで承認

乳がん、それも再発・転移乳がんに対する新薬が、カナダ保健省から承認を取得した。

乳がん新薬の名称は、抗がん剤「ハラヴェン」。
「ハラヴェン」は、2010年3月に日本、米国、欧州で同時申請を行い、世界で初めて2010年11月に米国で抗がん剤と しての承認を取得した。2011年12月時点では、今回のカナダを含め、シンガポール、欧州、日本、スイスなど世界35カ国で承認されている抗がん剤であ る。

がん患者が痛みに耐えていた時代

がん患者が痛みに耐えていたのは前時代の治療状態だ。

現代のがん治療は、QOL(生の質)を最優先に、痛みを和らげることに主眼を置く。がんの疼痛緩和に対して、積極的に医療用麻薬=モルヒネを利用することも非常に有効なのである。

がん患者の痛みの緩和ケアには麻薬だけでなく、「ハンドマッサージ」も有効であり病棟での実施も拡がり、各地で講習会も盛んになりつつある。

がんの痛みのケアのためには、オイルを塗ったがん患者の手の甲や指先を「相手を思いやりながらゆっくりと」もみほぐすことが大事なのだ。

がん患者や家族がマッサージを憶えることで、がん患者の闘病に寄与できるのである。

2011年12月15日木曜日

婦人科がんの血液がん解析サービス

採血だけで複数のがんを早期発見
わずか5mlの採血だけで複数のがんが検診できて、受診者は疑いのあるがんに絞って次のステップの精密検査を受けられる。血液中に含まれる約20種類のアミノ酸の濃度を測定解析し、そのバランスの変化から、がんの可能性を調べる検査方法だ。が実用化された。導入する医療機関が増えており、胃がんなど5種類のがんで解析サービスから、人間ドックや健康診断での利用も広がる。
◎ 費用は18,900円
検査は、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、乳がんが対象。「アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)」と呼ばれる味の素が独自開発した技術を臨床応用したもの。 従来のがん検診ならば、胃がんのバリウム検査や肺がんの胸部エックス線検査、大腸がんの便潜血検査などが必要だった。がんの種類毎に違う検査が必要だったため、受診者の負担が大きかった。しかしAICSは、1回の少量の採血だけで、これらのがんのリスクを同時に精度高く調べられるのだ。
◎ 婦人科がんにも対応
 AICSの大きな特徴は、早期がんに対する感度精度の高さだ。いわゆる腫瘍マーカーでの検査では、がんが進行しないと感知されないが、アミノ酸のバランスはがんの早期に崩れて検出される。
既に、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなどの、いわゆる婦人科の検診にも適用できることが判明していることから、早々に解析サービス追加される見込み。
今後は、早期発見が難しかった膵臓がんへの応用が期待されている。

肝がんのリスクが高い脂肪肝とは

高リスクで肝癌に進展する「非アルコール性脂肪肝炎」とは

肝硬変や肝がんは、B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコールの過剰摂取が原因といわれている。近年肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を高頻度に合併した脂肪肝で、炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変、肝がんでの死亡が増加している。健康診断で脂肪肝と診断され、年々肝臓の数値が悪化している場合は専門医による早期の受診が不可欠だ。

健康診断で脂肪肝を指摘されても、症状もないため放置することが多い。しかし、肝硬変や肝がんのリスクが高い脂肪肝もある。

従来、肝硬変や肝がんの原因は、B型、C型肝炎ウイルスの感染や過剰なアルコール摂取が主だった。ところが近年、ウイルスに感染しておらず、アルコール摂取もない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の中で、炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝硬変・肝がんが増加している。NASHの多くは肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を合併しており、ウイルス性やアルコール性肝炎よりも予後が悪い場合がある。

大阪府済生会吹田病院の岡上武院長に話を聞いた。
「NAFLDは現在約1000万人いるといわれ、予後が比較的良好な単純性脂肪肝と、予後が悪いNASHに分かれます。NAFLDのうち20~30%がNASHと推計され、NASHは10年以内に10~30%が肝硬変や肝がんに進展します」

2011年12月15日 週刊ポスト

再発がんには中性子捕捉療法

がん治療装置 小型に

 放射線の一種である中性子を使い、がん細胞をねらい撃って破壊する 治療法を普及させるための研究に、筑波大を中心としたチームが取り組んでいる。東海村の先端科学研究施設J―PARCの技術を応用。こうした治療は現在、 原子炉のある施設でしかできないが、チームが4年後の実用化をめざす小型装置が完成すれば、病院での治療も可能になる。

 治療法は「BNCT(中性子捕捉療法)」と呼ばれる。がん細胞に集まる性質をもつホウ素入り薬剤を体内に入れた後、患部に弱い中性子ビームを照射。中性子とホウ素が核反応を起こして出るアルファ線が、がん細胞だけを壊す仕組みだ=図。周りの正常な細胞に影響をほとんど与えず、副作用も極めて少ない。30分間、1回の照射で完了する。

 BNCTの臨床研究にかかわる筑波大脳神経外科の松村明教授は「臓器の中に複数のがんができる多発がんや、再発したがんなど、これまでの放射線治療が苦手としてきたがんの治療に高い効果が期待できる」と話す。

2011年12月15日 朝日新聞

2011年12月14日水曜日

乳がん、すい臓がんに新薬ワクチン

免疫系を「訓練」、画期的な乳がんワクチンを開発 米研究

乳がん大腸がん卵巣がんすい臓がんの治療に有効と見られる画期的な仕組みのワクチンを開発し、マウスの実験で腫瘍を大幅に縮小できたとする論文が、12日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。

 ワクチンを開発したのは、米ジョージア大学(University of Georgia)がんセンターのヘルトヤン・ブーンズ(Geert-Jan Boons)教授と米メイヨークリニック(Mayo Clinic)のサンドラ・ジェンドラー(Sandra Gendler)教授のチーム。細胞表面にMUC1たんぱく質が付着している腫瘍を見つけ出して殺すよう、免疫系を訓練するというもので、こうした仕組みを持つワクチンは世界初だという。

 MUC1は乳がん、すい臓がん、卵巣がん、多発性骨髄腫など、悪性で致死率も高いタイプのがんの70%以上で見られる糖たんぱく質。タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、ハーセプチンなどの抗ホルモン剤が効かないいわゆるトリプルネガティブ乳がん患者の90%で過剰発現することでも知られる。

 マウスにこのワクチンを投与してみたところ、免疫系の3つの構成要素すべてが活性化され、腫瘍が平均で80%も縮小した。

 マウスでの実験結果が人間には当てはまらないというケースは多いが、研究チームは、極めて強い免疫反応を示し独特の仕組みを持つこのワクチンに大きな期待を寄せており、ワクチンの安全性を確認するフェーズ1の臨床試験を2013年中にも開始したい考えだ。

 なお、このワクチンは化学療法との併用が可能で、特定のがんに対する予防効果もあるという。

2011年12月13日 AFP

大腸がんを早期発見できる新型内視鏡

大腸がんの早期発見をサポートする下部消化管用拡大内視鏡
135倍まで病変を拡大観察可能、大腸がんの早期発見をサポート
下部消化管用拡大内視鏡 「EC-590ZP」大腸への挿入性向上、ひいては患者負担軽減が期待できる!
 富士フイルム株式会社(社長:古森 重隆)は、大腸の検査・治療に使用される下部消化管用拡大内視鏡の新ラインアップとして、挿入部が11.8mmの細径で倍率135倍まで病変を拡大観察可能な「EC-590ZP」を、12月15日より富士フイルムメディカル株式会社(社長:平井 治郎)を通じて発売いたします。「EC-590ZP」は、大腸への挿入性向上による大腸検査時の患者負担軽減を目指すとともに、独自の画像センサー・光学技術による高画質画像で病変の早期発見をサポートする新製品です。
 大腸は全長が長く、急峻な屈曲部を持つ臓器であることから、大腸内視鏡には、挿入性の良さや観察性能の高さに加え、患者の苦痛を抑える工夫が必要とされています。患者の苦痛を抑えるためには、スコープの細さ、軟らかさが求められている一方、医師の操作の力加減をスコープに伝えるために、ある程度の硬さも必要とされています。
 今回発売する「EC-590ZP」は、こうした医療現場のニーズに対応し、スコープ表面にコーティングする樹脂の量を、先端部分から手元側の操作部に向け連続して変化させる構造を採用。スコープの先端部分には柔軟性を持たせ、手元側の操作部に向かってスコープを硬くしています。これにより、患者の苦痛軽減に繋がるスコープ先端部分の軟らかさと、力加減を伝えるために必要なスコープの硬さという点で、適切なバランスを追求しています。大腸への挿入性のさらなる向上と、患者の苦痛軽減の両立を追求することで、効率的かつ安全な検査の実現を目指します。
 「EC-590ZP」は、挿入部に11.8mmの細径を採用しました。また、独自のスコープ設計技術を駆使し、光学ズーム機能により倍率135倍まで病変を拡大観察可能です。さらに、血管観察の阻害要因となる長波長光をカットする光学部材を搭載し、粘膜と微細血管の色のコントラストをより向上させました。分光画像処理機能「FICE(*3)」 と併用でき、病変の早期発見・診断をサポートします。この他、独自の画像センサー「スーパーCCDハニカム(TM)」を搭載し、高い解像度を実現。微細な血管走行等、微妙な色の違いの描写力向上が期待できます。
 富士フイルムは、これまで高画質で定評のある「EC-590WM3」をはじめとする下部消化管用スコープを発売し、ご好評をいただいております。また、鼻からの挿入に適したしなやかさを持つ「経鼻内視鏡」や、小腸の観察・処置を容易にした「ダブルバルーン内視鏡」など、独自の技術で挿入性向上、患者の苦痛軽減を目指しています。今後も、医療現場のニーズにこたえる内視鏡関連製品のラインアップを拡充し、医療の質や効率の向上、人々の健康増進に貢献していきます。
2011年12月14日 プレスリリース

2011年12月13日火曜日

8分間で判明する吐息の肺がん検査

肺がんを最先端技術で診断・治療
聖マリアンナ医科大学病院
 コンピューター画像診断や気管支鏡などの進歩により、ごく小さな段階で見つかるようになっている肺がんだが、国内では年間およそ7万人が命を落としている。さまざまな診断技術が開発されているにも関わらず、多くの人が受けているレントゲン撮影や、痰の中にがん細胞がないかを調べる喀痰(かくたん)検査だけでは、見逃されている早期がんがあるからだ。
 現在、世界的には、人の吐く息で肺がんを調べる方法について研究が進められている。呼気には揮発性有機化合物が含まれ、それを分析すると、肺がんの有無だけでなく、がんの種類や呼吸のできにくくなる慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの診断も可能になるという。しかも、機械によっては検査結果が出るまでたった8分。簡便で短時間の検査が可能なため、将来的に健康診断などに導入されることで、より多くの早期肺がんや初期のCOPDを見つけることへの期待が高い。
 そんな世界最新の呼気分析の研究を今年1月からスタートしたのが聖マリアンナ医科大学病院呼吸器・感染症内科。最先端の気管支鏡を用いた診断と治療(呼吸器インターベンション)のメッカで、国内トップクラスの実力を誇る。
 「早期の肺がんであれば、ダイオードレーザーによるPDT(光線力学的治療)で治療を行うことが可能です。また、手術や放射線、抗がん剤など治療法はいろいろあります。簡単に早期の肺がんを発見できる方法さえあれば、もっと多くの人を救うことができるのです。そのために検査方法の研究も進めています」とは、同科の宮澤輝臣教授(62)。長年、「呼吸困難を克服する」ことをテーマに研究に取り組んできた。気道を広げるための気管支ステントでは、「MIYAZAWAステント」を開発するなど、常に最先端技術の先駆者であり続けている。
 そんな宮澤教授は、かつてドイツ留学した際に知り合い、今も親交のあるローランドクリニック(エッセン)のフライターク教授から呼気検査の「イオン移動度分析機」の情報を得て共同研究を始めた。
 「人がこの装置に息を吹きかけるだけで、肺がんが8分後にほぼわかる(特異度100%)」とフライターク教授は言う。
 「呼気でがんの有無がわかるがん探知犬は、1989年以来、最近まで多数論文発表されています。しかし、探知犬を育てるのには時間がかかり、犬にも負担になります。呼気分析機なら、その検査法や精度が明確になれば、幅広く普及させることができるでしょう」(宮澤教授)
 呼気分析機の研究が進むと、治療後に肺がんが本当に消えたか再発したかどうかの判定も可能。さらには、呼吸器感染症を引き起こす細菌の有無とその種類までも調べることができるようになるそうだ。ドイツではすでにこの機械で成果を上げ、日本では宮澤教授チームの研究が第一歩となる。「将来的に呼気分析が先進医療に認められることを目指しています」と宮澤教授。そのためにまい進中だ。 
<データ>2010年実績
☆新規患者数935人(内訳/肺がん687人/肺炎83人/COPDおよび気管支喘息63人/気胸・縦隔気腫56人/びまん性肺疾患46人)
☆呼吸器インターベンション50件
☆気管支鏡検査659件
☆病院病床数1208床(呼吸器内科病床数約50床)
〔住所〕〒216-8511神奈川県川崎市宮前区菅生2の16の1 
(電)044・977・8111
2011年12月11日 ZAKZAK

子宮体がん摘出手術の歌手

“歌う尼さん”やなせななさんが子宮体がんの経験講演 
 シンガー・ソングライターと住職を兼ねる“歌う尼さん”やなせなな(本名・梁瀬奈々)さん(36)=奈良県高取町=がこのほど、松浦市内で講演。子宮体がんの経験を通して「人の痛みに気付き、分かち合う心が大切」と語り掛けた。
 やなせさんは28歳でデビュー。その後、がんが見つかり、30歳の時に摘出手術を受けた。現在は実家の浄土真宗教恩寺の住職を務める一方、各地で講演やコンサートを開いている。
 「心から心へと 伝えられる あいのうた」と題して、オリジナル曲を温かく力強い歌声で届け、曲に込めた思いやエピソードを紹介。出産できない体となった手術後のつらさを「子どもを見たときに不意に涙がこぼれてきた」と回顧。同じがん体験の境遇の人に多く出会い「病気をして初めて、苦しみや悲しみをそれぞれ背負って生きていることに気付いた」と述べた。
 東日本大震災の発生後は被災地を何度も訪問。現地の僧侶が書いた詞にメロディーを付けた鎮魂歌も披露した。
 人権週間(4~10日)に合わせ、市と市教委が開催。約250人が聞き入り、目頭を押さえる姿も見られた。
2011年12月11日 長崎新聞

がん患者データベース

がん患者、データベース化 市区町村や年齢・部位別に
 東京都は都内の病院からがん患者の情報を収集し、2015年をめどにデータベースを作る。まず約5万件のデータをまとめ、がんにかかった人の割合を市区町村別、年齢別、部位別に集計する。都内でがんによる死亡者は年間3万人以上にのぼる。きめ細かく実態を把握・公表することで、市区町村に検診の拡充などがん対策にいかしてもらう。
 国の指針に基づく事業で、すでに多くの県で実施している。都内では病院が多いこともあり、都は手掛けていなかった。 都立駒込病院(文京区)に登録室を設け、7月から順次、医療機関に情報提供してもらう。来年1月以降、病院にかかった都内在住の患者が対象で、がんの部位、発見の経緯(検診、人間ドックなど)、放射線治療の有無など25項目を登録する。個人情報保護法の適用外で患者の同意は不要という。すでに約150病院に協力を呼び掛けた。
 同じ人が複数の病院で受診しているケースもあるため、重複の確認作業などに時間がかかり、12年の結果が出るのに3年程度かかるという。当初はがんによる年間死亡者の1.5倍の約5万件、最終的には同2倍の6万件の収集を目指す。
 この情報をもとに、市区町村別にがんにかかった人の割合を体の部位や年齢別などに分けて集計する。これを市区町村のがん対策にいかしてもらう。荒川区は一定年齢以上の区民が胃、肺、大腸、乳がん、子宮頸(けい)がんの定期検診を無料で受けられるようにしているなど、市町村で検診の内容が異なる。データが整備されれば、例えば、肺がんの人の割合が高い地域では、肺がんの検診を拡充するなどの政策も可能になる。
 血液のがんの一種である成人T細胞白血病(ATL)の割合が高い長崎県では国に先立ち、妊娠後の検査を自己負担なしで受けられるようにしてきた。大阪府では病院ごとに部位別の治療人数と5年後の生存率を公表し、病院選びの参考にしてもらっている。
 またがん患者の割合を公表することで、がん検診の受診率を高める狙いもある。現在、都内のがん検診の受診率は35%前後で50%に高める目標。
2011年12月13日 日本経済新聞

2011年12月12日月曜日

すい臓がんの新薬候補食品

ゴボウの種で膵臓がん縮小 富山大、臨床試験開始

伝統医薬学に特化した国内唯一の研究所、富山大和漢医薬学総合研究所(富山市)の門田重利教授(天然物化学)らが、ゴボウの種に含まれる成分が膵臓がんの縮小に効果があることを発見した。既に臨床試験が始まり、治療法が少ない膵臓がんの治療薬として実用化が期待されている。

国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)、クラシエ製薬漢方研究所(富山県高岡市)との共同研究。効果が確認されたのはゴボウの種に含まれる「アルクチゲニン」。ゴボウの種は解熱や鎮痛作用があり、漢方生薬として使われている。

2011年12月8日 共同通信

膵臓がんになるリスク90%高

ライフスタイルの「処方箋」で簡単に癌予防!

 ご飯を食べるときには、一口30回噛むこと。調査によりますと、ご飯を食べるのが速い人は、胃がんにかかるリスクが高いということです。良く噛むことにより、消化器系への食べ物の負担を減らし、胃や腸が癌にかかるリスクを減少させることができます。そして、アメリカの研究によりますと、唾液には強力な殺菌作用があり、肝臓癌を引き起こすアフラトキシンの毒性を30秒以内で消せるということです。

 ですから、一回噛むのを1秒とすると、一口30回噛めば、癌の予防が出来るのです。

 一日7時間の睡眠を確保すること。アメリカ癌研究会の調査によりますと、毎日の睡眠時間が7時間に満たない女性は、乳がんにかかるリスクが47%高くなるということです。これは、睡眠時間が不足すると、何らかの理由でメラトニンの生成が妨害され、その結果、女性の体内で乳がん促進物質として知られるホルモンのエストロゲンが過剰に分泌されるため、乳がんにかかるリスクが高くなるというものです。

 上海市中国医学不眠症医療協力センターの施明副主任は、夜の10時半前から寝る準備を始め、11時前には寝るようにし、朝の6時から7時の間に起きることを薦めています。

 このほか、ドイツの睡眠の専門家は、昼食後の午後1時頃が日中で一番眠気を感じることが多く、この時間に少し居眠りができれば、体内の免疫細胞の活性を促し、がん予防に効果があると述べています。

 糖分を控えめにすること。癌細胞がもっとも好む食べ物は糖分です。癌細胞が血流に乗って流れるとき、血糖の57%が癌細胞に吸収されて、その栄養成分となります。

 アメリカの医学誌によりますと、毎日二杯の甘い飲料を飲むと、すい臓がんになるリスクは飲まない人より90%高くなるということです。

 天津医学大学付属癌病院すい臓がん科の郝続輝主任は、「できるだけ糖分のある食べ物は食べないようにしてください。そして、一日の糖分の摂取量は一人当たり50グラム以内にすべきです」と述べています。

 お肉を食べるときはワインを飲むこと。赤ワインの原料にもなっている葡萄の皮には、抗癌性物質のレスベラトロルが含まれ、消化器系の癌の予防に効果があります。

 また、豚肉や牛肉、羊肉などの赤味の肉は一週間に500グラムが適量で、食べ過ぎると結腸癌のリスクが高まります。

 しかし、お肉を食べるときに、ワインを飲めば、そのワインの中に含まれているポリフェノールは、胃の中の肉が有害物質に分解されるのを防ぐ役割があり、癌の予防に効果があるということです。普段の日常生活に注意すれば、私たちは癌から遠く離れることができます。これからは一緒に注意しましょう。

2011年12月11日 CRI

がん治療体制強化の病院

がん診療「協力病院」に13カ所 県指定 特定部位で質高い治療

がん医療体制の強化のため、県は特定の部位のがんの質の高い治療を受けることができる「がん診療連携協力病院」の制度を新設し、県内十三病院を指定した。千葉、東葛南部など九つに分けられた医療地区(二次医療圏)の中で、これまで厚生労働省指定の「がん診療連携拠点病院」がなかった山武長生夷隅地区でも、一病院が指定された。

がん診療体制をめぐっては、専門的な医療の提供などで地域の中核となる医療機関が拠点病院として、厚生労働省から指定されている。県内には十四カ所が指定されている。

 協力病院は、肺や胃、大腸などの各部位のがんのうち一つ以上で、拠点病院と同じような診療機能を持つ医療機関として位置付ける。拠点病院に準じた機関とし、地域のかかりつけ医との連携を強化し、がん診療体制を強化するのが狙い。院内のがん患者や家族らからのがん診療に対する相談に応じ、診療機能や実績などの情報を県民に開示する。

 専門医の配置や手術数、化学療法の提供体制などに関し、拠点病院の専門医らで組織する選定委員会が審査し、県知事が一日付で指定した。指定期間は四年間。県健康づくり支援課は「県内の二次医療圏のすべてで、拠点、協力病院のいずれかがある体制ができた。各医療圏ごとにより身近な病院で、がん診療が受けられるようになる」と指定の効果を説明している。

2011年12月10日 東京新聞

2011年12月7日水曜日

前立腺がんが転移する場合

 前立腺は男性特有のもので、ここで精液の主成分が作られています。この前立腺にがんが発生して前立腺がんとなります。
 若年での発症は家族性以外はまれで、加齢とともに増加し50歳以上で発症する場合が多くなります。
 欧米人での発症率が高く、食生活上の違いが背景にあるとされていますが、人種的には米国黒人男性で最も高い発症というデータがあります。続いて白人、アジア人となります。
 しかし、近年日本でも食生活の欧米化に伴い急増しています。困ったことに他のがん同様に早期症状に目立ったものはありません。比較的早期で症状があったとしても、そのほとんどは併発する前立腺肥大症に伴う症状ということになります。
 前立腺肥大症のテーマでも以前に触れましたが、主な症状は次の通りです。進行がんとなり転移する場合にはリンパ節と骨の症状が多くなります。

  1. 尿が出にくい
  2. 尿の回数が多い
  3. 排尿後にまだ膀胱に尿が残っている感じがする
  4. 夜間頻尿
  5. 排尿したいと思ったらトイレに行くまで我慢できない
  6. 下腹部不快感
 以上のような前立腺肥大症の諸症状から泌尿器科受診して、がんが発見されるケースがほとんどです。
 診断には画像診断、直腸診によりがんが疑われる場合に前立腺生検が行われて最終的診断となります。その他採血でPSA、前立腺特異抗原と呼ばれる腫瘍マーカーが早期発見に役立ちます。
 これは前立腺肥大症でも上昇することもありますが、4~10np/mlという数字ではグレーゾーンと呼ばれ、定期的な受診により経過観察が必要になります。
10np/ml以上ではその50~80%にがんが発見されています。早期発見のためにまずは健診を!

2011年12月5日月曜日

最終段階のすい臓がん新薬

膵がん新薬開発へ指針 ペプチドワクチン療法、治験最終段階

 第4の治療方法として期待が高まる「がんペプチドワクチン療法」 で、世界に先駆け日本で実施している臨床試験(治験)が最終段階を迎えている。これに合わせる形で薬剤としての開発指針(ガイダンス)がまとまり、概要が 30日、明らかになった。12月1日から和歌山市で開かれる日本バイオセラピィ学会(会長・山上裕機和歌山県立医科大学教授)で発表される。

 この治験は膵(すい)がんに 対するもの。進行が早く、90%以上が5年以内に亡くなり、人口動態調査によると、平成22年の死者は約2万8000人。同治験は2年前に始まり、和歌山 県立医科大をはじめ全国27施設で153人を対象に実施されている。治験(第2・3相)の結果が来年3月に明らかになる予定で、承認されれば、がんペプチドワクチン療法として世界初となる可能性が高い。

 今回発表されるガイダンスは、こうした治験の進(しん)捗(ちょく)状況を踏まえ、がんペプチドワクチン療法のみを対象とした点が特徴。「同ワクチンの新薬が一刻も早く患者に届くようにまずガイダンスを整備することになった」(策定委員)という。

 ガイダンスの「臨床試験」の章で、従来の抗がん剤などの治療の後に同ワクチン療法を開始しても「患者さんの免疫が弱体化した後では効果が得にくい」とされ「早期に投与すれば、免疫反応が十分に強化され、がんとたたかうまでの十分な時間を確保できる」との特質が明記された。

 ガイダンスは数カ月後に学会の方針として正式に策定され、その後、厚生労働省が策定する指針に大きな影響を与えるとみられる。

 武藤徹一郎・がん研有明病院メディカルディレクターの話 「これまでの他の治療法の指針は、短期的にがんが小さくなったかどうかを基準にしていた。ワクチン療法は新たな視点の基準でないときちんと評価できない面があり、今回の指針でその点が明確になると期待している」

 がんペプチドワクチン療法 外科手術、抗がん剤、放射線治療などと違い、ワクチン注射により免疫力を高めることで間接的にがん細胞を攻撃する方法で「がんの第4の治療法」と呼ばれる。がん細胞のタンパク質と同様の断片(ペプチド)を人工的に作り注射すると、それに反応しようと免疫細胞が活性化してがん細胞を攻撃させる仕組み。特別な免疫力を利用するため副作用がほとんどないのが大きな特徴。

2011年11月30日 日本経済新聞

2011年12月2日金曜日

骨転移がんの新治療機器

超音波治療装置の適用範囲、がんの疼痛緩和やがん治療に拡大へ

 米GE Healthcare社は、主に子宮筋腫の治療に使われている同社のMRガイド下集束超音波治療装置「ExAblate」シリーズの治療対象を、がんの疼痛緩和や治療などへ広げていく。

既に、がんの骨転移患者の疼痛緩和への適用認可を米国FDAに申請済みであり、2012年にも承認される見通し。今後は、乳がん肝臓がん、脳腫瘍などの悪性腫瘍の治療や、パーキンソン病の治療などへ適用範囲を広げることを目指し、「承認に必要となるデータを集積していく」(同社)考えである。

2011年12月01日 日経BP

2011年12月1日木曜日

末期大腸がんの治療法

末期の大腸がん、治療法増える

 病気が進行して思うような医療が受けられなかった末期の大腸がんの治療に、光明が見え始めた。がん細胞だけを攻撃する新薬が登場し、患者の平均的な余命が延びてきた。患者の病状や希望に合わせた最適な治療もできるようになり、治療の選択肢が広がっている。

 「手術できない大腸がんの患者にとって、生活の仕方の希望に合わせて治療法を選べる時代に入ってきた」。防衛医科大学校病院でがんの化学療法治療を手がける市川度・腫瘍化学療法部副部長はこう話す。

 がん細胞をたたく抗がん剤は、どんな薬でも副作用をまったくなくすのは難しい。教員を務める中年男性は、黒板に字を書くため指にしびれがでるのが嫌だっ たので、比較的副作用の弱い5―FUという薬とベバシズマブというがんを狙い撃ちする分子標的薬の組み合わせを選んだ。臨床試験の結果などからわかってい る生存期間はほかの治療法より少し短いが、仕事を続けながら治療する道を選んだという。投薬開始から1年以上たったが、元気で体調に大きな変化もないとい う。

 一方、母親の代わりに高校生を育てる60歳代の女性は少しでも長生きできる治療を希望。効果・副作用ともやや強めの「フォルフィリ療法」とセツキシマブ という薬の組み合わせを選んだ。「フォルフィリ療法」は、5―FUとイリノテカンなど3つの薬を併用する方法。セツキシマブは分子標的薬のひとつだ。発疹 や倦怠(けんたい)感などの副作用に悩まされているが、転移したがんは小さくなり経過に満足しているという。

 「単に生存期間の長さだけでなく副作用や効き方などをよく説明し、患者の過ごし方の希望を踏まえて選択した」と市川副部長は話す。

 このように選択肢が広がった背景には、手術できない大腸がんの治療法の急速な進歩がある。10年弱前まで生存期間はせいぜい約1年だったが、5―FUと オキサリプラチンやイリノテカンといった抗がん剤を組み合わせる「フォルフォックス療法」や「フォルフィリ療法」の普及により延びた。

 さらに2007年以降、がん周囲の血管やがん細胞だけを攻撃する分子標的薬3つが相次いで使えるようになり、組み合わせによって平均的な生存期間は2年 近くになった。10年に発表された最新の臨床試験ではセツキシマブと「フォルフィリ療法」を組み合わせれば23カ月を超えるという結果も出ている。現在、 日本の大腸がんの治療指針でも、5通りほどの治療法が提示されている。

 ただし、問題も表面化している。大阪大学の佐藤太郎准教授は「治療法が増えた分、どれが患者自身にとって良いのか判断しにくくなっている」と指摘する。

 手術できない大腸がん患者といっても、状態は同じではない。肝臓や肺に転移したがん組織が大きくて痛みなどの症状も出ている場合と、転移したがんは小さ くて症状もない場合では、治療法は違うはずだ。だが実際はかなり多くの患者がフォルフォックス療法とベバシズマブを最初に受けている。しびれなどは出やす いものの、下痢や脱毛、倦怠感などが比較的少なく、医師側も使い慣れており安心して薦めやすいからだ。

遺伝子検査も効果

 転移がんが大きい人に、強めのフォルフィリ療法とセツキシマブの組み合わせなどを使えば、がんを手術できるまで小さくできる可能性もある。実際、肝臓に 転移したがんを小さくしてから手術を実施する患者も出てきている。「逆にがんの進行の遅い高齢者などは、できるだけ副作用が少なくゆるやかに効いていく抗 がん剤の組み合わせが楽なのではないか」(佐藤准教授)

 セツキシマブなどを使って治療効果が上がる可能性があるのは、がん細胞の中で増えろという信号を送るたんぱく質が変化していない6割の患者に限られる。事前の遺伝子検査で効きにくい薬の投与を避け、無意味な副作用に苦しむリスクを減らすこともできるようになった。

 日本では毎年10万人を超える人が新たに大腸がんと診断されており、胃がんに次いで多い。治療法が増えたことで、患者が自分の生き方を見据えて治療法を選ぶきっかけになるかもしれない。

2011年9月30日 日本経済新聞

2011年11月30日水曜日

乳がん臨床医が選んだ名医10人

乳がん臨床医が選んだ名医10人

選ばれた理由が興味深い。 「臨床経験が豊富」「幅広い知織が豊富」が最大の理由で論文や学会の地位ではないそうだ。
  • 中村 清吾 (昭和大学)
  • 渡辺 亨 (浜松オンコロジーセンター)
  • 戸井 雅和(京都大学)
  • 岩田 広治 (愛知腺がんセンター中央病院)
  • 大内 憲明 (東北大学)
  • 野口 眞三郎 (大阪大学)
  • 霞富 士雄 (順天堂大学)
  • 大野 真司 (九州がんセンター)
  • 岩瀬 弘敬 (熊本大学 )
  • 西村 令喜(熊本市民病院 )

製造管理の不備の抗がん剤

下記の抗がん剤に製造管理の不備が原因での自主回収などの騒ぎが起きている。

「重篤な健康被害」の恐れは無いが、「一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある」。

つまりは、飲んではいけない抗がん剤。

  • 抗がん剤のベルケイド (ヤンセンファーマ)
  • 再発卵巣がん向け抗がん剤のドキシル(ヤンセンファーマ)
  • 造血幹細胞移植前治療薬のブスルフェクス(協和発酵キリン)
  • 骨髄異形成症候群治療薬のビターザ(日本新薬)

飲んではいけない抗がん剤

下記の抗がん剤に製造管理の不備が原因での自主回収などの騒ぎが起きている。

「重篤な健康被害」の恐れは無いが、「一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある」。

つまりは、飲んではいけない抗がん剤。

  • 抗がん剤のベルケイド
  • 再発卵巣がん向け抗がん剤のドキシル(ヤンセンファーマ)
  • 造血幹細胞移植前治療薬のブスルフェクス(協和発酵キリン)
  • 骨髄異形成症候群治療薬のビターザ(日本新薬)、

発見された がん成長抑制分子

東大など、がん成長抑制分子発見-新たな治療薬に道
 東京大学の尾崎博教授や大阪バイオサイエンス研究所などの研究チームはマウスを使い、固形のがん組織の成長を抑える新しい分子を発見した。炎症や免疫に関わる「肥満細胞」が生み出す物質プロスタグランジンD2(PGD2)が、がん組織に必要な血管の生成や免疫細胞の異常などを抑えることを明らかにした。新しい抗がん剤の開発が期待できる。成果は米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。
がん組織は生体が持つ免疫機構の攻撃をかわすだけでなく、免疫機構を変化させ、自らの組織の成長に利用している。 
 がん組織内にある肥満細胞を調べると、PGD2を合成する酵素「H―PGDS」を多く持つことがわかった。そこで肥満細胞にのみH―PGDSを持たないマウスを作り、マウスに腫瘍を移植すると、体内で腫瘍が急速に成長した。
2011年11月30日 日刊工業新聞

がん成長抑制分子から新治療薬

東大など、がん成長抑制分子発見-新たな治療薬に道

 東京大学の尾崎博教授や大阪バイオサイエンス研究所などの研究チームはマウスを使い、固形のがん組 織の成長を抑える新しい分子を発見した。炎症や免疫に関わる「肥満細胞」が生み出す物質プロスタグランジンD2(PGD2)が、がん組織に必要な血管の生 成や免疫細胞の異常などを抑えることを明らかにした。新しい抗がん剤の開発が期待できる。成果は米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。
 がん組織は生体が持つ免疫機構の攻撃をかわすだけでなく、免疫機構を変化させ、自らの組織の成長に利用している。 
 がん組織内にある肥満細胞を調べると、PGD2を合成する酵素「H―PGDS」を多く持つことがわかった。そこで肥満細胞にのみH―PGDSを持たないマウスを作り、マウスに腫瘍を移植すると、体内で腫瘍が急速に成長した。

2011年11月30日 日刊工業新聞

無利子のがん治療ローン

がん先進医療、鳥取県がローン制度 国内初 利子相当額、県が助成

鳥取県は、県民が健康保険の対象とならない高額ながんの先進医療を受ける際に、利子相当額が助成されるローンを、指定する金融機関で組むことがで きる全国初の制度を創設した。指定機関として山陰合同銀行と鳥取銀行が12月1日に県と協定を締結。合銀は2日から、鳥銀は来年6月ごろから運用を開始 し、ローンの申し込みに応じる。
 がんの先進医療を受けるための借金に対する利子補給制度は、すでに数県で創設されているが、いずれも自県にある高度医療施設を利用する場合に限られている。これに対して鳥取県の制度は、厚生労働省が認めるがんの先進医療であれば国内どこの医療機関で受けても対象となる。
 事実上無利子となるこの制度による借り入れ額は上限300万円で、最大6%までの利子相当額を最大7年まで助成。専用のローン自体を指定金融機関が商品化するのも全国初で、すでに「鳥取県がん先進医療費ローン」を商品化した合銀は、金利を年5・8%と決めた。
  ローンを組むためには、まず病院に治療実施計画書を作成してもらい、「先進医療分」の医療費を算出。これを県が審査して同制度の対象と承認されれば、指定 金融機関に専用ローンの利用を申し込むことができる。金融機関側の審査を通ればローンが組まれ、利用者は1年間に支払った利子分の補給を翌年初めに申請す るシステムとなっている。
2011.11.30 産経新聞

2011年11月28日月曜日

肝臓がんの再発予防法

多様な方法で抑制抗 ウイルス薬など有効

肝細胞がんの再発予防  肝細胞がんは、早期に発見されれば、肝切除や経皮的ラジオ波凝固療法により完全に治療ができます。しかし、治療後の再発が多いことが最も大きな問題となっています。
 現在、確実に再発を抑える方法は、まだ確立されていません。しかし、再発を抑えるために、さまざまな方法が行われています。
 C型肝炎の場合は、インターフェロン治療に再発を抑える効果があることがわかっています。ウイルスが消失しない場合でも、ALT値が低下する場合や、AFPという腫瘍マーカーが低下する場合は、再発抑制効果が期待できます。
 B型肝炎の場合は、核酸アナログと呼ばれる抗ウイルス薬が有効です。この薬は、再発を抑える効果に加え、肝機能を良くする効果もあります。
 ウイルスに関連のないものとしては、ソラフェニブがあります。この薬は、現在進行肝細胞がんに対して使われている、分子標的薬と呼ばれる新しい抗がん剤です。再発予防にも有効と考えられ、現在臨床試験が行われています。
 また、非環式レチノイドというビタミンAの仲間の薬に再発抑制効果があることが報告され、これも臨床試験が行われています。
 その他、研究段階のものとして、がんワクチンがあります。これは、がん細胞に特異的なたんぱく質の一部を患者さんに接種し、がん細胞を攻撃するリンパ球を誘導する方法です。将来的には、がんワクチンが有効な肝細胞がん治療の一つとなることが期待されています。
 最近、肥満に伴ってインスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)と、がんが再発しやすいことがわかってきました。このような場合には、食事、 運動療法により体重を減らすことや、インスリン抵抗性を改善する薬剤を使用することにより、再発を抑える効果が期待できます。分枝鎖アミノ酸製剤にも、イ ンスリン抵抗性を改善する効果があることが報告されています。
 慢性肝疾患がある場合は、鉄が過剰に肝臓に蓄積しており、瀉血(しゃけつ、血を抜くこと)や鉄制限食で肝臓から鉄を取り除くことにより、再発を抑えられる可能性があります。
 肝細胞がんの再発予防に対して、現在以上のようなことが行われています。肝細胞がんを治療した後には、再発を抑えるための治療をできる限り行うことが大切です。
2011年11月28日 岐阜新聞

「息」の匂い検査でがん発見の新技術

胸部X線検査より、喀痰検査より、診断感度が高い?

肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」登場
がん特有の匂い物質と呼気検査
 この8月、欧州呼吸器学会誌に、吐いた息から肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」の研究結果が報告された。
 それによると、肺がんに特有の匂いを嗅ぎ分けるように訓練された犬は、肺がん患者の呼気サンプル100例中71例を「陽性」とし、健康な人の呼気、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の呼気400例に対しては93%に「陰性」の判断を下した。一般診療で胸部X線による肺がんの検出感度は80%、喀痰検査は40%前後であり、堂々、それ以上の結果が示されたというワケだ。
 臭覚に優れた犬が「がんの匂い」に反応することは以前から知られている。最初の報告は1989年に医学雑誌「Lancet」に掲載された論文。コリーとドーベルマンの混合種の雌犬が飼い主のホクロに異常な関心を示したため、不審に思った飼い主が受診したところ、悪性黒色腫が発見された例が紹介されている。
 これが世界中で大反響を呼び、同様の報告が相次いだ。なかには通常の尿検査で「陰性」だった患者が探知犬の「陽性」判定を受けて、精査したところ腎がんが発見されたという例もある。日本では2005年から続けられている千葉県南房総市の「セントシュガー がん探知犬育成センター」の研究が嚆矢。今年初め、医学誌「Gut」に報告された九州大学医学部第二外科のグループとの共同実験では、ラブラドールレトリバーの「マリーン」(9歳、雌犬)が9割以上の確率で大腸がん患者の呼気サンプルを嗅ぎ分けた。
 ただし、臭覚の個体差や特殊訓練に費やす時間とコストからして検診施設に「がん探知犬」が配属される、なんてことはありえない。そのあたりは研究者も現実的で、実際は探知犬で存在が証明されたがん種特有の匂い物質「揮発性有機化合物」の特定に力を入れている。これがかなえば、すでに一般的に使われている匂い感知器の「電子鼻」を医療用に改良し「匂いの“腫瘍マーカー”による究極の低侵襲検査が実現する」(臨床医)だろう。
 日本人の嗜好からするとがん探知機能搭載の犬型ロボットを開発しそうだが、ともあれ、がん検診に「呼気検査」項目が追加される日は近いかもしれない。


2011年11月28日 週刊ダイヤモンド

吐いた息から肺がん発見

胸部X線検査より、喀痰検査より、診断感度が高い?

肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」登場
がん特有の匂い物質と呼気検査

 この8月、欧州呼吸器学会誌に、吐いた息から肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」の研究結果が報告された。

 それによると、肺がんに特有の匂いを嗅ぎ分けるように訓練された犬は、肺がん患者の呼気サンプル100例中71例を「陽性」とし、健康な人の呼気、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の呼気400例に対しては93%に「陰性」の判断を下した。一般診療で胸部X線による肺がんの検出感度は80%、喀痰検査は40%前後であり、堂々、それ以上の結果が示されたというワケだ。

 臭覚に優れた犬が「がんの匂い」に反応することは以前から知られて いる。最初の報告は1989年に医学雑誌「Lancet」に掲載された論文。コリーとドーベルマンの混合種の雌犬が飼い主のホクロに異常な関心を示したた め、不審に思った飼い主が受診したところ、悪性黒色腫が発見された例が紹介されている。

 これが世界中で大反響を呼び、同様の報告が相次いだ。なかには通常の尿検査で「陰性」だった患者が探知犬の「陽性」判定を受けて、精査したところ腎がんが 発見されたという例もある。日本では2005年から続けられている千葉県南房総市の「セントシュガーがん探知犬育成センター」の研究が嚆矢。今年初め、 医学誌「Gut」に報告された九州大学医学部第二外科のグループとの共同実験では、ラブラドールレトリバーの「マリーン」(9歳、雌犬)が9割以上の確率 で大腸がん患者の呼気サンプルを嗅ぎ分けた。

 ただし、臭覚の個体差や特殊訓練に費やす時間とコストからして検診施設に「がん探知犬」が配属される、なんてことはありえない。そのあたりは研究者も現実的で、実際は探知犬で存在が証明されたがん種特有の匂い物質「揮発性有機化合物」 の特定に力を入れている。これがかなえば、すでに一般的に使われている匂い感知器の「電子鼻」を医療用に改良し「匂いの“腫瘍マーカー”による究極の低侵襲検査が実現する」(臨床医)だろう。

 日本人の嗜好からするとがん探知機能搭載の犬型ロボットを開発しそうだが、ともあれ、がん検診に「呼気検査」項目が追加される日は近いかもしれない。

2011年11月28日 週刊ダイヤモンド

2011年11月24日木曜日

がん細胞の取り残しを見つける方法

がん細胞を光らせる試薬開発

CTなどでは判別が難しい大きさ数ミリのがんを光らせて、ごく短時間で検出できる試薬を、東京大学などの研究グループが開発しました。肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。

東京大学の浦野泰照教授とアメリカ国立衛生研究所の小林久隆主任研究員らのグループは、がん細胞の表面に多く現れる「GGT」という酵素に注目し、この酵素に触れると化学変化を起こして緑色に光る試薬を開発しました。

そして、ヒトの卵巣がんを移植したマウスの腹部に試薬を吹きつけたところ、1分ほどで、点在していた1ミリ以下のがんが光りだし、肉眼ではっきりと確認できたということです。今のところ、がん細胞を検出できる確率は卵巣がんで3分の2ほどですが、研究グループでは、さらに細胞の性質を調べて確実な検査法にしたいとしています。
今回利用したGGT酵素は、肺がんや肝臓がん、それに乳がんや脳腫瘍などにも現れるということで、実用化できれば、手術の際に肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。浦野教授は「手術中にスプレーして小さいがんをその場で見ることができれば、見落としの問題を克服できる。実用化に向け研究を進めたい」と話しています。

 

2011年11月24日 NHK

がん手術で取り残しを防ぐ新技術

がん細胞を光らせる試薬開発

CTなどでは判別が難しい大きさ数ミリのがんを光らせて、ごく短時間で検出できる試薬を、東京大学などの研究グループが開発しました。肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。

東京大学の浦野泰照教授とアメリカ国立衛生研究所の小林久隆主任研究員らのグループは、がん細胞の表面に多く現れる「GGT」という酵素に注目し、この酵素に触れると化学変化を起こして緑色に光る試薬を開発しました。

そして、ヒトの卵巣がんを移植したマウスの腹部に試薬を吹きつけたところ、1分ほどで、点在していた1ミリ以下のがんが光りだし、肉眼ではっきりと確認できたということです。今のところ、がん細胞を検出できる確率は卵巣がんで3分の2ほどですが、研究グループでは、さらに細胞の性質を調べて確実な検査法にしたいとしています。

今回利用したGGT酵素は、肺がん肝臓がん、それに乳がんや脳腫瘍などにも現れるということで、実用化できれば、手術の際に肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。

浦野教授は「手術中にスプレーして小さいがんをその場で見ることができれば、見落としの問題を克服できる。実用化に向け研究を進めたい」と話しています。

2011年11月24日  NHK

2011年11月22日火曜日

副作用の無い抗がん剤

副作用ほとんどない抗がん薬、浜松医科大が開発

浜松医科大(浜松市)は22日、副作用を軽減させる抗がん剤開発を進め、動物実験で効果が得られたと発表した。今後、臨床試験に入り、実用化を目指す。
  研究グループの杉原一広准教授によると、悪性腫瘍(がん)は1~2ミリ以上になると、栄養を取り込むため「新生血管」を生じさせる性質がある。グ ループは、アミノ酸がつながってできる「ペプチド」の一種が、新生血管に集まりやすい特性を発見。新生血管だけに薬が運ばれるよう、ペプチドと組み合わせた抗がん剤を開発した。
 同大が、米サンフォードバーナム医学研究所と行った共同研究で、この抗がん剤をがん細胞を持つマウスに投与したとこ ろ、従来の約40分の1の量 で、19日目にがん細胞がほぼなくなり、副作用は全く認められなかったという。成果は、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表される。

2011年11月22日 読売新聞

2011年11月14日月曜日

7時間睡眠でがんリスク低下

7時間以上の睡眠で卵巣がんリスク低下- 国立がん研究センター

国立がん研究センターはこのほど、「7時間以上の睡眠は、卵巣がんのリスクを下げる可能性がある」との研究結果をまとめた。

 国内に住む40-69歳の女性約4万5700人を対象に、1990-94年から2008年まで追跡調査した多目的コホート研究のデータを分析。出産回数 やBMI、喫煙や運動習慣などと、卵巣がんの発症リスクとの関連を調べた。平均約16年間の期間中、86人が上皮性卵巣がんを発症した。

  分析結果によると、日常の睡眠時間が7時間以上のグループは、6時間未満のグループに比べ、卵巣がんの発症リスクが0.4倍と低かった。また、多くの先行 研究で知られている出産歴との関連では、出産回数が1回増えるごとに、リスクは0.75倍に減少する傾向が見られたという。

 同センターの研究班は、「睡眠時間との関連はこれまで報告されておらず、今後の検証が必要」とした上で、「普段の睡眠時間が長いことが、卵巣がんのリスクを下げる可能性がある要因として示された」と指摘している。

2011年11月8日火曜日

5年以内に腎がんでの臨床研究新薬

がん細胞を直接死滅 岡山大発ベンチャー、新薬開発へ


がん細胞を死滅させ、がんへの免疫力も高める治療薬づくりに岡大発ベンチャー企業が5年間4億円で取り組む。科学技術振興機構(JST)の事業に採択され、資金のめどがたった。前立腺がんや中皮腫、腎がん、乳がんへの効果が動物実験で確認された遺伝子を用いる。


 事業主体の桃太郎源(岡山市北区)によると、製剤の元になるのは遺伝子「REIC(レイク)」。無毒化したウイルスに組み込み、直接がんに注射する。がん細胞にREICが増えると、たんぱく質の生産異常を起こして死ぬ。REICが普段からある正常な細胞は、少し増えても問題はない。


 さらに、死んだがん細胞の断片がワクチンのように働き、がんに対する免疫を高めるという。
 岡山大病院では、REICの特許権を持つ公文裕巳教授らが、ウイルスに組み込んだREICを前立腺がん患者で臨床研究中。今のところ安全性に問題は無い。今回は臨床研究中の製剤を改良する。ウイルスへのREIC遺伝子の入れ方を工夫し、薬効を10~100倍に上げ、5年以内に腎がんでの臨床研究を目指すという。


2011年11月5日 47News

2011年10月28日金曜日

がん予防と臓病にも効能のある食物

“かぼちゃに含まれる10の効能”、心臓病、がん予防やアンチエイジングにも効果あり!

ハロウィンが近づき、巷ではかぼちゃのモチーフが溢れ返っている。お菓子だけでなく、煮物やスープなどでも広く親しまれているかぼちゃだが、実は驚くほど栄養価が高く、口にするだけで文字通り“元気になれる”食材なのだという。医療系情報サイト121docのトビー・サンフォード氏が“かぼちゃに含まれる 10の効能”を提唱している。
 秋、ことにハロウィンの時期はかぼちゃの美味しい季節。日々の食事の他、プリンやパイなど、お菓子にも大活躍のかぼちゃは味も良く栄養満点。血圧やコレステロールが気になるお父さんからアンチエイジングに目覚めたお母さん、ダイエットに奮闘する娘、果ては受験に疲れた息子にまで効果的な、驚くべきかぼちゃの効能は以下の通り。

  1. 心臓病やがんの予防
  2. ダイエット効果
  3. ビタミンAが豊富
  4. コレステロール値、血圧の安定に効果的
  5. 高齢者に多い黄斑疾患の予防
  6. 便通を良くする
  7. 抗炎作用がある
  8. 前立腺肥大症への効果
  9. 気分の落ち込み、うつ症状の改善
  10. 食事の間にハロウィンの彫刻をすれば間食も防げる

 10番目はオチになっているとはいえ、すごい効能である。ビタミンAがアンチエイジング効果をもたらし、加齢によって起きる黄斑疾患の予防にもなるそう。また、L-トリプトファンと呼ばれるアミノ酸が、精神を落ち着かせるとも言われているのだとか。一石十鳥(!)の旬の野菜、かぼちゃを美味しく食べて健康にハロウィンを過ごそう。


2011年10月28日 HOLLYWOOD CHANNEL

2011年10月27日木曜日

マムシ,さそりの毒からがん新薬作成

イラン人研究者、新たな抗がん構造を発見


イラン人研究者が、がん細胞を抑制するための新たな原子構造を発見しました。
この新たな構造は、ICD85と呼ばれ、ラーズィー血清開発ワクチン研究所で、マムシやさそりの毒から作成されました。
ラーズィー血清開発ワクチン研究所のザーレ研究員は、「この新たな構造は、15年に及ぶ研究によって発見されたものであり、乳がん、白血病、腎臓がん肺がんを抑制する効果がある」と語りました。さらに、「現在、この新たな構造は、ウサギとマウスを対象に実験が行われ、成功を収めている」としました。
また、「この新たな構造は、人間の生きた細胞に対しても実験的に用いられ、好ましい結果が得られている」としています。現在、がんの治療法のひとつに放射線治療がありますが、それは健康な細胞にも害を及ぼします。
ザーレ研究員は、「様々な実験は、この新たな構造なら、ほぼ完全にがん細胞のみを標的にすることができることを示している」と語りました。
さらに、「数々の調査によれば、この新たな原子構造を利用しても、がん患者の脱毛といった副作用を引き起こすことはない」と述べています。
イランは、この科学的な業績を手にした、世界でも限られた国の一つとなっています。
2011年 10月 25日 イランラジオ

2011年10月25日火曜日

免疫力を活用しがん細胞のみ攻撃する新薬

久留米大のがんワクチン、実用化へ前進

第4のがん治療法として久留米大学が開発した前立腺がん患者に対する「がんペプチドワクチン」の実用化に向けた研究が24日、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の支援事業に採択された。開発を支援してきた県と同大学が発表した。両者によると支援額は最高20億円。5~6年後の医薬品承認を目指した臨床試験が来年度から始まる。

ワクチンを開発した久留米大学医学部の伊東恭悟教授によると、治療法はがん細胞の表面にあるたんぱく質の断片(ペプチド)を患者に注射し、がん細胞を攻撃する免疫細胞を増やしてがんの進行を抑える。

外科手術、抗がん剤、放射線治療に次ぐ第4のがん治療法で、患者自身の免疫力を活用し、がん細胞のみを攻撃する。副作用が少ないのが特長という。ただ、ワクチンは公的医療保険がきかない未承認薬。これまでに久留米大学の研究者らが出資したベンチャー企業が安全性を確認する臨床試験をしてきた。

来年度から進める臨床試験は、医薬品も手がける富士フイルムが実施。全国の施設で数百人の患者にワクチンを注射し、医薬品としての効果を確認するという。

2011年10月25日 朝日新聞

5ミリのがん組織を見つける

光るブドウ糖でがん細胞探れ


光るブドウ糖を使って細胞の動きを探るという弘前大学大学院医学研究科の山田勝也准教授(脳生理学)の研究が評価され、新たに微少ながん細胞の悪性度を正確に可視化するという実用化に向けた研究段階に入ることになった。がん化する体の組織を細胞単位で見つけ出そうという狙いだ。


 科学技術の振興を進める独立行政法人「科学技術振興機構」が、基礎技術を具体的に実用化するための開発を手助けする「研究成果最適展開支援プログラム(A―STEP)」の実用化挑戦タイプの研究事例として認め、24日に発表した。開発主体は大阪府の試薬品メーカー。ブドウ糖に蛍光分子をくっつけて光るブドウ糖として細胞を可視化できるようにした研究の有用性は、山田准教授が立証してきたもので、メーカーから再委託を受けて実用化を探る。


 山田准教授によると、動物実験で正常な細胞を光るブドウ糖で識別する研究成果を発表したら、ほどなくこの技術を応用して、米国では、体外に取り出したがん細胞を光らせるという研究報告が出され、競争が激化した。


 現在は5ミリ程度のがん組織を見つけるところまで進んでいるが、山田准教授の研究で、細胞ごとに見分けることができる可能性がでてきた。「病巣になる前や再発の有無など、早期発見の時期を格段に早めることに役立つかもしれない」などと話している。


2011年10月25日 朝日新聞

2011年10月24日月曜日

糖尿病を完全に克服する根治療法へ

細胞シートで糖尿病根治 東京女子医大など治療法
膵臓の細胞培養し皮下移植


 東京女子医科大学の大橋一夫特任准教授と福島県立医科大学の後藤満一主任教授らは、膵臓(すいぞう)の細胞(膵島細胞)をシート状に培養して移植する新しい糖尿病の治療法を開発した。マウスの実験で長期間、血糖値を正常に保つことを確認した。膵島細胞をじかに移植する治療法よりも効果が高いという。将来、iPS細胞(新型万能細胞)と組み合わせれば、糖尿病を完全に克服する根治療法の実現につながるとみている。


 ラットの膵島細胞を採取し、特殊な培養皿の上で直径2センチメートル、厚さ15マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのシート状に培養した。糖尿病のモデルマウスの背中の皮膚の下に2枚のシートを重ねて移植し、約4カ月間、血糖値の変化をみた。


 11匹すべてで移植後約3日目から血糖値が正常になり、エサを与えた後も糖尿病でよくみられるような異常な急上昇はなくなった。
 移植したシートを調べると、膵島と同じように、β細胞が円の中心部分に集まり、外側をα細胞が取り巻いていた。β細胞は血糖値を下げるインスリンを、α 細胞は血糖値を上げるグルカゴンを出す。両細胞が規則正しく存在することで血糖値が高い時は下げ、下がると自然に正常値に戻し低血糖になりすぎるのを防いでいるとみられる。


 膵島移植のように、膵島細胞を直接マウスの肝臓の血管に入れた場合、血糖値は少し下がるものの、正常値まではなかなか下がらなかった。「シート化することで一定量の細胞が塊となり、効果を高めた。臨床への応用が十分期待できる」(後藤主任教授)という。


 東京女子医大はカナダのアルバータ大とも共同研究を進めており、ヒトの膵島細胞のシート培養に成功した。今後、動物に移植して安全性と有効性を確認した上で、臨床応用を目指す。
 また、患者から採取した膵島細胞を一定量まで増やすのは難しいため、iPS細胞から膵島細胞を作製し、シート化していくことも検討する。


2011年10月24日  日本経済新聞

2011年10月18日火曜日

肉腫治療に新薬期待  東大が世界初ゲノム創薬 で新薬治験

肉腫治療へゲノム創薬 世界初 東大が研究、仏で治験

 これまで治療薬がなかったがんの一種、肉腫に対する新しい抗体薬を東大医科学研究所の中村祐輔教授の研究室が作り出し、承認に向けてフランスでヒトへの臨床試験(治験)を開始することが16日、分かった。この薬はゲノム(全遺伝情報)解析から標的を見つけたのがきっかけ。中村教授によると、全ゲノム情報を出発点に創薬(抗体薬)が実現すれば、肉腫治療薬の分野で世界初の成果になる。


 今回の抗体薬は腕や足などにできる「滑膜肉腫」と呼ばれる肉腫に対するもの。ゲノム研究の第一人者である中村教授が平成14年、ゲノム情報を応用する形で研究に着手。研究室でマウス実験などを繰り返した結果、肉腫治療に応用できる抗体を突き止めた。
 仏保健当局から正式承認が下り、臨床試験が仏リヨンの病院、レオンベラールセンターで12月にも始まる。仏以外の欧州連合(EU)各国にも試験を拡大する計画もある。


 滑膜肉腫を含めた肉腫は主に10代から20代に発症する命にかかわる難病だが、治療薬の開発はほとんど進んでいない。このため、治療に道筋を示した論文内容を知った欧米の患者から問い合わせが相次ぎ、患者家族が研究室を訪れたこともある。
 一方で、日本の対応は冷ややかだ。研究室では日本で臨床試験を行うため、科学技術振興機構の創薬イノベーションプログラムの補助金申請に応募したが、「開発計画の妥当性・実用化の可能性」がないとの理由で却下された。
 日本での対応とは対照的に仏の専門医からは、「非常に大きな研究成果だ。ぜひうちで臨床試験をやらせてほしい」と申し出があったという。仏からは補助金も得られることになった。
 臨床試験の準備を進めてきた創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス(川崎市)の角田卓也社長は「肉腫の治療薬は市場が小さく大手が参入しなかった。臨床試験が成功すれば、世界の患者に治療の道が開ける」と創薬実現に期待を込める。
 ただ、中村教授は内閣官房医療イノベーション推進室長を兼ね、本来なら日本発の医薬品開発を推す立場にもある。
 中村教授は「私の研究だけでなく、角膜再生医療も日本発のシーズ(技術・情報の種)なのに臨床試験は欧州となった。その理由は創薬や先端的医療は霞が関行政の谷間にあるからだ」と、日本での体制づくりが急務と指摘している。


【用語解説】ゲノム創薬
 ヒトゲノム(全遺伝情報)を解析し、疾患や体質の原因となる遺伝子を突き止め、その情報を元に新しい医薬品やより効果的で副作用の少ない薬の研究、開発をする手法。ヒトゲノムのDNAの塩基配列が2003(平成15)年に日米英などの国際チームによって解明されたことで、創薬の動きが加速した。病気の原因に直接作用するため、薬の効果が高まることや、患者の遺伝子情報に基づいた個別の創薬も可能になることが期待されている。

2011年10月17日  産経新聞

大腸がん抑制遺伝子の変異を解明

理研・東大、たんぱく質の立体構造分析 大腸がんの原因解明に道

 理化学研究所と東京大学の研究チームは、大腸がんの発症に関わるたんぱく質の立体構造を解明した。たんぱく質に変異があると別のたんぱく質と結合できなくなり、細胞のがん化を抑えられなくなることが分かった。発症の原因解明につながる成果で、米専門紙に掲載された。

 大腸がんを抑制する遺伝子の1つに「APC」というたんぱく質の遺伝子が知られ、大腸がん患者の多くでAPC遺伝子に変異が見つかる。これまで、たんぱく質「Sam68」とAPCが結合したたんぱく質複合体が、細胞のがん化につながる情報伝達を制御していることがわかっていた。

2011年10月17日 日経産業新聞

2011年10月14日金曜日

利益は無く有害の可能性の栄養素

ビタミンEサプリでリスク17%アップ

 健康・医療情報サイト「Health Day」は11日、ビタミンEのとりすぎは前立腺がんのリスクを高める、という研究結果を報じた。

 米国の泌尿器科専門家や研究者が発表したものfr、ビタミンEのサプリメントの摂取により、前立腺がんを発症するリスクが最大17% 増大するという。

 研究は、米国医師会雑誌10月12日号に掲載された。

 とりすぎは百害あって一利なし

 実験では、3万5,000人を4つのグループに分け、それぞれにビタミンEのみ、セレンのみ、ビタミンEとセレン、偽薬を無作為に与えた。

 5年半にわたる追跡調査の結果、ビタミンEの影響は実験開始から3年目に明らかになった。

 ビタミンEは脂溶性のため、体内に蓄積されやすい。また、必要量は1日あたり22.4IU(国際単位)とされているが、サプリメントで摂取する人の多くは大量に摂取するため、過剰になりやすい。

 前立腺の専門家は「ビタミンEのサプリメントは摂取しても利益はなく、有害の可能性がある」と語っている。

 一方、有用栄養物審査会のダフィー・マッケイ氏は、この実験でセレンとビタミンEを一緒にとった人は前立腺がんのリスクがほとんど変化しなかったことに 注目。「実験結果は栄養素が複合的に働くことを照明している。有害性について、単独の成分だけを対象に分析を行うのは無意味」と批判した。

2011年10月13日 IBTimes

すい臓がんの死亡率が高い理由

唾液ですい臓がんを早期発見
 すい臓がんは死亡率の高いがんとして知られる。5年生存率は10~20%程度とされ、アップル社の前CEO、スティーブ・ジョブズ氏もつい先日この病気で亡くなっている。
 死亡率が高い最大の原因は、早期発見の難しさにある。米国で発見されたすい臓がんのうち、手術が有効な初期に発見されたものはわずか15%といわれる。それ以上に進行したものについては化学療法が行われるが、治療効果は高くない。
 そんなすい臓がんを早期に発見できる検査法を、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校の膵臓病センターの準教授ジェームズJ.ファレル博士らが発見した。米国の健康医療情報サイト「HealthDay」が12日に伝えた。
 研究結果はガット誌オンライン版最新号に掲載されている。
 唾液中の細菌で判定
 研究者が注目したのは、すい臓がん患者の口内に生息する細菌だった。人の口内には、およそ300~400種の細菌が生息している。
健康な人とすい臓がん患者の口内細菌を調べたところ、がん患者に特有の細菌が31種、健康な人のみに生息していた細菌が25種見つかったという。
 こういった細菌構成の違いは、すい臓がんになりやすい慢性すい炎の患者でも見られた。
 口内衛生ですい臓がん予防も?
 研究者はさらに、この細菌構成の違いは、「すい臓がんがもたらした結果」なのか、それとも「こういった細菌がすい臓がんを発症させている」のか、研究が必要と語っている。
 口内環境が心臓病や肺疾患に結びつくことはすでによく知られている。すい臓がんにもその可能性がある、と考えれば新しい研究分野が開ける。
 将来的には、口内衛生を保つことですい臓がんを予防できる時代が来るかもしれない。

タコが大腸がんに良いと実証

大腸がん予防にタコ効果 医薬品開発に期待 広島

 ■加藤・広大大学院教授、三原で発表

 タコを食べると腸内の善玉菌が増え、大腸がんや大腸炎の予防につながる可能性がある-と、広島大大学院生物圏科学研究科の加藤範久教授(59)=分子栄養学=が、三原市で研究成果を発表した。「タコのまち」をキャッチフレーズに観光振興を目指す三原商工会議所が、タコと健康との関係についての調査を同大に依頼していた。

 加藤教授らの研究グループは、三原湾で採取したタコを乾燥させ粉末にして餌(えさ)に加え、ラット7匹に3週間、与え続ける実験を行った。この結果、腸 内の善玉菌「ラクトバチルス」(乳酸菌の一種)が約3倍に増加した半面、悪玉菌「クロストリディウム」は約3割減少し、腸内細菌のバランスが改善されたこ とを確認したという。

 ラクトバチルスは大腸がんや大腸炎、アレルギーなどの疾病予防に効果があることが報告されている。改善した成分については、現在研究中という。このほか、タコに多く含まれるアミノ酸の「タウリン」が腸内の炎症を抑制し、大腸炎を予防するメカニズムを解明。動脈硬化の予防など血管系の病気の改善にも効果があるとされている。

 こうした研究成果から加藤教授は「タコが健康に良いとの有用性が実証できた」と結論づけた。そのうえで「有効成分が特定できれば、製薬分野などへの広がりも可能」としている。

 市では「これまでのイメージを覆す研究。新たな利用価値が生まれる」と期待している。

2011年10月12日 産経新聞

がん再発や転移を完全に抑制

がん転移の兆し察知 慶応大など研究続々

 日本人の死亡原因の1位を占めるがんで、転移を抑える研究が相次いでいる。がんは手術などで切除しても、骨やリンパ節など体のあちこちで再発してしまうと治療が難しい。1カ所にとどまるなら、克服できるがんもある。5日まで名古屋市で開いた日本癌(がん)学会では、がんの治療効果を高めるため、転移の兆しをいち早く探しだし、先手を打って防ぐ試みが発表された。

 国立がん研究センターは、がん細胞から微小な分子が血管に流れ込んでいることに着目した。ヒトの乳がん細胞をマウスの乳腺に移植し、がん細胞の酵素の働きを抑えてみた。がん細胞が「マイクロRNA(リボ核酸)」と呼ぶ分子を出さなくなると、転移しやすい肺やリンパ節に3週間たってもがんができなかった。「転移は完全に抑制できた」(小坂展慶研究員)

 マイクロRNAが血液を通じて離れた場所にある細胞の遺伝子に入り込むと、そこにがんができやすくなるとみている。がんを呼び寄せる仕組みがあるようだ。

 慶応大学の工藤千恵講師は、がん細胞の遺伝子「HERV―H」が転移に関わっていることを突き止めた。この遺伝子が働くとたんぱく質などががん細胞から 出てくる。免疫細胞を弱め、がん細胞がほかの臓器に移るきっかけになるという。たんぱく質を壊すと転移を抑えられることがマウスの実験で分かった。

がん転移対策の研究例 研究対象主な成果

▼転移を防ぐ 東京大学医科学研究所、順天堂大など 血液凝固たんぱく質が血液がんの転移を制御する酵素に作用する現象を発見。白血病マウスで治療実験に成功 国立がん研究センター がん細胞から出る微小分子を抑える 慶応大 がん細胞が作るたんぱく質などの働きを抑え、免疫力を正常化 ▼転移を予測 東京医科歯科大 大腸がん患者で特定遺伝子「PDGFC」が過剰に働くと転移確率が高まることを発見。診断に応用へ ▼転移を可視化 三重大 特殊な顕微鏡で転移を診断

 工藤講師は、ほとんどのがんでみられるリンパ節への転移を防ぐ治療薬を開発したいという。

 一方、転移しても小さいがんなら治療しやすい。三重大学チームは、組織の奥深くを観察できる特殊な装置「二光子レーザー顕微鏡」を使い、内臓を切らずに転移を調べる技術を開発した。

 血液中の血小板や白血球が緑色に光る遺伝子改変マウスの脾臓(ひぞう)に、赤い蛍光を放つようにしたヒトのがん細胞を注射した。がん細胞の一部が血管を通って肝臓に移動し、1~2カ月後には転移がんが育つ様子などが観察できた。抗がん剤の投与でがんが縮む様子も見えた。

 東京医科歯科大学のチームは特定の遺伝子を目印に再発や転移のリスクを測るのが目標だ。血液検査で遺伝子を調べ、予防的に抗がん剤を投与できる可能性がある。

2011年10月12日 日本経済新聞

2011年10月12日水曜日

大腸がんの性別,年齢別での進行度

大腸がん、男性の方が進行が早い オーストリア研究

大腸がんの男性患者は同年代の女性患者よりもがんが進行している傾向があるとする研究結果が、前月27日の米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)に発表された。

 大腸がんは死者数ががんの中で4番目に多く、世界では毎年61万人が亡くなっている。現在、50歳以上の男女は大腸内視鏡検査を受けることが奨励されている。

 研究では、オーストリアで2007~2010年に全国規模で実施された大腸内視鏡検査プログラムの参加者、4万4350人のデータを分析した。

 プログラムでは、ポリープや良性腫瘍(しゅよう)などの腺腫と特に進行した腺腫、および大腸がんの有無を検査した。

 その結果、すべての年代において、病変の進行度は男性が女性をはるかに上回った。例えば、進行腺腫の割合は50~54歳男性が5%だったのに対し、同年代の女性ではわずか2.9%だった。55~59歳男性の大腸がんの割合(1.3%)は、10歳年上の65~69歳女性の割合(1.2%)とほぼ同じだった。

 全体的に見て、大腸がんの割合は男性が1.5%と、女性の0.7%の約2倍だった。

 論文は、大腸内視鏡検査の指針を性別と年齢について調整する必要があるかもしれないと述べている。

2011年10月11日  AFP

2011年10月5日水曜日

がん治療費を効果的に安くする方法

抗がん剤でこそ安価な薬剤が求められる

 野村証券は「産業アウトルック(10月号)」でジェネリック薬の使用は、降圧薬、糖尿病治療薬などの慢性疾患治療薬より、抗がん剤で進む可能性が高いと解説。

 乳がん治療の1stライン治療薬であるpaclitaxel(一般名)では、ブランド薬とジェネリック薬でほぼ同数の患者に投与されている。  paclitaxel は注射時にゴム手袋の着用が必要であり、取り扱いが難しい薬剤。それでも、ジェネリック薬が多用されている背景には、安価なことがある。
 一治療期間(1クール)の薬剤費用は、ブランド薬で42万円ジェネリック薬で31万円となっている。がん治療では、その他にも多種の薬剤を用いるため、さらに費用がかかる。抗がん剤では、治療効果の高い薬剤も必要であるが、安価な薬剤も必要とされる。

 ジェネリック薬専業メーカーが、抗がん剤のジェネリック薬を単発で提供するより、ブランド薬メーカーが新薬の抗がん剤と併用のジェネリック薬を提供する展開が予想されるので、この観点からは日本化薬が勝ち組と紹介。

2011年10月4日 日本証券新聞

第4のがん治療は費用を全額負担

第4のがん治療、ノーベル賞を追い風に 石川県内関係者、普及へ期待

 3日発表されたノーベル医学生理学賞で「樹状細胞」の発見が授与理由の一つに挙がったことで、同細胞を使ったがんの 最先端医療に携わる石川県内の医療関係者から「普及に向けた大きな一歩」と期待する声が上がっている。金沢先進医学センターでは、金大と連携して患者の治 療効果や検査データの解析研究が進行中。技術面や患者の費用負担など多くの課題があるが、治療機会が増えるよう着実に研究を進める構えだ。

 樹状細胞を使ったがん治療は、手術、放射線、化学療法に続く「第4の治療法」と呼ばれる免疫細胞療法に分類される。がん細胞の目印の情報を持つ「司令官」役の樹状細胞を増やし、がん細胞への攻撃を強化する。

 金大附属病院敷地内にある金沢先進医学センターでは、昨年9月から樹状細胞療法を含む免疫細胞療法を開始し、これまで160人を超える患者を治療してきた。

 「国内ではまだ評価が定まっていない免疫細胞療法が一般化するための大きな一歩になる」。樹状細胞発見者のノーベル賞受賞について、同センターの和田道彦個別化医療センター長は、先端医療に対する理解が深まるきっかけになると指摘する。

 現在、免疫細胞療法は公的保険が適用されておらず、患者は費用を全額負担する必要があるなど、ハードルは高い。同センターはこれまでに、50人以上に樹状細胞を使ったがん治療を行っており、同時に治療効果の検証も進める。

 金大でも、01年以来、樹状細胞療法の臨床試験が30例程度行われてきた。07年には樹状細胞療法を応用すれば肝臓がんの再発を抑える力が高まることを金子周一教授らの研究チームが突き止めている。

 今春、附属病院内に整備された「トランスレーショナルリサーチセンター」でも樹状細胞療法の研究が進められる計画で、副センター長の水腰英四郎講師は、「今後の臨床応用への期待も込められていると思う。研究の励みとしたい」と話した。

2011年10月5日 北國新聞

がん先端治療施設の粒子線治療を新規開業支援

粒子線治療施設の開業支援 兵庫県が三セク設立 

 兵庫県は4日、国内外で粒子線を使ったがん先端治療施設の新規開業を支援するため、装置メーカーと共同で治療技術や情報を提供する第3セクター「株式会社ひょうご粒子線メディカルサポート(仮称)」を11月に設立する、と発表した。世界最高水準とされる県立粒子線医療センター(たつの市)で蓄積した技術を生かし、同治療の普及促進を図る。

 県によると、国内で粒子線治療ができるのは同センターのほか、開設予定の施設も含めて計15カ所。治療装置の低価格化で導入拡大が見込まれるが、専門の医師や放射線技師らの不足で、治療開始まで数年を要しているという。

 このため県は、粒子線治療装置の大手メーカー三菱電機(東京都)など5社と新会社を設立。三菱電機が装置を販売する新規施設に、新会社から専門スタッフ を派遣し、治療技術や機器の調整などのコンサルタント業務を請け負う。また、同センターで技師らの研修も行い、スムーズな開業を支援する。

 新会社は同センター内に置き、資本金は計900万円(県720万円、三菱電機135万円など)。10月下旬に取締役会を開き、社長を選ぶ。

 同センターは2001年4月に開業し、03年から先進医療をスタートさせた。陽子線、炭素線両方を利用できる医療機関としては世界初の施設で、03~09年度の患者数は全国の約4割に当たる約3千人。

 三菱電機は、電力システム製作所(神戸市兵庫区)が治療装置を生産。同センターを含む国内8カ所で受注実績がある。

【粒子線治療】 放射線治療の一種。エックス線など従来の治療とは違い、陽子線や炭素線というミクロの粒子ビームを照射、がん細胞を破壊する。手術が困難 な頭頸部や体内深部の病巣をピンポイントで狙うことができ、痛みや副作用が少ない。当初は整備に約100億円を要した陽子線の装置は現在、30億円程度。 ただ、照射費用は健康保険適用外で、患者負担は約300万円という。

2011年10月5日  神戸新聞

大腸がんの増殖を4分の1に抑える物質

水溶性マグネシウムが発症抑制 炎症性大腸がん

 大腸に炎症を起こさせ、がんを発症しやすくしたマウスに水溶性マグネシウムを与えると、大腸がんの発症が抑制されたと岐阜大大学院の久野寿也准教授と東海細胞研究所(岐阜市)の田中卓二所長の研究チームが突き止め、名古屋市での日本癌学会学術総会で4日、発表した。

 久野准教授らは「潰瘍性大腸炎などに由来する大腸がんの抑制に有効で、人でも検証したい」という。

 大腸に炎症を起こす薬と発がん物質を与えたマウスに、有機物と合成して水に溶けやすくしたマグネシウムを一定期間投与。マグネシウムを与えたマウスは与えなかったマウスに比べ、がん細胞の増殖を最大4分の1に抑えられたという。

2011年10月4日共同通信

2011年10月4日火曜日

リンパ腫・白血病に新しい分子療法

東大、悪性度の高いリンパ腫・白血病でも生体内増殖を抑制できる薬剤を開発

東京大学(東大)は、組織内浸潤を促進するタンパク分解酵素「マトリックスメタロプロテイナーゼ」(MMP)の活性を抑制し、悪性度の高いリンパ腫・白血 病の生体内増殖を抑制できる、血液線維素溶解系因子「プラスミン」の阻害剤の開発に成功したと発表した。東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター幹細 胞制御領域の服部浩一特任准教授らの研究グループによる成果で、9月20日付の「Leukemia(電子版)」に発表された。

悪性リンパ腫・白血病は血液系細胞の悪性化によって生じるがんの一種で、近年日本でも増加してきている。数多くの新薬が開発されてはいるものの、組織型によって未だに致命率の高い予後不良の難治疾患であることが特徴だ。

研究グループは、生体内の血液凝固能を制御する線維素溶解系(線溶系)の因子プラスミンが、がん細胞の転移、MMPの活性化を制御することに注目。神戸学 院大学と順天堂大学との共同研究により、プラスミンの阻害剤を悪性度の高いT細胞型リンパ腫および白血病を発症させたマウスに投与してみたところ、がんの 増殖を抑制することに成功した。

プラスミンは、生体血液中において、血液凝固系の亢進による血栓形成を制御する役割を担う機構である「線維素溶解系」の中で、中心的役割を担う生体因子の 1つ。前駆体である「プラスミノーゲン」から、組織型あるいはウロキナーゼ型「プラスミノーゲンアクチベータ」の作用により活性化されて生成し、血栓形成 の核となる「フィブリン」を分解するほか、近年はがん細胞の生体内での転移、組織内浸潤といった動態を制御するMMPの活性化を制御することが明らかとなってきた。

そしてMMPは、共通のアミノ酸配列を有し、細胞外マトリックスを基質とする亜鉛などの金属を活性中心に有する金属要求性タンパク分解酵素で、その多く は、「潜在型酵素プロ酵素」として産生され、プラスミンやMMP相互間で活性型MMPへと変換される。生体組織中にがん細胞が浸潤、転移する際は不可欠な 因子と考えられており、これまで多くの阻害剤が報告されているが、欧米の臨床治験、動物実験でその深刻な副作用が明らかとなって以来、MMPを標的とした 分子両方の研究開発自体にも支障を来しているという状況だ。

前述したように、従来の抗がん剤は細胞殺傷作用などの副作用が あるが、今回の薬剤はそれらが存在しないことが大きな特徴。動物実験の結果からは、現在のところは有意な副作用も認められていない。こうした結果から、線 溶系因子を新しい標的とした今回の薬剤は、リンパ腫・白血病に対する従来にない新しいタイプの分子療法の可能性を示したものと考えられている。

また今回の研究は、がん増殖過程における、線溶系を起点とした造血系細胞の動員と血管新生の促進機構を提示したことで、がん病態の新たな一面を明らかにした形だ。

2011年10月4日 マイコミジャーナル

がん抑制遺伝子を新たに発見

福島県立医大、がん抑制新遺伝子発見 放射線障害と関連

 福島県立医大は3日、がんを抑える新しい遺伝子「NIRF(ナーフ)」を発見したと発表した。細胞内のがん抑制機能の中心的なタンパク質を合成する遺伝子で、他のがん遺伝子やがん抑制遺伝子と相互に作用して働きに影響を与える。他遺伝子と幅広く相互作用するタンパク質を合成する遺伝子が確認されたのは世界初。

 同大看護学部生命科学部門の森努准教授(47)によると、NIRFはサイクリンD1などがんの発症を促すがん遺伝子に作用し、がん化を抑える。pRBなどのがん抑制遺伝子にも働き掛け、機能を促進する可能性もある。  がんは細胞分裂を止めることによってがん細胞の増殖を抑え、発症を防ぐことができる。NIRFは細胞分裂を停止する機能の中心因子に位置付けられ、個別の遺伝子の働きを調整する。
 研究の結果、実際に特定の肺がんでNIRF遺伝子の染色体がわずかに失われていたことが判明し、NIRFの異常が肺がんの原因になっていることが裏付けられた。

 森准教授は「これまで個別のがん遺伝子やがん抑制遺伝子は発見されていたが、これらの遺伝子の階層構造の頂点に位置し、幅広く相互作用する物質が見つかったのは初めて。放射線障害と関連する遺伝子で、福島第1原発事故の健康被害を最小限に食い止めるためにはNIRFの機能解析が欠かせない」と話している。
 研究成果は1日付の米国の科学誌「セルサイクル」に掲載された。

2011年10月04日 河北新報

2011年10月3日月曜日

微量の血液から初期がん でも発見

がん診断、微量血液で 国立がんセンター

 国立がん研究センター研究所と東レの研究チームは、血液中の「マイクロ(微小)RNA(リボ核酸)」を手掛かりに、がんかどうかを診断する手法の開発にメドをつけた。新たに開発した試薬とDNA(デオキシリボ核酸)チップを使う。今後、がんの種類ごとにどのマイクロRNAが目印(マーカー)になるかを調べ、早期の実用化を目指す。3日から名古屋市で始まる日本癌学会のセミナーで発表する。

 現在、血液中の特定のたんぱく質を目印にがんを診断する検査はあるが、がんの初期段階にきちんと判断するのは難しい。血液検査で分かるとされる前立腺がんの場合も、実際には前立腺肥大と区別できないケースが多い。

 たんぱく質を作る遺伝子の働きを制御するマイクロRNAを目印に使えるようになれば、微量の血液からがんが診断できるようになり、患者の負担も軽くなる。

 研究チームの新手法では、血液の上澄み(血清)が300マイクロ(マイクロは100万分の1)リットルあれば、従来の約4倍にあたる300~700種類のマイクロRNAを調べることができるようになった。

 実際に健康な人と乳がん患者の血清を測ったところ、がん患者に特有の2種類のマイクロRNAを検出できた。胃がん肺がんなどでも調べると、別の種類のマイクロRNAが出ていることも分かった。

2011年10月2日 日本経済新聞

2011年9月30日金曜日

子宮がんの新診断手法

子宮がん診断に新手法 福井大、薬剤使い画像判別可能に  子宮にできた腫瘍(しゅよう)が良性の筋腫か悪性の肉腫かを見分ける手法を、福井大学が確立した。これまでは手術で取り出した組織を調べなければ見分け がつかなかったが、同大がつくった新しい検査用薬剤で画像による診断が可能となる。早い段階で肉腫を発見し、不要な手術を減らすことも期待できる。
 同大高エネルギー医学研究センターの岡沢秀彦教授と医学部医学科産科婦人科学領域の吉田好雄准教授らが開発した。同大によると、良性の子宮筋腫はホルモン療法などで治療可能だが、肉腫は進行が早く、子宮外に転移すると生存率も低く悪性度が高い。
 子宮筋腫の患者は国内で200万~300万人とされるが、うち1~3%が悪性の子宮肉腫だといわれている。しかし、両者はこれまで判別しにくく、手術をして組織を調べなければ、診断が遅れ、手遅れになるケースがあった。
 通常、腫瘍を診断するPET(陽電子放射断層撮影)検査は、ブドウ糖に似た放射性の検査薬(FDG)を体内に注入し、検査薬ががん細胞に集まるのを画像 化する。がん細胞が正常な細胞よりブドウ糖を取り込む性質を利用した手法だ。しかし、この検査薬だと肉腫だけでなく筋腫にも集まってしまい、見分けがつか なかった。
 そこで同大は、筋腫は女性ホルモンを取り込むのに、肉腫は取り込む働きが正常ではないことに着目。女性ホルモンに放射性物質を化合させた薬剤(FES)を新しく作って体内に注入し、PET検査をしてみた。
 患者に了解を得て、FDG、FESの双方を使ってPET画像を比較したところ、24人中22人が手術をする前に筋腫か肉腫かを正しく診断できたという。岡沢教授と吉田准教授は、この研究を米国核医学会議で発表し、「腫瘍診断基準部門」で最高賞を受賞した。
 吉田准教授は「この手法が一般的になれば、手術をする人を減らすこともできる。今後は検査の精度を上げるにはどうしたらいいか、子宮肉腫以外のガン検査に応用できないか、研究を進めたい」と話している。
2011年9月29日 朝日新聞

免疫機能が活性化されるタンパク質

細菌の核酸物質で免疫向上 抗がん剤開発に期待

細菌の細胞内で生成される核酸由来の化合物「c―di―GMP」を投与して、哺乳類の体内にあるタンパク質に刺激を与えると、免疫機能が活性化されることを愛知工業大と北海道大などの研究チームが突き止め、28日までに英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。
 この物質が大腸がん細胞の増殖を抑える効果も確認。マウスの実験では目立った副作用もないという。 c―di―GMPには、さまざまなウイルスの感染を軽減する作用があることは知られていたが、詳しいメカニズムは解明されていなかった。チームの早川芳宏 愛知工業大教授は「抗がん剤やエイズの予防・治療薬の開発につながる可能性がある」と期待。

2011年9月28日 共同通信

2011年9月29日木曜日

再発乳がんには効かない乳がん治療薬

乳がん再発すると 3分の1はタイプが変化

乳がん患者の3人に1人は、最初に診断された時と再発後では、がんのタイプが変化していることがわかった。がん組織を調べる検査は通常、診断時にしか行 われず、再発後に「効かない」治療を受けている患者が相当数いる可能性が出てきた。同様の変化は、他のがんでも起きる可能性があるという。
 スウェーデンのカロリンスカ研究所が26日、欧州集学的がん学会で発表した。
 乳がんには、女性ホルモン陽性でホルモン療法が効くタイプと、女性ホルモン陰性で抗がん剤のハーセプチンが効くタイプ、いずれも効かないタイプがある。

大腸がん予防に有効な栄養素

大腸がん、予防に「葉酸」が効果 愛知がんセンター

ホウレンソウ、春菊、小松菜、レバーなどに含まれる「葉酸」を多くとって飲酒しない人ほど、大腸がんになりにくい――。そんな調査結果を、愛知県がんセンター研究所の研究チームがまとめた。
 葉酸は、緑色野菜や肝臓に含まれるビタミンBの一種。欧米人対象の研究で大腸がん予防効果が知られていた。日本人に同じ効果があるか、同研究所の疫学・予防部が検証した。
 がんセンターを受診した4974人に、書き込み式で質問した。内訳は大腸がん患者が829人、がんではない人が4145人だった。ふだんの食事を詳しく 尋ね、回答から個人の1日あたり葉酸摂取量を推定。摂取量が少ない人から多い人までをほぼ同じ人数で4グループに分け、各グループのがん患者の割合などを 分析した。
 この結果、摂取が最も少なかったグループにおける大腸がんのなりやすさ(リスク)を指数で1とした場合、摂取が最も多いグループの大腸がんリスクは0.72になった。

がん治療の最前線に迫る

切らずに治す、がん治療の最前線に迫る...『ガイアの夜明け』

江口洋介の案内で、現在の日本を切り取る経済ドキュメンタリー『ガイアの夜明け』(テレビ東京系列)。9月27日放送では切らずに治す、がん治療の最前線に迫る。

 日本人の2人に1人がかかる「がん」。今、がんを「切らずに治す治療」が脚光を浴びている。体外からビームを照射してがんを狙い撃ちする「粒子線治療」 は、身体への負担が少なく、ここ数年で急激に普及している。今年、その粒子線治療の巨大な施設が国内で立ちあがった。一方「神の手を持つ男」と呼ばれる胃 がん手術の名医が、手術ロボット「ダヴィンチ」の導入に踏み切った。一体なぜなのか...?!「切らずに治すがん治療」の最前線を追う。

■『ガイアの夜明け』
2011年9月27日(火)22:00~22:54(テレビ東京系列・一部地域を除く)

乳ガンのガン細胞を殺すウイルス発見

乳ガンのガン細胞をやっつけてくれるウィルスが発見されました。

ペンシルベニア州立大学の科学者が人類にとって有益なウィルスを発見したそうですよ。なんとガン細胞を殺してくれるんです。 そのウィルスは、アデノ随伴ウィルス タイプ2!(adeno-associated virus type 2) 実験では3つのステージの乳ガンのガン細胞を殺すことに成功したそうです。
これはスゴイ重要なことです。なぜならステージが異なると、それぞれちがった治療法が必要とされるからです。実験について詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。

実際にどのようにウィルスがガンをやっつけているかはまだ分かっていません。
そこの仕組みが分かれば、新薬の開発その他の治療に有効だと考えられています。ウィルスそのものを治療に使うこともできるようになるかもしれません。
他の研究では、子宮頸ガンのガン細胞にも作用するという結果がでています。この実験結果が実際に薬などとして使用されるにはまだまだ色々な過程を経なければいけません。動物実験の後、3つのフェーズの厳正な臨床実験を行う必要があります。
女性が一番かかりやすく死亡率も高い乳ガンが治療できたら素晴らしいことですよね。これから様々な実験などが必要という事ですが、それらに成功して早く臨床で使う事ができるようになるといいですね。

1ミリ穴から腹腔鏡がん手術

ニチオン、患者負担少ない腹腔鏡手術 国立がん研と開発

医療器具製造のニチオン(千葉県船橋市、本田宏志社長)は国立がん研究センターと組み、開腹せずに内視鏡で行う腹腔(ふくくう)鏡手術で患者の体への負 担の少ない手法と器具を開発した。特殊なクリップの付いた糸を使うのが特徴。内視鏡と手術用のはさみの穴以外は、直径1ミリメートル程度の穴で済むとい う。来年中の実用化と器具の販売を目指す。

通常、腹腔鏡手術では手術をする部分が見やすいように、鉗子(かんし)で内臓を持ち上げたり、押さえたりする。鉗子用の穴を開けるため、内視鏡、手術用のはさみのためのものを含めて、直径3~5ミリメートル程度の穴を4~5個開けることが多いといわれる。

ニチオンとがん研究センターは鉗子の代わりに特殊なクリップの付いた糸を使い内臓を引っ張る手法を考案した。まず内視鏡やはさみの穴を使い、クリップで内臓をつまむ。次に、体外から直径1ミリ程度のはりを刺してクリップの糸をかけて引っ張る。

この手法では直径5ミリメートル程度の穴は内視鏡用とはさみ用の2つで、残りは同1ミリメートルで済む。直径1ミリ程度の穴だと自然にふさがるため、術後に縫う必要はないとされ、「今までの腹腔鏡手術より患者への負担が少なくなる」(ニチオン)。

クリップは血管用クリップなど既存品を改良し、長さ5~10センチの3種類を用意した。内臓を引っ張るため、つかむ力を弱めたほか、鉗子が引っかけやすいように溝を付けた。

今後は動物実験を繰り返し、年内の臨床実験を目指す。操作用の鉗子2本とクリップ数本のセットで60万~70万円程度の販売を検討している。

ニチオンは手術器具の製造のほか、手術器具の洗浄装置の輸入、販売などを行っている。2011年5月期の売上高は約12億円。

2011/9/28

2011年9月28日水曜日

前立腺がん増殖の原因酵素を解明

前立腺がん 特定酵素が異常増殖に関与 研究グループ解明

東北薬科大分子生体膜研究所の宮城妙子教授と宮城県がんセンターの研究グループは、前立腺がんの細胞が特定の酵素で異常増殖することを突き止めた。この酵素の合成や働きを抑えることで、近年増加傾向にある前立腺がんの新しい診断・治療法を開発できる可能性があるという。
前立腺がんの治療法には、男性ホルモンの一種「アンドロゲン」の働きを抑制することで、がんの進行を阻止・制御するホルモン療法がある。だが次第に効果が低下し、がんが増加することがあり、治療上の問題点となっていた。
宮城教授らは「シアリターゼ」と呼ばれる酵素に注目。細胞の表層膜にあり、細胞の増殖や分化、細胞内の情報伝達を制御する働きがある。
マウスを使った実験で、シアリターゼが前立腺がんの組織で異常に増殖することを発見。その変化がアンドロゲンの働きを活発化させ、がんの悪性度と相関関係があることも分かった。
シアリターゼを抑制すると、マウスに移植した前立腺がん細胞が縮小することも判明。ホルモン療法が効かなくなった患者でも、シアリターゼの働きを低下させることで治療が期待できる。
宮城教授は「シアリターゼは、前立腺がんの診断・治療に役立つ。将来的には、この酵素をピンポイントでたたく分子標的薬の開発を目指している」と話している。
研究成果は6月に米国国際誌「細胞死と分化」オンライン速報版に掲載され、アジアの研究者の仕事を評価するウェブサイトで9月のベスト論文の一つに選ばれた。

2011年09月28日 河北新報

2011年8月2日火曜日

抗がん剤とビフィズス菌で高い治療効果

がん治療にビフィズス菌、米で第1相治験へ 信州大発創薬VBアネロファーマ

信州大学発の創薬ベンチャー、アネロファーマ・サイエンス(東京・中央、三嶋徹也社長)は同社が開発した抗がん剤候補を使った治療法について、第1相臨床試験(治験)を来年初めにも米国で始める。がん組織の深部に集まるビフィズス菌の性質を利用して抗がん剤を送り込み、高い治療効果を見込む。製品化できればピーク時の年間売上高で400億~500億円以上を見込めると期待する。
「APS001F(開発番号)」は生きたビフィズス菌の一種で、「シトシンデアミナーゼ」という酵素を生産するように遺伝子組み換え技術で生み出した。
2011年8月1日 日経産業新聞

がん退治する免疫療法を実用化へ

NK細胞の新培養法開発

バイオベンチャー「テラ 」(東京都千代田区)は九州大と共同で、免疫細胞の一種「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)のがん攻撃能力を高める培養方法を開発、特許出願したと発表した。
この方法を使うと、がん細胞などを殺傷するNK細胞中の酵素の活性を約4~10倍に高めた上に、NK細胞の数を数百倍に増やすことができる。これまで報告されている方法よりもがん細胞殺傷効果が数倍高いという。
テラはこれとは別に、NK細胞を約6千倍に大量培養する方法を開発しており、これらの方式を組み合わせて、NK細胞を体外で培養して体内に戻し、がんを退治する免疫療法を実用化したいとしている。

2011年8月2日 短信

2011年8月1日月曜日

腎細胞がん、皮膚がんへ新分子標的薬

第2世代の腎細胞がん薬アキシチニブ 「ファイザーが狙うのはセカンドライン」

今年6月に米シカゴで開催された「ASCO(米国臨床腫瘍学会)2011」では、悪性黒色腫腎細胞がん肉腫といった難治がんな どで、分子標的薬などの有望な臨床成績が発表された。このほど、サイニクス社と米ヘルスケアコンサルタント企業Kantar Health共催の「ASCO 2011キーハイライト・セミナー」で来日したKantar Healthのオンコロジースペシャリストのゴードン・ゴコナワ氏(シニア・コンサルタント)が本誌のインタビューで、ASCOでの報告を踏まえ、注目さ れる開発品の臨床試験の結果や上市後のインパクトなどを語った。

アステラスの腎細胞がん薬チボザニブ 「市場でのポテンシャルは大きい」

腎細胞がん(RCC)は患者数が少ないながらも、国内で既に分子標的 薬4剤(ネクサバール=バイエル、スーテント=ファイザー、アフィニトール=ノバルティス、トーリセル=ファイザー)が上市され、薬剤が込み合ってきた市 場。しかし、大手外資や内資によって、これに続く分子標的薬が開発中で、アキシチニブ(ファイザー)などが効果や安全性の面から臨床現場から期待されてい る。

同剤はスーテントやネクサバールと同じマルチキナーゼ阻害剤だが、VEGF1、2、3を選択的に阻害する第2世代の分子標的薬といわれる。転移性RCC患 者に対するセカンドラインにおけるネクサバールと比較したフェーズ2試験(AXIS1032)では、主要評価項目のPFS(無増悪生存期間)が優れている ことが分っている(4.7カ月対6.7カ月)。毒性プロファイルを見ても大きな違いない。

ただし、セカンドラインの標準薬になり得るかどうかについては課題もあるものの、ゴードン氏によると、mTOR阻害剤アフィニトールの臨床試験結果 (RECORD-1試験)と比べても、患者背景は異なるものの、PFSはアキシチニブの4.8カ月に対し、アフィニトールは4.9カ月であり、「それほど 大きな差は出ていない」という。毒性に関しては、「大きな差は見られないが、日本人ではアフィニトールを投与した患者に間質性肺炎が出るということで懸念している」と解説。

これらを踏まえ、同氏は、アキシチニブ以外に、スーテント、トーリセルを有するファイザーの戦略について、患者の臨床的背景で薬剤の使い分けを進めるので はないかとの考えを提示。予後の良い患者では、ファーストラインでスーテント、セカンドラインでアキシチニブ、サードラインでトーリセル、予後の悪い患者 ではファーストラインでトーリセル、セカンドラインでスーテントもしくはアキシチニブという形で、患者の臨床背景によらず、アキシチニブをセカンドライン として位置付けるような戦略をとる可能性があるとの見方を示した。

アキシチニブ以外にも新規の分子標的薬の開発が進行中で、ゴードン氏はそれらの薬剤の特徴や想定される位置づけについても説明。FGFR/VEGFR阻害 剤ドヴィチニブについては開発元のノバルティスが、アフィニトール、スーテントの2剤を投与しても効果が期待できない患者のサードラインとしてのポジショ ニングを目指すのではないか、との考えを提示。一方、アステラス製薬が米アヴェオ社と開発中のVEGFR阻害剤チボザニブに関しては、外科手術後の予後の 良い患者を対象にしたフェーズ2試験で、PFSは14.8カ月という結果が得られている。現在ネクサバールと効果や安全性などを比較するフェーズ3試験が 行われているが、同氏は「PFSを改善するような有効性を示すデータが出れば、RCCの市場でポジショニングが可能。国内ではRCCのステージ4の患者の 6~7割が手術を受けるので、市場のポテンシャルはかなりある」と解説した。

大きく前進したメラノーマの治療 激化する大手外資による開発競争

メラノーマ(悪性黒色腫)の新薬の展望についても語った。メラノーマの治療をめぐっては、今年のASCOの会長が開催期間中に「今年はメラノーマの年である」と発言したように、今年最も注目されているがんと いっても過言ではないだろう。背景には、米国では今年3月に切除不能・転移性メラノーマで全生存期間を初めて延長させた抗CTLA-4抗体 YERVOY(一般名:イピリムマブ、BMSが開発)が承認され、大きく治療が大きく前進したことが挙げられる。加えて、第一三共が買収した Plexxikon社と提携先のロシュグループが開発中のベムラフェニブのP3試験結果が今年の米国臨床腫瘍学会で発表され、 BRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマ患者群で化学療法群と比較して、死亡リスクを63%、有意に低下させた。

ゴードン氏はこれら2つの薬剤が揃って使用可能になった場合のBRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマに対する使い分けについて、「ベムラフェニブは約 50%という非常に高い奏効率が得られているので、腫瘍が大きく、早い奏効を求める患者には有効。エルボイは奏効率がベムラフェニブよりは低いが、長く持 続する特徴があるので、腫瘍サイズは小さく、低悪性度のがん患者に対して有効なのではないか」とコメント。一方、BRAF遺伝子変異のない患者(野生型)に対しては、ファーストラインでエルボイと化学療法を行うことになるのでは、との見方を示した。日本では両剤ともにメラノーマに対しての開発はまだ行われていない。

転移性メラノーマの新薬開発は競合が激しく、BRAF遺伝子変異型の患者をターゲットとした新薬がGSK(フェーズ3)やノバルティス(フェーズ1/2) などにより、複数開発されている。また、BRAF以外をターゲットとするMEK阻害剤の開発が、GSK(フェーズ3)、アストラゼネカ(フェーズ2)が進 めているほか、さらに一歩進み、分子標的薬同士の併用療法の開発も活発化している状況。MEK阻害剤とRAF阻害剤の併用療法をGSK、ノバルティスが実 施しているほか、ロシュがベムラフェニブとMEK阻害剤の併用療法、さらにはロシュ/中外製薬がRAFとMEKのデュアルインヒビターの開発を進めるなど 「BRAF変異のある患者での効果を増幅する効果を狙った新薬」の開発は激戦の様相を呈し始めているという。

2011年8月1日 ミクスONLINE

抗がん剤と点滴静注と嘔吐新薬

薬食審・第一部会 制吐剤の新薬を審議、承認を了承

厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は7月29日、抗がん剤投与に嘔吐などを抑える小野薬品の制吐剤を承認することを了承した。9月にも正式承認となる運び。

プロイメンド点滴静注用150mg(一般名:ホスアプレピタントメグルミン、小野薬品):「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。

経口のNK1受容体拮抗型制吐薬イメンドカプセル(一般名:アプレピタント)のプロドラッグ。がん患者の中には経口剤の服薬が困難な人がいるほか、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤が多い。こういった医療現場からの注射剤へのニーズに応えるため、今回の注射タイプの制吐薬の開発を進めてきた。

2011年8月1日

外来でがん治療ができる化学療法室

高齢者の診療機能強化
化学療法室も設置へ 千葉大病院の新外来棟

千葉大付属病院(千葉市中央区亥鼻、宮崎勝院長)は、2011年度に着工する「新外来棟」の施設内容を明らかにした。県内初となる高齢者医療センターでは、患者は移動せずに各診療科の医師がセンターを訪れて診察に当たる。通院でがんなどの治療ができる外来化学療法室を設置するなど、急速な高齢化の進展に対応して、外来診療の機能を強化する。

県内の65歳以上の高齢者の人口は、団塊の世代が高齢期を迎えるのに伴い05~15年の10年間で増加率が50%に上り、30年後の2045年には高齢者人口は200万人に達する見込み。

こうした状況を踏まえ、新外来棟には高齢患者の診療強化に向け高齢者医療センターを新設。これまで複数の疾患を抱える高齢患者は、各診療科を自ら移動して受診していたが、同センターでは各医師が出向いて患者を診察する。

がんなどの化学療法に通院で対応する外来化学療法室では、患者は日常生活を送りながら治療が受けられる。

2011年07月31日 千葉日報

がん抑制メカニズムを解明

九大、がん抑制メカニズムを解明 特定タンパク質が関与

細胞核内の特定のタンパク質が減少すると、がんを抑制するタンパク質が活性化するメカニズムを、九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授らのグループが解明し、7月31日付米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。がんの新薬開発や、高度な予後予測につながる可能性がある。

鈴木教授らは人間の細胞核内にある「PICT1」というタンパク質の性質を解明。PICT1の量が減ると、がんを抑制する別のタンパク質「p53」が著しく増加することを発見した。

PICT1はこれまで全容が分かっておらず、がんを抑える作用があると予想されていた。

2011年8月1日 共同通信

2011年7月29日金曜日

抗がん剤を密封して磁気誘導する新治療法

東京慈恵医大、水溶性抗がん剤も搭載可能なドラッグデリバリシステムを開発

東京慈恵会医科大学の並木禎尚講師らの研究グループは、異分野技術の融合により、これまで磁気的に送達が困難であった水溶性薬剤を中空磁性カプセルに密封することで、水溶性薬剤の送達を磁力で制御できるがん治療用ドラッグデリバリシステム(DDS)を開発した。開発した中空磁性カプセルは、磁性ナノ粒子を用いる従来技術と比べて5倍以上の薬剤を搭載することが可能で抗がん剤投与量を大幅に削減することが期待されるという。同成果は米国の科学誌「Accounts of Chemical Research」電子版に掲載された。

進行がんの治療法として最も普及している抗がん剤は、通常の薬剤とは異なり、治療効果を発揮する薬剤濃度と、中毒症状が発生する薬剤濃度とが近接する特徴を持っているため、治療効果の向上を目指して抗がん剤の投与量を増やすと、治療の継続を妨げ、時には死を招く有害な副作用が起こり易い問題があり、この「がん病巣における薬剤濃度の上昇」と「正常組織での薬剤分布の低減」による問題の克服を目指したDDS開発が各所で進められているが、さまざまな課題が残されているのが現状である。

従来の磁性ナノ粒子には、水溶性抗がん剤の「粒子内部への密封」、「薬剤搭載スペースの確保」が難しいといった課題が存在していたが、今回研究グループでは、(1)薬剤が自由に出入りできる網目状の隙間、(2)大量の薬剤搭載スペースをもつ「中空磁性カプセル」を開発することで、これらの課題の克服を目指した。

実際に内部に水溶性抗がん剤を密封し、磁気誘導したところ、ヒトがん培養細胞株において磁性カプセルを用いない場合と比較して、抗がん剤単体の 100倍以上の抗腫瘍効果を発揮したことが確認されたほか、薬剤搭載率は、中空スペースを持たない従来型磁性ナノ粒子の5倍以上を達成したという。

研究グループでは今回の技術に対し、中空磁性カプセルの薬剤搭載率が50%以上であること、磁力による磁性カプセルの標的病巣への誘導効果が期待されることより、将来的には、抗がん剤の 投与量を1/10以下に低減できる可能性があるとしており、今後、サイズの最適化などを行い、動物モデルでの治療効果の検証を進めていくほか、中空磁性カ プセルの性能をさらに高めることで、「からだにやさしく、良く効く」がん治療を目指したDDSの開発に取り組んでいくとしている。

2011年7月28日 マイコミ 

オメガ3脂肪酸が がんに効く食品

くるみを食べて脱メタボ
メタボ予防セミナーくるみ料理と酒を楽しむ夕べ開催

カリフォルニアくるみ協会

カリフォルニアくるみ協会は7月26日(火)にロイヤルパーク汐留タワーにて、メタボに悩む中高年男性35組70名を招待してメタボ予防セミナーを開催した。

くるみとメタボリックシンドロームにどんな関係が? と思うかもしれないが、くるみにはオメガ3脂肪酸という良質の脂肪酸が豊富に含まれている。これは、動脈硬化を防ぎ、悪玉コレステロール値や中性脂肪値を下げ、心臓病、がん、脳溢血・脳卒中、糖尿病、高血圧、肥満など、いわゆる生活習慣病の予防に効果を発揮し、ほかのナッツ類に比べてもダントツに多くくるみに含有されている。
つまりくるみを日常的に摂取することで、メタボ対策にもつながると言うわけだ。

セミナーではTVなどでもご活躍の山王クリニック院長山王直子先生を招き、メタボ予防についてや、オメガ3脂肪酸のメタボリックシンドロームに対する有用性を講演。
さらに、196年の歴史をもつ新潟上越市に蔵を構える妙高酒造社長の松田治久氏や2007年 日本一のシャンパーニュソムリエを決定する第6回 キュ ヴェ・ルイーズポメリーソムリエコンテストで優勝されたソムリエの田辺公一氏、ロイヤルパーク汐留タワーの君島裕シェフのトークショーも開催し、くるみを ふんだんに使ったメニューや美食に関してのこだわりなどを語った。

会場では、今回のセミナーのために特別にロイヤルパークホテルが開発したくるみメニューがふるまわれた。参加者は、妙高酒造のくるみ料理にぴったりな日本酒や、ソムリエのチョイスしたワインとともに、くるみと酒の相性や新しいおいしさを体験できた。
このメニューは9月にGlenmorangie(グレンモーレンジMHD)と、10月には妙高酒造とコラボレーションしてロイヤルパーク汐留タワーラウンジで実際に味わえるという。

山王直子先生は講演の中で「日本人は欧米人に比べて喫煙率が高く、コレステロール値もほぼ同じにも関わらず冠動脈疾患が遥かに低いのは、日本の食生活に 多く登場する魚が関与しているといわれています。  特に青魚に多く含まれているEPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸は、動脈硬化に対して絶大な効果を発揮すると考えられています。くるみに含まれるア ルファリノレン酸もEPAやDHAなどと同じ多価不飽和脂肪酸あり、血流を良くし動脈硬化の改善が見込め、これら3つの脂肪酸を総称して「オメガ3脂肪 酸」とも呼ばれています。
‘くるみが太る’は間違いです。ナッツの中でもずば抜けてオメガ3脂肪酸の含有量が豊富で血流を良くし、メタボ予防にも役立つくるみは、積極的に1日28グラム(手のひらに軽くひとつかみ)を摂取して欲しい食材です」とコメント。
メタボ対策としてのくるみの食べ方のアドバイスなど、医学的見地からのくるみの持つ力の凄さを説いていた。

2011年7月29日 PRON Web

患者数が3倍増加のがん

年間3000人が死ぬ口腔がんは発見が遅れがち 歯科で診察を

特定の原因がなく舌の縁や頬粘膜などが白くなる白板症や、紅斑が出る紅板症は、口腔がんの前がん症状といわれる。初期ではほとんど無症状だが、白板症で7~14%、紅板症では実に50%以上の確率でがん化する。

欧米では歯科の診察による早期発見で口腔がんの生存率が改善している。一方、日本では、この30年で患者数が3倍も増加しており、しかも進行がんが多く注意が必要だ。

口の中にできる口腔がん患者は、日本ではこの30年間で約3倍に増えており、現在、年間約6000人が新たに発症し、約3000人が死亡している。口腔がんの主なものは舌がんだが、このほかにも舌と歯肉の間にできる口腔底がん、歯肉がん、口の上側にできる硬口蓋がん、頬粘膜がんなどがある。

がん全体における口腔がんの割合は2~4%と少なく、また、口の中の病気は虫歯や歯周病だけだと思われているため、早期発見が遅れるケースが多い。昭和大学歯科病院口腔外科の新谷悟教授に話を聞いた。 「口腔がんの前がん病変として白板症や紅板症があります。白板症は特定の原因がなく舌の縁や頬、歯肉などの一部が白くなるもので、7~14%の確率でがん化する病変です。口の粘膜の一部が紅色になるのが紅板症で、がん化する確率は50%以上と高率なので注意が必要です」

週刊ポスト2011年8月5日号

2011年7月28日木曜日

末期の進行再発結腸・直腸がん患者向け新薬

大鵬薬品が新規抗悪性腫瘍薬「TAS-102」の臨床第II相試験結果を発表

大鵬薬品工業(東京都千代田区)は22日、同社が開発を進める新規ヌクレオシド系抗悪性腫瘍薬「TAS-102」に関する臨床第II相試験の結果が、第9回日本臨床腫瘍学会学術集会(横浜)において公にされたと発表した。標準治療不応な進行再発結腸・直腸がん患者に対し生存期間を有意に延長することが示された。

本試験は、フッ化ピリミジン系薬剤、イリノテカンおよびオキサリプラチンを含む2レジメン以上の標準化学療法に不応となった切除不能な進行再発結腸・直腸 がん患者172名を対象とし、プラセボ対照の二重盲検ランダム化比較試験でTAS-102の延命効果を主要評価項目として評価している。

その結果、TAS-102投与群ではプラセボ投与群に比べ全生存期間が延長し[全生存期間 中央値:9.0か月対6.6か月]、死亡リスクも有意に減少した[HR=0.56,p=0.0011]。また、治療関連死は認められず、最も高頻度に認められたCTCAEグレード3以上の薬物有害反応は好中球減少であり、下痢や倦怠感、悪心などは10%以下だった。

2011年7月28日 医療人材ニュース

確実にガン細胞だけを除去する精密機械

 『ガイアの夜明け』では、自らが編み出した独自の医療技術を惜しみなく提供し、世界の患者を救おうと奔走している人々を追う。今も、原発事故の影響で放 射能汚染に苦しむチェルノブイリ。当時体内被曝したため、甲状腺がんを発症した患者が多い。この放射能汚染地域で、一人の日本人医師の医療支援活動に密 着。

【"神の手"を持つ名医、なぜチェルノブイリで...?】
1986年4月26日、チェルノブイリ原発事故が起きた。現場では、様々なガンで数万人の住民が亡くなっている。とくに女性が多く発症する甲状腺ガンは、放射線による影響が最も指摘されている。日本医科大の外科医・清水一雄教授は、12年前からチェルノブイリに通っている。1998年、清水教授は世界で初めて内視鏡を使った甲状腺ガンの手術に成功。内視鏡を使うため手術痕が小さく、完治も早いという利点があった。そして翌99年に教授は、単身チェルノブイリへボランティアとして渡った。事故から13年、そこで見たのは「20年遅れた医療技術では、ガン患 者を診断することさえできない...」という現実だった。そこで、これまで現地にはなかった日本の最新検査システムを導入、ガンの早期発見・早期治療を実 現するため、ロシア人医師たちの指導を始めた。そして「自分の開発した技術で若い女性たちを救いたい!」という思いで2009年からは、日本医科大の医学 生たちを連れて、日本製の機材を持ち込み、現地の病院で内視鏡手術を実施。これまで一般的だったメスを使った手術は大きなキズが残ってしまうため、(現地 ではそれを隠すためタートルネックの女性が多い)内視鏡手術は、20代の女性たちにとってまさに夢のような技術であった。今後は現地でも内視鏡手術ができ るよう、研修を進める予定だ。

【世界の医師が注目...がん患者を救う、ニッポンの"極小技術"】
長野県岡谷市、精密機械工場が集まるこの町に、全国の医師たちが詰めかける会社がある。リバー精工は、大手医療機器メーカーとは違ったアプローチでユニー クな製品を作り出す会社。社長の西村幸氏は元々、モノづくりの世界に身を置いていたわけではない。実は、法務省の官僚だった。地元・長野に戻った西村氏の 目にとまったのが、家内制手工業で作られる医療器具の部品だった。人の為に頑張れるのはこの仕事だと思い、半年間弟子入りし技術の取得に没頭した。その後 リバー精工を立ち上げ、数々の医療機器を開発していくこととなる。製品の特徴は、全国の大学病院の医師と、共同開発をしていくということ。通常、医療機器 メーカーが開発から生産し、その器具を医師たちは使いこなそうと努力する。しかしリバー精工の場合は逆。あらかじめ医師たちから要望を聞き、共同で開発を する。例えば、医師の要望から、ナイフ型だったカテーテルの処置具を、自在に回転するハサミ型のものにした。これまでに比べ確実にガン細胞だけを除去することができ、手術時間を大幅に短縮させることに成功した。そんな折、西村は5年前に大腸や胃など5つのガンがあることが判明した。それ以来、自らもガン患者の身として、患者にとっても負担の少ない器具を作ることを目指している。
リバー精工の医療機器は、最近では海外からも注目され始めている。世界中からその処置具を試してみたいというオファーが来ているのだ。そんな時に起きた震 災。日本製品の風評被害が世界で巻き起こり、興味を示していた中国側の輸入代理店からは、安全性を証明するよう求められた。そこで日本の最先端医療を世界 に広めていくために、西村氏はある作戦を考えていた...

【案内人】江口洋介 【ナレーター】蟹江敬三
【放送】『ガイアの夜明け』7月26日(火)22:00~22:54(テレビ東京系列・一部地域を除く)

酵素制御でがん新治療法

酵素異常、がん化促す 東大が解明、先天奇形にも

東京大学の畠山昌則教授らは細胞内にある酵素の働きが異常に活性化することによって、がん化や先天奇形が起きる仕組みの一端を明らかにした。酵素の異常により、本来はがん化を防ぐように働くたんぱく質を、がん化を促すものに転換していた。酵素の制御が可能になれば治療法開発につながる可能性もある。

研究チームは脱リン酸化酵素「チロシンホスファターゼ(SHP)2」に注目した。細胞の中で物質からリン酸を奪い取り、化学反応のオン、オフを制御している。この酵素に傷がつくと異常に活性化した暴走状態になり、がん化や先天奇形が起きることが知られていたが詳細な仕組みは分かっていなかった。

2011年7月27日 日経産業新聞

良性の卵巣嚢腫ががん化する確率

卵巣嚢(のう)腫 良性でも定期的に検査を

「沈黙の臓器」とも称される卵巣。腫瘍(しゅよう)ができても、ある程度の大きさになるまで自覚症状はほとんどない。腫瘍の多くは良性である確率が高く、うち最も多いのが「卵巣嚢腫(のうしゅ)」という。妊娠、出産の経験がない若い女性が発症することもあり良性だからといって放っておくと悪化する恐れもある。

卵巣は子宮の両側に1つずつあり、1つの大きさは2~3センチほど。卵巣嚢腫は、その卵巣の一部にできた袋状の腫瘍内に液体や脂肪などがたまった状態を言う。個人差はあるが、卵巣がこぶし大以上の大きさになると、下腹部が膨らんだり、違和感を感じたりすることもある。

「一般的には症状がないので、検診などで偶然見つかる人が多い病気です。嚢腫の部分がねじれたり破裂したりして急激な腹痛や吐き気に襲われ、そこで初め て発症していることを知る人もいます」と、四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)の子安保喜ウィメンズセンター長は話す。

卵巣嚢腫は、その腫瘍内にたまった内容物によって、主に三つの種類に分けられる。さらさらとした水のような液体がたまる「漿(しょう)液性嚢胞(のうほ う)」、どろっとした粘り気のある液体がたまる「粘液性嚢胞」、髪の毛や歯、軟骨などがたまることもある「皮様嚢腫」だ。

このほか、卵巣にできた子宮内膜症が出血を含んで腫れた「子宮内膜症性嚢胞(別名・チョコレート嚢胞)」があり、これは不妊症の一因とも言われている。

嚢腫が見つかる年代は10代~高齢者と幅広く、その原因は分かっていない。放っておくと巨大化することもある。また悪性の可能性を否定するためにも、通 常5センチ以上の大きさになると手術で治療し、組織学的な確定診断を行う。子安さんは「卵巣嚢腫と診断されたら、早めに画像診断や腫瘍マーカーの採血をし て、嚢腫の種類や悪性腫瘍の可能性などを診てもらうことが大切です」と話す。

卵巣は絶えず細胞分裂を繰り返しており、その過程で悪性に転化する危険性がある。東京逓信病院婦人科の秦宏樹部長は「良性の卵巣嚢腫ががん化する確率は決して低くはありません」と指摘する。

秦さんによると、2005年から10年までの5年間に同病院婦人科が新規に治療した卵巣がん患者は40人。うち6人が良性卵巣嚢腫の経過観察中だった。特に、チョコレート嚢胞に卵巣がんが発生する頻度が高く、たとえ卵巣嚢腫で良性と診断されても、定期的な観察は必要だという。

腫瘍自体は超音波検査で簡単に発見できる。秦さんは「かかりつけ医などで超音波検査を受ける機会があれば、ついでに下腹部全体を見てもらって、早期発見につなげてほしい」と話す。

2011年7月28日 朝日新聞

2011年7月27日水曜日

360病院のがんデータ

がん治療データ集計、病院名を初公開 初診患者数に差

全国のがん診療連携拠点病院での治療データを集めた「がん登録」集計が、初めて病院名と共に公開されることになった。初診患者数が8千人以上ある病院から150人に満たない病院まで幅があり、特定の病院に患者が集まる傾向があった。がんの進行度の国際比較も今回初めて実施、日本の乳がん患者は米国の患者より進行した段階で診断される場合が多いこともわかったという。

がん診療連携拠点病院は質の高い治療をどの地域でも受けられること を目指して国が整備している。各施設での患者登録を2007年分から開始、国立がん研究センターが集計している。今回の公表は08年分で約360病院の約 43万人分。同年に診断された国内の全患者の6割ほどを占めると推計されている。

初診患者数が多いのは、がん研有明病院(東京都)の8600人や、国立がん研究センター中央病院(東京都)6684人、同センター東病院(千葉県)4454人、静岡県立静岡がんセンターの4183人など。一方で136人といった病院もあった。

今回初めて、胃や大腸、肺など主要な五つのがんの進行度分類を国際分類に合わせて登録し海外との比較が可能になった。米国のデータと比べると、乳がんでは、早期に見つかった患者が日本は1割だったが米国では2割いた。胃がんでは日本は比較的早期に見つかる人が6割以上いた。米国の2割と比べて多かった。  国立がん研究センターのウェブサイト内にある「がん情報サービス」で公開されている。

2011年7月26日 朝日新聞



360病院のがんデータ公表=部位・治療法に特性、比較容易に-国立センター

国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院が登録した患者約43万人の発症部位や治療法などのデータを集計し、26日からホームページに公開 した。個々の病院のデータが明らかになったのは初めて。同センターは「各施設の特性が明確になった。医療の質の向上につながれば」と期待している。
公表されたのは、全国の約360病院で2008年にがんと診断された患者のうち6割のデータ。
集計結果によると、年代別では60代後半~70代の患者が最も多かった。東京や愛知では40~65歳が半数以上を占める病院がある一方、秋田、群馬、新潟、富山、山口では75歳以上が半数を超える病院もあり、地域や施設で差がみられた。

2011年7月26日 時事通信

発がん死亡率が+0.6%増加

日本は世界一のがん大国と言うべきで、2人に1人ががんになる。死亡原因としてのがんも、日本人総死亡数の30%を占めるようになった

先日、国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院が登録した患者約43万人の発症部位や治療法などを初めてホームページに公開した。統一的な基準のデータで、海外との比較も容易だ

これを見ると平均で60代後半~70代の患者が最も多いが、東京や愛知では40~65歳が半数以上を占める病院も。がんは突然発病するものでなく、若い時からの養生が大事だ。

また米国に比べ日本は胃がん大腸がん肺がんなどを早期に発見できた割合が高かった。乳がんは逆で、米国では2割の患者がごく早期の0期に発見できたが、日本では1割にとどまった

早期発見、日頃の食養生の大切さが改めて分かる。ただしここでも言えるのは、がん情報はあふれているが、さてわが身のこととなると、検査検診の必要性や時期の判断、患者の支え方などがんに関する正しい知識を身に付け行動するのは案外むつかしいということだ

今回の福島原発事故に関して、国際放射線防護委員会作成の統計から換算すると、計画的避難の基準値年間20ミリシーベルトの被曝による発がん死亡率の増 加は0・6%となる。これを高い数値と見るかどうか、これまた国民一人ひとりの判断に委ねられている。ストレスはたまるばかりだ。

2011年7月26日 上昇気流

乳がんの骨転移の検査

放射性物質使うがん検査薬 5年めどに国産化めざす

がん検査に使われる検査薬の原料になる放射性物質「モリブデン 99」について、5年をめどに国産化することを国や製薬企業でつくる検討会が決め、26日に内閣府原子力委員会に報告した。日本は世界で2番目の消費国 で、現在は全量を輸入しているが、日本原子力研究開発機構の試験炉や、電力会社の原子力発電所での生産を検討する。

モリブデン99は乳がんの骨転移の検査など、国内で年間90万件の検査で使われている「テクネチウム製 剤」の原料。注射で体に入れて外に出てくる放射線をカメラで写して体内の様子を調べるのに使う。半減期が66時間と短いため、週1~2回の頻度で空輸して おり、火山噴火などで空輸が止まると検査に影響が出るのが悩みだった。

さらに、海外の主な炉が5年後に廃炉になる予定で、生産停止による供給不足が心配されている。

2011年7月26日 朝日新聞

男性が乳がんとなる原因

乳がんと前立腺がん 性ホルモンが影響

最近、乳がんで若い女優さんが亡くなられました。このようなことがあると、乳がんに対する社会意識が向上し、検診などを受ける方が増加します。がんで亡くなる方を減らすことこそが、この女優さんおよび遺族の遺志でもあると思います。
ところで乳がんは女性だけの病気と思われる男性も多いでしょうが、実は男性にも発生します。ただ、その頻度が低いためにあまり取り上げられることはありません。しかし男性だからと言って安心することはできません。女性の乳がんによく似たがんが、男性の前立腺がんです。
乳がんが基本的に女性の病気であるように、前立腺がんは男性の病気です。つまり乳がんは女性ホルモンに影響を受け、前立腺がんは男性ホルモンに影響を受けます。
乳がんの発生率は女性ホルモンを分泌している期間にほぼ比例して上昇します。前立腺がんでは男性ホルモンの値と発生率が比例するとういう報告があります。
さらに両方のがんとも性ホルモンを利用した治療方法があります。また転移しやすい部位もリンパ節と骨であることも共通点です。
加えて近年増加傾向にあることも似ています。アメリカでは乳がんは女性のがんによる死亡率の2番目です。前立腺がんも男性のがんによる死亡率の2番目です。
日本では2008年現在、乳がんは女性の5番目、前立腺がんは男性の8番目ですが、今後両者ともアメリカのように増加すると予想されています。
しかし最も重要な共通点は乳がん、前立腺がんに限らず、すべてのがんに言えることではありますが、早期発見が大事であるということです。
このように共通点の多い乳がんと前立腺がんですが、異なる点も当然あります。そのひとつが早期発見の方法です。乳がんはマンモグラフィーや超音波検査と いった画像検査で早期発見をしますが、前立腺がんの場合はPSAと呼ばれる腫瘍(しゅよう)マーカーで早期発見ができます。つまり採血だけで早期発見につ ながるので、検査としては前立腺がんの方が簡便です。
2011年7月26日 琉球新報

2011年7月26日火曜日

大腸がん新薬

新規抗悪性腫瘍薬「TAS-102」の臨床第Ⅱ相試験結果を発表-標準治療不応な進行再発大腸がん患者に対し生存期間を有意に延長-

大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:宇佐美 通)が開発を進める新規ヌクレオシド系抗悪性腫瘍薬「TAS-102」に関して、標準治療不応な進行再発結腸・直腸がん患者を対象とした臨床第Ⅱ相試験の 結果が、第9回 日本臨床腫瘍学会学術集会(横浜)において発表されましたのでお知らせします。 (抄録番号10428)

本試験は、フッ化ピリミジン系薬剤、イリノテカンおよびオキサリプラチンを含む2レジメン以上の標準化学療法に不応となった切除不能な進行再発結腸・直腸がん患者172名を対象とし、プラセボ対照の二重盲検ランダム化比較試験でTAS-102の延命効果を主要評価項目として評価しています。その結果、 TAS-102投与群ではプラセボ投与群に比べ全生存期間が延長し[全生存期間 中央値:9.0ヵ月対6.6ヵ月]、死亡のリスクも有意に減少しました [HR=0.56,p=0.0011]。また、治療関連死は認められず、最も高頻度に認められたCTCAEグレード3以上の薬物有害反応は好中球減少 であり、下痢や倦怠感、悪心などは10%以下でした。

大鵬薬品は今回の試験成績を踏まえ、確立された治療法がない大腸がん患者さんに本剤を一日も早く提供できるようグローバル開発を進めてまいります。

2011年7月25日 プレスリリース

英国人10人に4人が ガン

英国人10人に4人余りは、何らかのガンを発症?

英国人の10人に4人以上が、生涯のうちに何らかのガンになることが統計で明らかになった。「デイリー・メール」紙が報じた。
ガン患者の数は過去10年間で30%余りも増加しており、専門家らは不健康な生活スタイルが原因として警鐘を鳴らしている。

ガン患者支援団体「Macmillan Cancer Support」が入手した統計によると、英国人の42%が何らかのガンを発症するという。 30年前の32%と比較して大変な増加になっている。
ガン治療は劇的に進歩しているが、ガン患者のおよそ64%はガンにより死亡していることも判明。
肥満、過剰な飲酒、喫煙などの生活スタイルがガン増加の原因になっていると専門家は警告している。一方で、英国人の寿命が延びたことも、発症率があがった一因とされている。

現在、英国でガン患者は200万人おり、今後20年間でこの数は倍になると予想されている。

2011年 7月 14日   japanjournals

肺がんの特効薬

ALK阻害剤クリゾチニブは「第2のイレッサ」と有望視 癌研有明・西尾氏

非小細胞肺がん(NSCLC)の特定の患者で劇的な効果をもたらす薬剤として高い期待が寄せられているALK阻害剤クリゾチニブ(ファイザー、国内 申請中)。国内で来年に上市が見込まれているが、7月21日から3日間にわたって横浜で開催された日本臨床腫瘍学会学術集会で、癌研有明病院呼吸器内科副 部長の西尾誠人氏が同剤に対する期待と課題について解説した。その中で、今後のNSCLCの個別化治療は、EGFR遺伝子変異のある患者にEGFRチロシ ンキナーゼ阻害剤(イレッサ、タルセバ)、ALK融合遺伝子陽性の患者にALK阻害剤(クリゾチニブ)を投与するという形に治療アルゴリズム自体が変わる との見方を示した。
ALK陽性進行NSCLC患者82人に対するフェーズ1試験の途中報告(昨年10月のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載) では、奏功率が57%(完全奏功1例、部分奏功46例)、8週間時点での病勢コントロール率(完全奏功(n=1)+部分奏功(n=46)+病状安定 (n=24))が87%と画期的な効果が示されている。
西尾氏によると「イレッサで経験するようなスーパーレスポンダーがいるのと同じ感覚の薬剤で、我々の臨床的な感覚としても『第2のイレッサ』という印象を持っている薬剤」とコメントした。
また、今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表されたフェーズ1の継続試験の結果(投与患者は119人)によると、奏功率は61%、病勢コントロール率 は79%で、ほとんどの患者で腫瘍縮小がみられたという。また、欧州で実施されたフェーズ2試験では、同剤が投与された133人の奏功率は50.4%、病勢コントロール率は85%、無増悪生存期間(PFS)は10カ月、全生存期間は2年生存率が54%であり、西尾氏は「多分、クリゾチニブに前生存期間の中央値は2年くらいになると予想されている」と期待を示した。
一方、ALK阻害剤の投与対象となる患者数は、およそ肺がん患者のうち3~5%とされている。西尾氏によると「ALK融合遺伝子陽性患者は、女性、 腺がん、EGFR遺伝子変異なし、喫煙が少ない、若年者といった人で高くて10%前後。これらの臨床背景で患者選択をするのがひとつの方法」としながら も、必ずしもこれにあてはまらない患者もいるとして、他の方法も考える必要があるとの見方を示した。
また、発表されたフェーズ1試験はALK融合遺伝子の検査法として、FISH法で陽性だった患者のみを対象としたが、その以外の検査法でクリゾチニ ブの投与患者を選択したときに、どの程度の効果があるのか不明だとして、「効率的にALK融合遺伝子陽性肺がんをみつけるための検査法を確立する必要がある」と指摘。加えて、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同様に、クリゾチニブに耐性を示す患者が出てきているとため、それに対応するための薬剤開発も課題 になるとした。
肺がんにおけるALK融合遺伝子の存在は、日本人研究者の自治医科大学の間野博行教授らによって07年に初めて報告された。クリゾチニブはALKを 阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要と考えられる数々の細胞内シグナル伝達を遮断する薬剤。国内では複数のALK阻害剤の開発が進行中とされ るが、クリゾチニブはその中でも最初に上市が期待されている薬剤。
2011年7月25日 ミクスONLINE

2011年7月25日月曜日

がん新薬の治験を集約する病院

新薬治験の拠点15に集約 「ドラッグラグ」解消めざす

欧米の薬が国内で使えるようになるまでの時間差「ドラッグ・ラグ」の解消を目指し、厚生労働省は、新薬の有効性や安全性を調べる治験(臨床試験)を実施する病院を集約する。がんやアルツハイマー病など、分野ごとに全国15カ所の拠点病院を指定し、集中的に担ってもらうことで治験の効率化を進め、製品化までの時間を短縮する。

日本の病院は、治験にかかわるスタッフが少なく、大規模な治験を実施する体制が整っていない。多数の病院が協力し、1病院あたり数人の患者を分担して実施することが多く、非効率で時間がかかっている。

このため、製薬企業は日本での治験を避ける傾向がある。日本の研究者が新薬の候補となる物質を探し出しても、製薬会社が海外で治験を始め、日本より先に承認を得た例もある。

承認の審査期間は、米国との差が6カ月程度にまで縮まったが、承認申請までの差は1年半のまま変わっておらず、課題だった。

厚労省は、体制の整った拠点病院に治験を集中させる方針を打ち出した。効率化によって、国内の研究成果は欧米よりも先に治験に入れるようにし、治験期間の短縮も図るという。

拠点病院は3年間で15カ所指定する。製薬企業はどの病院で治験を進めるのがいいか判断しやすくなり、患者も、どこの病院で治験に参加できるかがわかりやすくなる。

厚労省は22日、今年度分の5病院を決めた。
  • 国立がん研究センター東病院(千葉県、がん分野)
  • 東京大学病院(東京都、アルツハイマー病など精神・神経分野)
  • 慶応大学病院(東京都、免疫難病分野)
  • 大阪大学病院(大阪府、脳・心血管分野)
  • 国立循環器病研究センター(大阪府、脳・心血管分野の医療機器)
1病院に年間約6億5千万円ずつの研究費と整備費を支給する。

2011年7月25日 朝日新聞

悪性皮膚がんに新免疫治療法

皮膚がん 新たな免疫療法 京大グループ開発

京都大大学院医学研究科の門脇則光准教授(血液・腫瘍内科学)らのグループは19日、皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)が進行した患者に対し、 がん細胞を攻撃するリンパ球の働きを活性化させる新たな免疫療法を開発したと発表した。今月から患者10人を対象に臨床研究を始め、安全性と有効性を検証 する。
グループによると、メラノーマは、副作用の強い抗がん剤などの化学療法以外に治療法が乏しい。
開発された治療法 は、免疫反応を高める「樹状細胞」がリンパ球を強く刺激するのが特徴。患者の血液を体外で培養して分化させた樹状細胞に、病原性のないメラノーマの細胞を 投与し、さらに免疫を増強する抗がん剤を併用してリンパ球の働きを強める。副作用が少なく、治療効果の長期持続が期待できるという。
門脇准教授は「効果が確認できれば、患者の生存期間の延長につながる」としている。
2011年7月20日 産経新聞

がんのリハビリの重要性

がん、手術前後のリハビリで早期回復 後遺症軽減

がんの手術などの前後でリハビリテーション(リハビリ)を導入する動きが本格化している。患者の合併症を防いで回復を早め、後遺症の軽減に効果があることがわかってきたからだ。患者にとっては昨年度から健康保険で受けられるようになったのも追い風となっている。ただ、がん治療のひとつとして定着するには、まだ試行錯誤の部分もあり、リハビリ方法の確立など取り組むべき課題も多い。

6月下旬、静岡がんセンター(静岡県長泉町)のリハビリ室で、4日前に肺がんの 手術を受けた高田和美さん(73)が透明な器具につながるチューブを口にくわえて格闘していた。「はい、吸って」。理学療法士のかけ声に合わせて高田さん が息を吸うと、器具の中の黄色い印が上まで上がる。高田さんは「訓練のおかげでベッドで寝ていてもたんを出しやすい」と話す。

入院期間短縮にも

使っていたのは、深い呼吸ができるよう訓練するリハビリ用器具。高田さんは手術前に使い方の説明を受け、自宅でも練習した。「手術前からリハビリの必要性を理解してもらうと、手術後のリハビリも進みやすい」と同センターリハビリテーション科の田沼明部長。

がんのリハビリの主な目的は、治療による後遺症の予防や、障害を起こした機能の回復。合併症を防ぐ効果もある。

例えば肺がん食道がんなどの手術後に寝たままだと、肺の奥にたんがたまり、放置すると細菌の温床になって肺炎などの合併症を起こしやすい。手術後は肺活量が落ち、傷の痛みなどでたんを出せない患者が多いが、事前にリハビリの意味を伝え、目的を持って訓練すると呼吸機能の回復とたんの排出を促せるという。

静岡がんセンターは2002年、日本で初めてがん治療専門のリハビリ科を設置した。肺がんのほか、胃がんなどの消化器がん、乳がんなどの婦人科がん、咽頭がん、骨のがんなどの患者が対象。呼吸機能の低下や食べ物をうまく飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害、歩行障害などを軽くしたり、早く回復させたりする狙いだ。同センターでは「入院と外来患者の15~20%ぐらいがリハビリを受けている」(田沼部長)。

効果も検証されてきた。食道がんの開胸手術で比べると、他の施設でリハビリをしなかった場合に合併症の肺炎を起こす患者の割合は約32%。 02~06年に同センターで同様の患者にリハビリを実施したところ肺炎の発生率は約9%に抑えられた。合併症にならなければ入院期間の短縮にもつながると いう。

がんのリハビリが重視される背景のひとつに、がんと“共存する人”の増加がある。高齢化などでがんになる人は増えているが、治療技術の進歩で死亡率は減 少傾向。手術や抗がん剤などの治療後も仕事に復帰したり、自宅で療養したりする人が03年の約300万人から、15年には2倍近い530万人を超えるとい われている。

治療で運動まひや機能障害などが起こると、その後のQOL(生活の質)の低下に直結する。がんのリハビリ専門のスタッフの育成を進める慶応義塾大学医学部の辻哲也講師は「患者はリハビリもがん治療の一環と考えるようになってきた」と話す。

米国より20年遅れ

昨年度の診療報酬の改定で、がんのリハビリが健康保険の対象になった影響も大きい。現在本格的に実施しているのは5、6カ所とされるが、全国に約400あるがん診療連携拠点病院のうち半分程度ががんのリハビリ科などの設置の準備・検討を始めているとみられる。

とはいえ、日本のがんのリハビリは米国より20年ほど遅れているといわれ、まだ課題も多い。

そのひとつが、どのような患者にどのようなリハビリを行うのが効果的かが確立されていないことだ。患者の多いがんの種類や治療法などは国によっても違い、歴史の浅い日本ではまだ手探りの部分もあり、病院によってもまちまちだ。

静岡がんセンターでもリハビリを行った患者は、04年ごろは外科の患者が多かったが、最近は呼吸器内科や消化器内科などの患者が増えている。「リハビリが必要な患者を的確に見つける体制づくりは急務だ」(田沼部長)という。

学会も治療法の標準化に乗り出した。日本リハビリテーション医学会でがんリハビリの診療ガイドラインを策定中で、今年度内には試案を公表する予定だ。策 定を進める慶応の辻講師は「リハビリの効果を示す国内の検証結果を増やし、内容の標準化を図ることががんリハビリの定着のカギを握る」と話している。

健保対象になったが…国の支援 不透明 削られる研修補助金

がん患者に対するリハビリは、07年6月に策定した国のがん対策推進基本計画で「積極的に取り組んでいく」と盛り込まれ、昨年度からは健康保険の対象になった。しかし、研修事業への国の補助金は減るなど、国の取り組みの方向性ははっきりしていない。

医療者などに研修事業などを行っているライフ・プランニング・センター(東京・港)は07年度からがんリハビリのセミナーを始めた。受講生は初年度は約 580人だったが、08年度は610人、09年度は710人、10年度は722人と増え、今年度は約1200人に急増する見込みだ。

このセミナーは厚生労働省の委託事業。だが補助金は09年度は1467万円、10年度は1321万円、今年度は1286万円と徐々に削られている。「今年度は研修費を値上げし、受講生に費用を負担してもらっている」(同センター)

がん対策の基本計画は、来年度からの5年間の新計画の見直し論議が正念場を迎えている。だが「がんのリハビリは現時点で検討するテーマに上がっていない」(厚労省)という状況。がんのリハビリを国がどう支援していくかは先行きが不透明だ。

2011年7月14日 日本経済新聞

2011年7月21日木曜日

がん幹細胞と免疫細胞の相互作用

北大など、マクロファージ発がん活性能を獲得することを発見

がん細胞の中でも悪性度の高い集団「がん幹細胞」が、悪性化、抗がん剤治療への抵抗性に関係しており、その活性にがん細胞周囲の正常細胞が関与することが注目されている。北海道大学(北大)などによる研究グループは、通常はがん細胞排除に働く免疫細胞マクロファージが、がん幹細胞の働きにより逆に発がん活性能を獲得することを同定したほか、マクロファージから「MFG-E8」と「IL-6」と呼ぶ因子の産生を誘導することで、がん幹細胞のさらなる活性化が惹起され、抗がん剤への治療抵抗に 繋がることを明らかにした。 同成果は、地主将久氏、千葉殖幹氏、吉山裕規氏(北大遺伝子病制御研究所・感染癌研究センター)、増富健吉氏(国立がん研究センター・癌幹細胞プロジェク ト)、木下一郎氏、秋田弘俊氏(北大医学研究科・腫瘍内科学)、八木田秀雄氏(順天堂大学・免疫学)、高岡晃教氏(北大遺伝子病制御研究所・分子生体防御 分野)、田原秀晃氏(東京大学医科学研究所・先端医療研究センター)らによるもので、米国アカデミー紀要(Proceedings National Academy of Sciences of United States of America)に掲載された。

正常幹細胞の代表格である造血幹細胞の維持、活性には骨、線維芽細胞など幹細胞の周囲を構成する細胞群との相互作用の重要性が指摘されていた。そこで研究グループは、がん細胞周囲に存在する正常細胞の機能に注目し、がん幹細胞と免疫細胞との相互作用についての検証を行った。

この結果、通常はがん細胞の排除に働くと考えられている免疫細胞の マクロファージが、がん幹細胞との相互作用を介して発がんを促進する機能を獲得することを発見した。その発がん活性に重要な役割を果たすのが、マクロ ファージから産生される「MFG-E8」と「IL-6」と呼ばれる分子で、これらはがん幹細胞に働くことで、その増殖活性や抗がん剤への抵抗能の誘導に重 要な役割を果たすことを同定した。

がん幹細胞を介した発がん促進マクロファージへの形質転換が発がん活性、治療抵抗性に関与するイメージ

今回の研究成果について研究グループは、がん幹細胞が本来腫瘍への拒絶能を有する免疫細胞機能を発がん促進の方向に転換することを明らかにしたことが、重要な意義を有すると考えられるとしている。

なお、研究グループでは、今後、がん幹細胞から特異的に産生され、免疫細胞の機能転換を引き起こす分子を同定し、その役割を検証することで、がん幹細胞と免疫細胞相互作用を標的とする新たなタイプの抗がん剤の開発が可能になると考えられるとしており、このタイプの抗がん剤は、既存の抗がん剤への感受性を高め再発予防につながる可能性を有するため、将来の制がんにおける有力な武器になる可能性があると指摘している。

2011年7月19日 マイコミジャーナル

2011年7月20日水曜日

がん免疫治療と免疫活性検査

血液を採取するだけで免疫の状態の良し悪しがわかる検査が、がん免疫治療を専門とするヨシダクリニック・東京(院長:赤出川賢治)でスタート

がん免疫治療を専門とするヨシダクリニック・東京(東京都中央区、院長:赤出川賢治)は、血液を採取するだけで免疫の状態の良し悪しがわかる「NK細胞活性検査」をこのほど開始しました。

<NK(ナチュラル・キラー)細胞とは>
NK細胞は、外部からヒトの体内に侵入してきた異物を迎撃し、健康状態を維持しようとする免疫細胞の一種。特にがん細胞については、健康な人でも毎日 5000個のがん細胞が体内では生まれているとされており、それを常にNK細胞が叩いていることで、がんが育たない状況を維持しています。NK細胞の活性度が低下すると、このバランスが崩れてしまい、体内でがんが育ち始めてしまう危険性が高まります。

<NK細胞活性検査とは>
定期的にNK細胞の活性度を調べ、いま自分の体ががんになりやすい状態なのか――を把握することで、がんの回避や早期発見に役立てることができます。「NK細胞活性検査」は、まさにそれを目的としたものです。
検査は血液の採取のみ。採血した5ミリ・リットルの血液はラボに送られ、その血液中に含まれるNK細胞の活性度が測定され、数値となって表されます。通 常、健康な人の場合は「18-40パーセント」の基準値内に納まるが、これを下回る、つまり17パーセント以下となった場合、その人のNK細胞の活性度は 低いと判断されます。免疫力が低い状態、つまり、がんや感染症のリスクが高いということになります。  検査費用は自由診療のため、全額自己負担で1回6,300円。

<赤出川賢治院長:コメント>
「この検査で基準値を外れたとしても、すぐにがんになるわけではありません。免疫力を高める生活習慣によって、免疫力を上向きに転じることは十分に可能です。要は、この検査からがん予防に注意を向けるきっかけとして役立ててほしい。」

免疫力を高める生活習慣とは、食生活を見直して栄養バランスを整えることや、適度な運動、喫煙者であればタバコを止めること、また当院が力を入れて取り組んでいる「積極的に笑うこと」もその一つ。」

「検査費用6,300円は、本来がん治療の中で行われる精度の高い検査であることを考えれば、決して高い金額ではない。年に一度でも、こうした検査によって“免疫力”に目を向けることが、がん予防を考えていく上で重要なこと。がんになってから考えるのではなく、なる前から意識してほしい。」

2011年7月19日 プレスリリース

転移性乳がんの新薬

エーザイ、乳がん薬を国内発売

エーザイは19日、乳がん治療薬を国内で発売したと発表した。製品名は「ハラヴェン」で、手術できない乳がんや再発乳がんの患者が投与の対象。自社の研究所で作り出した初めての抗がん剤で米国や英国、ドイツなどに続く発売となる。

今後は肺がんや前立腺がんなどにも使えるように臨床試験(治験)を進めて販売を増やし、2015年度までに世界で10億ドル(約800億円)の年間売上高を目指す。

同社が実施した治験では、ハラヴェン以外の治療を施した乳がん患者の生存期間は10.5カ月。これに対してハラヴェンを投与した患者の生存期間は13.2カ月だった。

手術できない乳がん再発乳がんは治療に使える薬剤が少なく、ハラヴェンは医師の選択肢を増やせる。

2011年7月19日 日本経済新聞


エーザイ、日本で抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン」を発売

日本において抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン(R)」を新発売

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、日本において「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果とする、新規抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン(R)静注1mg」(一般名:エリブリンメシル酸塩)を7月19日に新発売します。
本剤は、当社が自社創製・開発した初めての新規抗がん剤であり、2010年3月に日米欧3極同時申請し、2010年11月に米国での新発売を皮切りに、欧州においても2011年4月に英国、ドイツなどで販売を開始しています。

本剤は、前治療歴のある転移性乳がんの患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めてのがん化学療法剤です。海外で実施した前 治療歴のある進行又は再発乳がんを対象とした臨床第III相試験(EMBRACE試験)において、主治医選択治療群に比べて、2.7カ月間の全生存期間の 延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p 値:0.014)。また、日本で実施した臨床第II相試 験において、「ハラヴェン(R)」単独療法は、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴を有する進行又は再発乳がん患者様に対し、良好 な抗腫瘍効果を示すとともに良好な忍容性プロファイルが認められました。

乳がんは依然として、女性のがんによる主な死亡原因の1つであ り、日本では毎年約6 万人の患者様が罹患されています。新しい抗がん剤の開発によりその治療法は年々進歩していますが、手術不能又は再発乳がんでは治療 の選択肢は決して十分とは言えません。このたび、日本における「ハラヴェン(R)」の新発売により、手術不能又は再発乳がんの患者様が本剤にアクセスする ことが可能となります。

今後当社は、「ハラヴェン(R)」を、グローバルにおいてより治療歴の少ない難治性再発性・転移性乳がん、乳が んアジュバント(術後補助療法)などの適応追加や、リポソーム製剤の開発による乳がん患者様への貢献を拡大していくとともに、非小細胞肺がん、肉腫、前立 腺がんなどの適応拡大に取り組んでまいります。また、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体「MORAb-003 」( 一般 名:farletuzumab)、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたE7080(一般名:lenvatinib)などの開発により、 Women’s Oncology領域の製品の充実化をはかっていきます。

日本国内においては、全MRががん領域での活動に取り組み、がんと共に生きる女性とそのご家族の想いにより添い、QOL向上により一層貢献し、当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)ミッションを果たしてまいります。


以上

<参考資料>

1.製品概要
1)製品名
ハラヴェン(R)静注1mg
2)一般名
エリブリンメシル酸塩
3)効能・効果
手術不能又は再発乳癌
4)用法・用量
通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として、1日1回1.4mg/m2(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与する。これを2 週連続で行い、3週目は休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
5)薬価
ハラヴェン(R)静注1mg 2ml 1瓶 64,070円
6)包装
ハラヴェン(R)静注1mg(2.0ml):1バイアル

2.グローバル第III相臨床試験(EMBRACE試験)
EMBRACE試験は、多施設、無作為、非盲検、並行2群間比較試験で、ハラヴェン(R)投与群と主治医選択治療群との間で全生存期間を比較するようにデ ザインされました。本試験では、2種類から5種類のがん化学療法剤(アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む)による前治療歴のある、局所再発 性あるいは転移性乳がんの患者様762名が対象となり、ハラヴェン(R)投与群と主治医選択治療群に2:1の比率で割り付けられました。主治医選択治療群 は、がん治療が認可された単剤化学療法、ホルモン療法、生物学的薬剤治療、又は苦痛緩和治療、放射線治療と定義され、大多数(97%)の患者様は単剤化学 療法を受けました。本試験解析の結果、ハラヴェンR投与群は主治医選択治療群と比較し全生存期間を2.5カ月間延長しました(全生存期間:13.1カ月  対 10.6カ月、ハザード比:0.81、p値:0.041)。

また、当社は欧州と米国の審査当局からの依頼によりプロトコールの規定 に加えてEMBRACE試験の結果をアップデートしました。その最新の解析データは、ハラヴェン(R)投与群では主治医選択治療群に比べて2.7カ月間の 全生存期間の延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p値:0.014)。このデータは2010年 12月のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで発表され、ハラヴェン(R)の全生存期間を延長し、安全性プロファイ ルは変化がないことが再確認されました。
ハラヴェン(R)投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球 減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、吐き気、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱 を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)であります。またハラヴェン(R)投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。

3.日本で実施された第II相試験(221試験)について
221試験は、アントラサイクリン及びタキサン系抗がん剤による前治療歴のある進行・再発乳がんの患者様を対象とした、多施設共同による非盲検の試験で す。本試験では、奏効率21.3%(評価対象80例中、奏効例17例)と高い奏効を示すとともに良好な忍容性プロファイルを認めました。

4.「ハラヴェン(R)(欧米製品名:HALAVEN)」(エリブリンメシル酸塩)について
「ハラヴェン(R)」は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria  okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらに チューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。「ハラヴェン(R)」の合成はきわめて難度が高く、その全合成のス テップ数は62工程あります。また「ハラヴェン(R)」の分子量は826であり、不斉炭素19個を含むため、理論的に立体異性体の数は2の19乗個、すな わち524,000個の可能性があり、その制御が困難を極めます。しかし、当社の技術力によりそのすべての反応を立体選択的にコントロールして「ハラヴェ ン(R)」を商業的に合成することが可能になりました。
本剤は、2010年11月米国、2011年2月シンガポール、2011年3月欧州でそれ ぞれ承認を取得し、カナダにおいて申請中、アジア、ニューマーケットなど多くの国々における本剤の開発を進めています。また、より治療歴の少ない乳がん、 非小細胞肺がん、肉腫、前立腺がんなど、他のがん種についても単剤での後期臨床試験が進行中です。

5.乳がんについて
乳がん は、女性のがんによる死亡原因のトップであり、日本においても毎年約6万人の患者様が罹患されています。また、罹患率は30歳代から増加を始め、50 歳 前後にピークをむかえるという点で、切実な問題となっており、アンメットメディカルニーズ(未だ満たされていない医療上の必要性)の高い疾患であると言え ます。
近年、検診や早期発見の普及により、乳がんの患者様数は増加しており、毎年世界で約100万人が新たに乳がんと診断されると考えられてい ます。なかでも早期乳がんと診断された患者様の約40%が局所進行性または転移性乳がんへと進行するといわれています。転移性乳がんの患者様では、その5 人に1人しか5年生存ができないというデータがあります。
乳がんは、乳房のしこりの大きさ、乳腺の領域にあるリンパ節転移の有無、遠隔転移の有 無によって、8段階の病期(ステージ:0期、I期、IIa期、IIb期、IIIa期、IIIb期、IIIc期、IV期)に分類されます。このうち、 IIIb期、IIIc期、IV期は、転移などにより病変が広範囲にわたるため手術不能な乳がんとなります。また、手術など乳房の腫瘍に対する初期治療を 行った後、他の臓器に転移するなど(転移性乳がん)、手術した乳房の領域に再び発症した場合を再発乳がんといいます。

6.エーザイのウィメンズ・オンコロジー(Women’s Oncology)領域への取り組み
女性のがんによる死亡率は年々拡大しており、世界で毎年約300万人の女性ががんで亡くなられています(WHO統計)。今日、女性の社会的な重要性は益々 向上しており、がんと共に生きる女性を支援しQuality of Life(QOL)を向上させることはきわめて意義の高いことであると考えています。
当社は、「ウィメンズ・オンコロジー(Women’s Oncology」をコンセプトとした、女性の視点を大切にしたがん領域における取り組みを進めることにより、がんと向き合う女性の想いにより添い、希望をお届けし、QOLを向上することに貢献してまいります。
今後、「ハラヴェン(R)」の適応拡大、製剤開発により乳がん患者様への貢献を拡大するとともに、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体  farletuzumab(ファルレツズマブ(*))、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたlenvatinib(レンバチニブ(*))などの開 発により、がんと闘う女性に一日でも早く革新的な新薬をお届けすることが我々の使命であると考えています。そして、世界中の一人ひとりの患者様に当社の製 品をお届けできるようアクセス・プログラムを実現するとともに、総合的なヘルスケアシステムの改善に全力を尽くしてまいります。
また、女性のがん患者様特有のニーズに対応する取り組みやがん専門ケアマネージャーの養成プログラムを医療機関と連携して開発するなど、診断・標準治療から在宅医療・緩 和ケア・終末期医療までが切れ目なく提供される地域医療体制の構築に貢献することにより、がん患者様とそのご家族のQOL向上と「がんになっても安心して 暮らせるまちづくり」をめざしてまいります。

2011年7月19日 プレスリリース

2011年7月14日木曜日

肝がん新薬の治験

化学剤とSIRT併用の肝がん治療を臨床試験=豪サーテックス

肝臓がん標的治療薬開発大手の豪サーテックスは、肝がん患者を対象に同社製 マイクロスフィア「SIRスフィア」を使用したSIRT(選択的内部放射線療法)とカペシタビンを併用した第1相臨床試験の結果が米国臨床腫瘍学会で報告されたと発表した。試験と報告は米フォックスチェイスがんセンターが実施。試験に参加した患者は21人で、病勢コントロール率は95%だった。最低濃度グループで毒性と関連している可能性のある高ビリルビン血症などが認められたものの、併用化学療法で一般的な用量のカペシタビンはSIRスフィアと安全に併用できるとしている。

2011年6月13日 時事通信

大腸がんの5%の変異を安定的に検出

世界初、全自動で大腸がんの遺伝子変異型を検出

凸版印刷(東京都千代田区)などが13日発表したところによると、同社と理化学研究所(埼玉県和光市)ゲノム医科学研究センター(鎌谷直之センター長)、理研ジェネシス(東京都台東区)は、共同研究で、全自動小型遺伝子型解析システムを開発した。

この全自動小型遺伝子型解析システムを用いたシカゴ大学との共同研究で、約140例の大腸がん患者から採取した、がん組織内の遺伝子変異の解析を試みたところ、大腸がんの遺伝子変異を全自動で、しかも1時間以内に高感度かつ高精度に検出できることが明らかになったという。

現在、遺伝子解析手法として一般的なダイレクトシークエンス法では、採取したがん組織中に存在する30%以下の遺伝子変異を検出することは困難とされている。一方、今回のシステムでは高感度なインベーダープラス法を採用し、専用の自動装置と組み合わせることで、大腸がん組織中の5%の変異を安定的に検出できるという。また、その操作も、専門家でなくても比較的容易だとのこと。これにより分子標的薬の奏効性予測が容易になれば、いわゆるオーダーメイド医療の実現に大きく近づくことになろう。

2011年6月16日 医療人材ニュース

世界最高水準のメラノーマ治療

世界最高水準のメラノーマ治療

国立がん研究センター中央病院
〒104-0045東京都中央区築地5の1の1
(電)03・3542・2511

国内の死因トップはがんだが、その中でも皮膚がんの患者数は決して多くはない。しかし、身体の表面の皮膚に生じるがんの種類は多く、悪性黒色腫(メラノーマ)のような非常に悪性度の高いものもある。

また、一見、シミやホクロ、あるいは湿疹のような形をしているため、見極めを誤って治療の手を加えると、進行や再発の原因にもなりかねず、診断と治療には高いレベルが求められる。そんな皮膚がん治療で全国トップの実力はもとより、世界最高水準の治療を行っているのが、国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科だ。

「国内では患者数が少ないため、薬の開発は遅れていました。日本はメラノーマの手術や放射線治療は世界レベルであっても、使える薬の種類や数が世界とは 違う。しかし、メラノーマの患者さんは国内にもいます。そのドラッグラグをずっとなんとかしたいと思ってきました。それがようやく解消されつつあります」

こう話す同科の山崎直也科長(51)は、皮膚がん治療一筋に、国内で最も多くのメラノーマの治療を行っている。その新薬について昨年秋から国際共同治験に参加した。皮膚がんの治療薬で、臨床試験を世界各国と同時に行っているのは史上初めての快挙である。

「新薬の効果が得られればメラノーマの治療は飛躍的に進歩します。まさに治療の転換期ともいえるのです」

もともと小児科医を目指して医学部に進学した山崎科長だったが、研修医時代に皮膚がんの治療に出合った。内臓のがんほど知られていないが、皮膚にできるがんも血管やリンパ管の中に入って流れに乗り、全身の臓器へと転移して命を奪うことがある。種類も多く、性質もがんによってさまざま。患者と向き合ううちに、いつの間にか皮膚がん治療に没頭していたという。

皮膚がんは進行の早い悪性度の高いものばかりではありませんが、小さくても顔にできた場合は、治療による傷跡がQOL(生活の質)を下げる恐れがあります。また、むやみにがんの部分に触れることで、再発や転移につながるため、診断と治療には高い専門性が求められるのです」(山崎科長)

しかし、日本では診断と治療が、まだ普及しているとはいいがたい状況だ。それを打開するため山崎科長は、皮膚がん治 療のガイドラインの改訂版にも着手している。夢は「日本から世界初の治療法を発信したい。私ができるのは、まず遅れている薬物治療の面で世界の最先端治療 に追いつくことです。私たち皮膚腫瘍科はチームワークが良く、メンバーは皆同じ目標を持っています。次世代の若い先生たちとともに、ぜひ世界ナンバーワン を実現したいと思っています」と山崎科長。

その夢に向けてまい進中だ。 

<データ>2010年実績
  • 悪性黒色腫88人
  • 有棘細胞がん52人
  • 基底細胞がん28人
  • 乳房外パジェット病19人
  • 隆起性皮膚線維肉腫10人
  • 血管肉腫9人
  • 病床数18床
2011年7月11日 zakzak