2011年3月29日火曜日

改造サルモネラ菌で免疫活性化

内臓のガンと戦う特殊なサルモネラ菌

-ミネソタ大学 ミネソタ大学の研究者達が、がんと戦うサルモネラ菌を開発しました。

サルモネラ菌は食中毒で有名ですが、ミネソタ大学の研究者達はかつては考えられなかった方法、つまり人々を助けるためにサルモネラ菌を使う事を考えました。
サルモネラ菌が大腸や肝臓などで繁殖することから、この方法での癌治療は内臓のがんに特に有効である可能性があるとされてます。

ミネソタ大学フリーメイソンがんセンターの研究員たちはサルモネラ菌の遺伝子を改良し、毒性を弱めた上でサイトカインの一種であるインターロイキン-2を組み込みました。インターロイキン-2は番犬のような役割を果たし、がん細胞があると免疫系を活性化させることがわかっていて、実際に腎臓がんの治療に使われた事もあります。

またエール大学の研究者達によれば、サルモネラ菌は自身のタンパク質を効率的にアレンジし、宿主細胞に侵入できるようで、インターロイキン-2を組み込まれたサルモネラ菌は的確にがん細胞のところまでいける事もわかりました。それだけでなく、一部の細菌はがん細胞の中で増殖するという事実が知られています。つまり改造サルモネラ菌はがん細胞付近でインターロイキン-2を生産して免疫系を活性化させるだけでなく、がん細胞に感染して増殖するという二方向からの攻撃を加えることができるのです。

すでに動物での臨床試験は終わっていて、現在は人での試験が進行中との事。実用化されれば数十ミリリットルのサルモネラ入りの水を飲むと言う簡単な方法で治療することが可能になるようです。

「この方法はおそらく化学療法や放射線療法などのがん治療法に置きかわるものではないでしょう、しかしこの分野の研究は有望であり、私たちはこの方法ががんに対する強力な手法になる事を願っています」とこの研究の主任であるEdward Greeno博士は言います。彼によれば、この方法は化学療法や放射線治療よりも毒性が低く、安価な代替案になりうるとの事です。食中毒を引き起こす細菌に助けられるというのはちょっと不思議な気もしますね。

2011年3月29日 スゴモリ

2011年3月26日土曜日

すい臓がんの傾向と対策

沈黙の臓器はとてもデリケート 分かってからでは遅い「すい炎」対処法

アルコールの多飲は大敵

がん、消化器系の専門医で、医学博士の浦上尚之医師によると、急性すい炎は、前にも触れたが、それまで何の症状もなかった人が、突然、上腹部(みぞおち近辺)に激痛が襲うという。  その痛みは、モルヒネ性の鎮痛剤でも消えないほど激しいもので、患者の大半は痛みに耐えかね、膝を抱えて前かがみの姿勢になるという。これを専門医は、すい炎患者特有の『すい炎体位』と言うそうだ。

「すい炎といっても、個人差があります。数日から1週間ほどで痛みが取れ、完治する軽症のものから、すい臓以外の臓器障害を併発して心不全や腎不全、呼 吸不全などを起こす超重症のものまである。甘く見てはいけません。死亡率(20~30%)も高く、発症から48時間以内に亡くなるケースが多い。重症の急 性すい炎は、恐ろしい病気です。中でも、アルコールの多飲は大敵ですよ」(浦上医師)

すい臓は周囲を取り囲む、さまざまな内臓の影響を受けやすい、非常にデリケートな器官といえる。  『すい臓の原因と予防』(医学博士・平畑徹幸著)から、以下に特徴的な例を挙げてみた。

(1)すい炎は子供にも起きる。油の多いスナック菓子を好む子は要注意。神経質で繊細な子供、ストレスを内にためるタイプは要注意。
(2)背中、腰のマッサージや腹筋運動などは、すい臓を圧迫する。バットの素振りは腰をひねるので、同時にすい臓もねじれるから良くない。十分な準備運動が必要だが、野球選手やゴルファーにすい炎患者が多い。
(3)すい臓は20歳くらいまで成長を続け、成人の大きさになる。逆に50歳頃から萎縮しはじめ、80歳以上になると成人の半分程度に減少する。衰えから食事もたん白なものに変わってくる。
(4)若い女性にも増えている。ビール、ワインなどのアルコール過多、イタリアン、エスニックなど油の多い食事を摂る傾向が要因。

2011年03月25日 週刊実話

2011年3月25日金曜日

発見が難しいすい臓がんの対処法

沈黙の臓器はとてもデリケート 分かってからでは遅い「すい炎」対処法

“沈黙の臓器”と言われるすい臓。最近、この病気でお笑い芸人の『次長・課長』河本準一や『チュートリアル』福田充徳が入院したのは記憶に新しいところ。 2人とも今では元気に復帰しているが、同じ消化器系の胃や肝臓に比べ、馴染みの薄い臓器だけに注意が必要だ。突然、激痛が走ったり、がんに侵されることも ある。

すい臓は、お腹の一番奥深いところにあって、肝臓、胆のう、十二指腸、大腸、ひ臓、腎臓に囲まれている。というより覆われている、といった表現の方が分 かりやすい。さらにその後には、下大動脈や腹大動脈などが通っている。すい臓病に自覚症状がないため、病気も予見しづらい。
すい臓は、すい外分泌という消化液でもあるすい液を十二指腸に送り出す。その流れが、どこかでせき止められたらどうなるか。例として、地中の下水管が地 震などで詰まった事を想定して欲しい。汚れた下水が、各家庭の排水管から洗面所やトイレに逆流して溢れ出すはずだ。すい臓の調子が悪くなるとこれと同じ で、すい液の逆流が起きるのである。
つまり、すい管が詰まるとすい液が十二腸に流れなくなり、すい管内に溜まる。すい管は絶えきれなくなり破損し、すい炎に進展。そして、みぞおちから背中 にかけて激痛が走る。すい臓の代表的な病気といえば、急性のすい臓炎(急性すい炎=すい臓の急激な炎症)、慢性すい臓炎、すい臓がんなどがあり、黄疸など を発症する。
とくに慢性すい炎は、自覚症状がないのがやっかいだ。腹痛から胸焼け、下痢、食欲不振など「何となくおかしい」「ちょっと具合が悪い」といった症状が多い。  他に、背中の痛みや腰痛、全身の倦怠感、体重の減少などがあるが、腰痛が起きたからと言って慢性すい炎に結びつける人はほとんどいないだろう。「昨日飲みすぎたか、食べ過ぎたかな」と、市販の胃薬で紛らわしてしまう。
だが、時間が経っても症状に改善が見られず、結局、専門医で詳細にわたる問診、触診を受けることになる。すると、すい機能障害や組織障害を起こしていることが分かり、慢性的なすい炎と診断されるのだ。
こうした患者のほとんどは、普段からアルコールの飲み過ぎ、油を使った食事や脂肪分の多い食事、ストレス、過労の傾向がある。そして、たばこを吸っている人、と専門医は言う。進行すれば糖尿病を併発し、かなりの高い確率ですい臓がんを発生している。60歳以上の高年者が、とくに多いという。

かつて、日本を代表する大女優の杉浦春子さんが、'97年4月、91歳で亡くなった。死因はすい臓がん。発見されてから、わずか3カ月余で亡くなったという。
すい臓がんは、がんのなかでも発見がしにくく、見つかった時にはかなり進行していることが多い。杉浦さんの場合もそうだった。
また、俳優の高橋悦史さんもすい臓がんで亡くなっている。『鬼平犯 科帳』の中村吉右衛門演じる長谷川平蔵を支える筆頭与力役で好演したのが最後だった。手術後2年、享年56歳。  最近では、『男と女の数え唄』『たかが人生じゃないの』などのヒット曲で知られる歌手の日吉ミミさんが一昨年4月、すい臓がんの手術を受けた。ミニクラ ブを切り盛りしながら、現在2週間に1度、検査と抗がん剤の点滴を受け続けているという。原因は、家族の不幸などが重なっての過労やストレスとされる。
また、『次長・課長』の河本、『中川家』の中川剛、そして『チュートリアル』の福田らは、急性すい炎で倒れて入院した。お笑い系のタレントが相次いでダ ウンしたことで「何が起きたんや」と話題騒然となったものだ。3人に共通しているのは、酒の飲み過ぎ、睡眠不足、忙しさによる疲労などのストレスだった。
3人とも1~3カ月ほどの入院、治療で仕事に復帰できたが、一歩間違えれば命取りの危険性がある。

2011年03月24日 週刊実話

2011年3月19日土曜日

東アジア型の強いピロリ菌で胃がん

日本人が感染する東アジア型のピロリ菌は病原性が非常に強い

WHO(世界保健機関)に所属する国際がん研究機関によって、「胃がんの明らかな発がん物質」と認定されているピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)。一度感染したら、除菌治療を受けない限り、一生感染した状態が続くというピロリ菌とは、いったいどんな菌なのか。
ピロリ菌がヒトの胃から見つかったのは、ほんの約30年前。それまでは胃の中は酸性度が高いため、細菌がいるはずがないと考えられてきた。その常識が、ピロリ菌の発見を約100年も遅らせた。
ピロリ菌発見者のひとり、マーシャル教授は、ピロリ菌が胃炎の原因であることを証明するためにピロリ菌入りスープを飲み、激しい胃炎に…。その功績(?)によって2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
日本人の多くが感染している東アジア型のピロリ菌は病原性が非常に強く、胃がんを引き起こしやすい。このため、日本を含む東アジアでは欧米に比べ、胃がんが多いと考えられている。
日本人女性の約10%、中学生の1.8%に見られる鉄欠乏性貧血に、ピロリ菌が関連する可能性が指摘されている。ほかにも偏頭痛や慢性じんましん、認知症など、多くの病気との関連について、研究が進められている。

2011年3月19日 女性セブン2011年3月31日・4月7日号

がん予防に有効な食品とは

ブロッコリーガンの予防に効くわけとは?

ブロッコリーやカリフラワーに代表されるアブラナ科の植物は、「ガンを予防する健康12食品群」として知られている。その活性成分は、イソチオシアネートと呼ばれ、ガン細胞特異的にアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導することがわかっている。しかし、それが一体どのようなメカニズムで引き起こされるのかは、これまで全く不明だった。

今年の1月11日、『J. Med. Chem.』誌に掲載された論文(購読無料)によると、米ジョージタウン大とコロンビア大の共同研究チームは、イソチオシアネートの添加により、培養ガン細胞の変異型p53タンパク質の量が著しく減少することを発見した。一方、同量のイソチオシアネートにより、正常細胞の正常型p53タンパク質の量は、ほとんど影響を受けなかった。

p53というのは、ガン抑制遺伝子の一つで、DNAが損傷を受けた細胞にアポトーシスを誘導し、その細胞がガン化するのを防いでいる。ヒトのガン細胞の約半数は、この遺伝子に変異を持っており、その変異型p53タンパク質ではアポトーシスを誘導できず、その結果細胞がガン化したり、抗がん剤や放射線治療に対して抵抗性を持ったりすると考えられている。

今回、イソチオシアネートによってこの変異型p53タンパク質が減少することが示されたことから、これがすでに知られていた、イソチオシアネートのガン細胞に対するアポトーシスの誘導と何らかの関連性があることが示唆されたわけだ。まあ、そのメカニズムはともあれ、ブロッコリーがガンの予防に効果的なことは確かなようなので、日々の食生活の中で積極的に摂取するよう心がけたいものである。

2011年3月19日 スゴモリ

陽子線がん治療装置の拡販

住重、がん治療装置を拡販

住友重機械工業は陽子線がん治療装置で、2011年に国内外5件の受注を目指す。平面サイズ20メートル四方の小型装置を国内の各地域の拠点病院などに提案する一方、大型装置で米国・アジア市場を開拓する。がん患者の増加に対応し、導入を提案する。住重は同装置を現在、国内と香港、台湾で計3件受注した実績がある。国内では小型の初号機を相澤病院(長野県松本市)に13年度にも納入する予定。これを生かし、地域拠点病院の需要を掘り起こす。小型の価格は建物を含めて約50億円。

香港、台湾から受注したのは縦35×横45メートルの大型機器で、価格は同約80億円。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)に納入したものと同タイプで、10年間以上の運用ノウハウを持つ。

同装置は対象患部にエネルギーを集中できるため治療効率が高く、重要な臓器を守れるのが特徴。患者がベッドに横たわったまま患部に360度方向から照射できるため、短時間で肺がん前立腺がんなどを治療できる。

競合としては日立製作所や三菱電機、ベルギーIBA、米バリアンなどがあるが、住重は小型で先行する。

2011年3月18日 朝日新聞

2011年3月17日木曜日

独創的な抗がん薬、診断法、治療法

京大と大日本住友製薬、がん悪性制御の抗がん薬、治療法等協働研究

京都大学と大日本住友製薬は3月15日、がんの悪性制御に基づく独創的な抗がん薬、診断法および治療法の創出を目指して、「悪性制御研究プロジェクト」(DSKプロジェクト)の協働研究を実施すると発表した。

DSKプロジェクトでは、豊富な基礎医学・臨床医学の知見を有する京都大学と、抗がん薬研究に注力する大日本住友製薬が、人材、資金、知見、マネジメント を融合させ、お互いの知的資産を有効利用しながら協働研究することで、新規創薬標的およびバイオマーカーを同定するとともに、候補物質探索を進め、がんの悪性制御に基づく独創的な抗がん薬、診断法および治療法の創出を目指すとしている。

協働研究の期間は2011年3月から5年間で、DSKプロジェクトの運営や意思決定は、京都大学と大日本住友製薬から選ばれた同数の委員で構成する協働運 営委員会、探索研究推進委員会、創薬研究推進委員会、知的財産委員会により行い、研究活動は、実験病理学者の日合弘京都大学名誉教授の指導の下で、京都大 学中核研究者チーム、若手研究者チーム、企業派遣研究者チーム、大日本住友製薬サテライト研究チームにより実施されるとしている。

2011年3月16日 

2011年3月16日水曜日

96%の確率でガン副作用低減効果

ガンの副作用の痛みを減らす技術を開発-NASA

NASAの研究がガン患者の副作用による痛みを減らすことに貢献する技術を開発した。現在、その技術を用いたWARP 75は食品医薬品局によって承認審査中だ。

これは、High Emissivity Aluminiferous Luminescent Substrate(HEALS)と呼ばれており、波長の長い光を発するLEDを用いて、細胞を再活性化させて成長、回復する。多くの光子を発するが、熱は発しないという。

この技術はNASAがスペースシャトル内にて行われた植物の成長実験の為に開発されたもので、骨髄や幹細胞移植を行ったガン患者の化学療法や放射線治療によって生じる痛みを伴う副作用を減らす。

化学療法を受けているガン患者は化学療法から誘発される腔粘膜炎になるケースがあり、この粘膜炎は痛みが強い。そのため、患者は食事をするたびに苦痛を感じることがある。2年間の臨床試験において、この腔粘膜炎に対して96%の確率で効果を発揮したという。

NASAが宇宙開発の中で生み出した技術を世界中の患者に対して応用できるこうしたケースは研究の意義を再確認できる良いニュースだ。

2011年03月09日 スゴモリ

ダイヤが有効ながん治療

ナノダイヤが有効ながん治療になるかもしれない-ノースウェスタン大学

ダイヤモンドといえど小さければ貰った時のうれしさも小さくなるが、医療から見れば小さいほどいいのかもしれない。

イリノイ州のノースウェスタン大学Dean Ho氏と彼のグループはナノダイヤモンドを使ってがん治療薬を細部にまで届ける方法を開発した。

ナノダイヤで薬を届けることにはいくつかの利点がある。まず無毒であり免疫の標的にはならないこと。結合力が強く薬をしっかりと腫瘍細胞まで運べること。そして分子量が小さいため排除するのが簡単なので、ナノダイヤが血管に詰まらないことだ。
Hoのチームはナノダイヤに標準的な抗がん剤のドキソルビシンを結合させ、抗がん剤に対して耐性を持つ肝臓がん肺がんをもつマウスに投与した。その結果、通常の投薬よりも10倍長く血液中に存在し、がん細胞を縮めることに成功した。

また、ドキソルビシンと結合したナノダイヤは標的のがん細胞に到達するまで分離しなかったので、この方法は通常細胞への副作用が少ないという予測もでた。さらに、この実験では肝臓が毒物に対する反応を起こさず、白血球数にも影響がなかったため、ナノダイヤと結合したドキソルビシンは毒物として認識されなかった。

薬の運び屋としては金や二酸化ケイ素なども対抗馬として挙がっているが、Hoのグループはナノダイヤの投薬実験を今後大きな動物にも実施していく予定だ。

コストパフォーマンスのいい素材が見つかれば、がんの化学療法は大いに進歩するだろう

2011年3月15日 Science/AAAS

2011年3月15日火曜日

進行性胃がんの新薬

ティーエスワンが進行性胃がんの一次治療薬として欧州で承認

大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:宇佐美 通)は、経口抗がん剤であるティーエスワン(欧州申請商品名:Teysuno™)が、3月14日に欧州委員会(EC)よりシスプラチンとの併用にて、進行性胃がん患者のファーストライン治療薬として承認を受けたことをお知らせします。
この承認は、2010年12月17日の欧州医薬品庁(EMA)の勧告に基づいており、欧州連合加盟27カ国と欧州経済地域加盟3カ国で適応されます。

今回の承認は、進行性胃がん患者を対象に実施された大規模グローバル第3相試験であるFLAGSの結果に一部基づいています。提出された、品質、安全性、有効性のデータを基に、ティーエスワンのリスクベネフィットバランスが望ましいと判断され、承認に至ったと考えております。

ティーエスワン(Teysuno™)の欧州発売は2011年後半を予定しています。

2011年03月15日 プレスリリース

2011年3月14日月曜日

前立腺がん手術158件の病院

手術支援ロボットをいち早く導入 低侵襲治療を積極的に取り組む

★東京医科大学病院
近年、身体をなるべく傷つけない“低侵襲”の治療法が広がっている。内視鏡や鉗子(かんし)、レーザーメスなどを入れる小さな孔を数カ所あけて行う内視鏡手術は、低侵襲治療の代表格だ。

米国では、より微細な手術を可能にするロボットナビゲーションシステムによる「ロボット支援手術」も普及している。内視鏡からモニターに送られてくる3次 元画像を見ながら、医師はロボットアームに装着された先端5ミリの鉗子を遠隔操作で動かしていく。鉗子の先端は約180度曲がる関節機能がつき、人間の指 が届きにくいところでも治療が行いやすい利点がある。

この手術支援ロボットシステム「ダヴィンチ」を2006年に国内で初めて導入したのが、東京医科大学病院だ。08年10月には高度医療の承認を受け、通常の保険診療の治療と合わせて実施することができるようになった。

「従来から各種の泌尿器科疾患に腹腔鏡(内視鏡)による手術を行っていますが、モニターに映し出される画像は2次元で、遠近感がなかった。ロボット支援シ ステムの利点は、遠近感のある3次元画像で、10倍まで患部の拡大が可能です。また、人間の指先は無意識のうちに震えますが、手振れ補正機能もあるため、 超微小な血管や神経にも手術を行いやすくなりました」

こう話す同病院泌尿器科の橘政昭主任教授(60)は、低侵襲治療に積極的に取り組んできた。単に傷を小さくして腫瘍を摘出するだけでなく、機能温存にも力を入れている。

一般的に、前立腺がんで前立腺を摘出すると、排尿機能や性機能に副作用が起こりやすい。前立腺は骨盤や恥骨に囲まれ、細かい神経や血管が周辺に位置している。出血しやすく神経も傷つけやすいのだ。

膀胱がんでも、膀胱を摘出するときに多量の出血があったり、術後の勃起不全がつきまとう。

それらを解消すべく、橘教授は、腹腔鏡による細かい手術や自然排尿型の尿路再建術、神経温存&移植などさまざまな工夫をしている。

「私が最初に米国でロボット支援システムを見たときに、低侵襲治療の未来を担う技術だと思いました。それで導入を決めたのですが、高額(1台約3億円)のため、日本ではまだ広く普及していません」(橘教授)

東京医科大学病院には、治療用として現在2台のロボット支援システムがあり、トレーニング専用の1台も導入。未来を担う若い医師の育成にも力を入れている。

また、昨年9月には、東京薬科大学と工学院大学との「医工薬」の連携もスタートした。

「新しい創薬と新しい医療技術の開発に役立ちたい。近い将来、全自動の手術も夢ではないと思っています」と橘教授。その夢に向けてまい進中だ。

<データ>2010年実績

☆手術総数588件

<内訳>

☆前立腺がん手術158件

(内ロボット支援手術146件)

☆膀胱がん全摘出手術18件

(同5件)

☆精巣腫瘍手術15件

腎臓がん手術43件

☆腎盂・尿管がん手術21件など

☆病床数1015床

〔住所〕〒160-0023東京都新宿区西新宿6の7の1 (電)03・3342・6111

50歳以上男性に増えるがん

増える前立腺がん 50歳以上の男性は毎年検診を 

近年、国内で食生活の欧米化などにより増えつつある前立腺がん。「がんをよく知るための講座」(兵庫県予防医学協会、神戸新聞社主催)が神戸市兵庫区の健康ライフプラザで開かれ、その診断や治療法について、神戸大大学院医学研究科腎泌尿器科学分野の三宅秀明准教授が解説した。

国立がん研究センターがん対策情報センターの調査によると、2005年に国内で新たに前立腺がんと診断されたのは4万2997人で、胃がん肺がんに次ぐ。「増加傾向にあり、2020年には、がんの中で2番目に多くなるという予測もある」(三宅准教授)。欧米諸国で患者が多く、食生活の影響が大きいとみられるという。

前立腺は膀胱(ぼうこう)の出口に位置する男性の生殖器。クリの実大で、中心を貫くように尿道が走っている。がん細胞は外側にある組織から発生するため、初めのうちは尿道を圧迫して尿が出にくいなどの自覚症状は少ない。

三宅准教授は「早期発見には検診が重要。1度で大丈夫だと思わず、50歳以上の男性は毎年受けてほしい」と訴えた。

検診では、血液中の前立腺特異抗原(PSA)を測る。前立腺で作られるタンパク質の一種で、値が大きくなるほどがんが見つかる確率も高くなる。ただ万能ではなく、値が小さくてもがんの場合があり、前立腺肥大症で高くなることも。診断を確定するためには、針を刺して組織を取り、顕微鏡で調べる

治療は手術から抗がん剤まで、さまざまな方法がある。進行が遅いため、早期なら手術や放射線治療で完治が可能。手術は前立腺を取り出して尿道を縫合す る。合併症として、周囲の神経が弱り、勃起(ぼっき)不全を起こすことがある。放射線には外から当てる方法のほか、放射性物質を出す小さな針を埋め込む 「小線源療法」も。ただ放射線が弱いため、前立腺が大きい人には向かないという。

一方、進行がんでも適切な治療を受ければ、ある程度の期間は良好な経過をたどる。三宅准教授は「男性ホルモンの影響を受けてがんが大きくなるので、それをブロックするのが有効」と説明。男性ホルモンは精巣と副腎から分泌されており、それぞれを抑えるために注射薬と飲み薬の抗ホルモン薬を併用する。しかし、ホルモン療法は時間がたつと効果が薄れてくる。効かなくなれば、抗がん剤を投与する。

三宅准教授は「治療は多岐にわたる。できるだけ幅広い治療を行うことができる施設で、専門医と十分相談して決めてほしい」と強調した。

2011年3月14日 神戸新聞

2011年3月11日金曜日

抗がん剤副作用救済制度 

厚労省、副作用救済制度へ検討会 抗がん剤、12年創設目指す

厚生労働省は11日、抗がん剤の副作用で亡くなった患者を救済する制度をつくるため、4月にも有識者による検討会を設置することを決めた。医薬品の安全性確保策を盛り込む薬事法改正を2012年に行い、これに併せ救済制度の創設を目指す。新法制定の必要性も協議する。

肺がん治療薬「イレッサ」の訴訟では、副作用をめぐる国の対応が争点になっている。2月の大阪地裁判決は国の賠償責任を否定したが、原告団の要望を受け、細川律夫厚労相が被害防止や救済策の検討を表明していた。検討会はがん患者のほか、製薬会社担当者や医師、学者らで構成する。

2011年3月11日共同通信

2011年3月10日木曜日

がんと免疫

認知度低い免疫のがん退治

がん細胞は健康な人の体でも1日約5000個発生しているが、増殖前に免疫細胞が退治している-。こうした免疫の重要な役割を7割の人は知らないことが、日本能率協会総合研究所の調査で分かった。昨年12月、20~60代の男女計1000人に聞いた。
それによると、健康な人でも日々、がん細胞ができていることについて、71%が「知らなかった」と回答。さまざまな免疫細胞が、がんの芽を摘んでいること も66%が知らなかった。がんは治る病気と考えている人は44%で、41%は「どちらとも言えない」と答えた。がん予防のために心掛けていること(複数回 答)は、「たばこを吸わない」「食生活改善」「ストレスを抱えない」が上位を占めた。
2011年3月10日 産経新聞

血液1滴で肝臓がん判定

肝臓の病気、血液1滴で即判定 肝炎・がんなど9種類

1滴の血液からB型、C型肝炎、肝臓がんなど9種類の肝臓の病気を同時に判定できる――。こんな診断法を、慶応大などのグループが開発した。30分程度 でわかるという。肝臓の病気は症状が表に出るまで時間がかかるため、血液検査で早期発見できれば、治療にもつなげられる。今後2~3年での実用化を目指す という。
人間の血液内には、細胞の活動により生まれる「代謝物」が約3千種類ある。慶応大先端生命科学研究所の曽我朋義教授(分析化学)らは、病気ごとに、この代謝物の種類、濃度が異なることに着目。代謝物の違いなどを測定できる装置を開発した。
その上で、東大と山形大の協力を得て、肝臓の病気を持つ患者ら237人の血液に特徴がないか調べた。この結果、肝臓の病気には、5~10種類程度の特定 の代謝物があることが分かった。また病気ごとに濃度も違った。これらの特徴を比較することで、まだ発症していないB型とC型肝炎、B型とC型の慢性肝炎、 薬剤による肝炎、肝硬変、肝細胞がん、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎の9種類の違いをほぼ正しく見分けることに成功した。
1回の測定に必要な血液量は0.1ミリリットル程度で、費用も2万~3万円ですむという。すでに特許を申請し、食品会社と契約、製薬企業とも交渉中だ。
現在、肝臓の病気は、複数の検査を組み合わせて診断している。ウイルスの有無や画像診断のほか、肝臓の組織をとって調べる方法などだ。
研究成果は近く欧州肝臓学会誌電子版に発表される。
B型、C型肝炎の感染者は、国内に300万人以上おり、曽我さんは「この検査法なら、ウイルス感染の有無だけでなく、病名もわかる。早期診断が可能になることで、多くの命が救えるはずだ」と話している。

2011年3月10日 朝日新聞

がん抑制遺伝子の治験を承認

悪性胸膜中皮腫の新治療研究、厚労省に申請へ 岡山大

岡山大の遺伝子治療臨床研究審査委員会は9日、豊岡伸一助教(呼吸器外科)らが申請していた、悪性胸膜中皮腫の患者にがん抑制遺伝子「REIC」を組み込んだウイルスを投与する臨床研究を承認した。3月中に厚生労働省に申請する。

岡山大病院によると、REICは、人の組織やマウスを使った実験で幅広い種類のがん細胞を死なせる効果が確認されている。化学療法や外科手術による治療が難しい患者が対象で、胸部への投与量を徐々に増やし、安全性や効果を確かめる。

岡山大病院は前立腺がんに対する臨床研究を先行して実施中。

2011年3月9日 産経新聞

独占開発権50億円の大腸がん新薬

ヤクルト、独社からがん治療薬の独占開発権

ヤクルト本社は医薬品メーカーの独エテルナゼンタリス(フランクフルト市)から、がん治療薬として開発中の化合物「ペリフォシン」について、日本での独占的な開発販売権を獲得した。重点領域と位置付けるがん領域で、新薬候補群を拡充する。

ペリフォシンはがん細胞の細胞膜の機能を妨げることで、がん細胞の活性を阻害する治療薬候補。大腸がん多発性骨髄腫の治療薬として研究開発が欧米で進められている。日本での治験開始は2011年度後半となる見通し。

ヤクルトはエテルナ社に頭金600万ユーロ(約6億9000万円)を支払うほか、日本での承認申請に向けた開発の進展に応じて最大4400万ユーロ(約50億6000万円)を支払う。販売額に応じて料率が変化するロイヤルティーも支払う。

2011年3月10日 日本経済新聞

2011年3月9日水曜日

1時間でがんを簡易診断

マイクロチップで1時間以内に癌(がん)検出が可能に

ベッドサイドで1時間以内に癌(がん)性腫瘍を診断できるマイクロチップが開発された。マイクロNMRと呼ばれるこのチップは、磁性ナノ粒子を用いて腫瘍内の蛋白(たんぱく)やその他の化合物を測定するも の。侵襲性の高い生検とは異なり、穿刺(せんし)吸引により細胞を採取するだけでよいという。米国立衛生研究所(NIH)の援助により実施された今回の研 究は、医学誌「Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル医療)」2月23日号に掲載された。

今回の研究では、iPhoneやブラックベリーなどのスマートフォンに接続できるマイクロチップを用いて、悪性腫瘍の疑われる患者50人の組織検体を分析した。その結果、60分以内に44人おいて、9種類の蛋白マーカーのうち4種類で96%の正確性で診断することができた。標準的な病理検査法では診断に3日以上要するのが一般的であり、正確度(accuracy)は84%にとどまるという。

被験者は平均64歳で、肺、大腸、膵臓、肝臓および乳房などさまざまな器官に疑わしい病変がみられ、すでに異常な組織の生検が予定されている患者。分析結果は、従来の病理検査法によって検証した。さらに20人の独立した患者集団を対象に検証を行った結果、この集団でのマイクロチップによる診断の正確度は 100%であったという。研究共著者の1人である米マサチューセッツ総合病院(ボストン)のJered B. Haun氏らは、今回の研究について金銭的な利害関係はないと報告している。

米メモリアル・スローン・ケタリングMemorial Sloan-Kettering癌センター(ニューヨーク)のMoritz Kircher博士は、いずれはこのマイクロチップを用いて多数の悪性腫瘍を診断できるようになると予測している。Haun氏もこのマイクロチップによっ て血液検体が分析可能になるとしており、このツールが市販されれば、1チップにつき数ドル(数百円)の安価なものになる見通しだという。

2011年2月23日 HealthDay News

2011年3月8日火曜日

精巣がん克服の自転車ロードレース名選手

劇的な「自転車人生」に幕=がん撲滅目指す活動へ-アームストロング

自転車ロードレースの名選手として鳴らしたランス・アームストロング(39)=米国=が引退を表明し、劇的な競技人生に幕を下ろした。一説には生存率数パーセントとも言われる精巣腫瘍を克服した後、前人未到のツール・ド・フランス7連覇を果たした「超人」。今後は、がん撲滅を目指す活動も積極的に行う。

トライアスロンから自転車のロードに転向し、トップ選手へと歩んでいったが、25歳で悪性の精巣腫瘍を発病。化学療法の苦しみは想像を絶したという。リハビリと過酷な練習を積んで乗り越え、精神的にも成長した。
ロードレースは欧州が主戦場。米国人で、一時は生死の境をさまよったアームストロングが歴史と伝統を誇る大会で強さを見せつけたことから、ドーピング(禁止薬物使用)が疑われるようになる。その疑惑とも闘った。
2005年にツール・ド・フランス7連覇を達成した後、いったん現役を退いた。復帰した09年の同レースでは総合3位。最後の出場となった今年1月のオーストラリアでの大会は67位だった。


AFP電によると、国際自転車競技連合(UCI)のマッケイド会長は「彼はロードレースの世界的な象徴だった」と賛辞を送った。競技と闘病で培った「不屈の精神」が、人々を勇気づけた。アームストロングは「これからは、がんに苦しむ人たちを救うために設立した団体の運営に多くの時間を費やしたい」と話している。

2011年3月8日 時事通信

治療費数百万円の死亡例

広がる未承認の幹細胞治療 「容認せず」学会が勧告

日本再生医療学会(理事長=岡野光夫・東京女子医大教授)は二日、がん糖尿病、脊髄(せきずい)損傷などの治療として国の承認を受けずに幹細胞治療をしている医療機関が増えているとし、未承認の幹細胞治療に関与しないよう会員に求める勧告を出した。会員の関与が分かった場合は、除名処分なども検討するという。

幹細胞は、多種類の細胞になる能力を持つ細胞。血液をつくり出す「造血幹細胞」、骨や筋肉の基となる「間葉系幹細胞」などが体内にあり、それを取り出して移植すれば傷ついた臓器や組織が再生できると期待されている。

万能細胞である人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)に比べ、できる細胞の種類や増殖力に限界があるが、患者の骨髄や脂肪から直接採取でき、拒絶反応が少ないなどの利点がある。

ただ、骨髄移植(造血幹細胞移植)以外の幹細胞治療はまだ研究段階。効果や安全性を確かめるため、国の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に沿った臨床研究などが行われている。

同学会によると、国内の一部の民間クリニックなどが正規の手続きを経ずに、患者の脂肪や骨髄から取り出した幹細胞を難病患者らに注射するなどしており、治療費は数百万円に及ぶケースもあった。

このような不適切な幹細胞治療を受けるため、海外から日本を訪れる「医療ツーリズム」も行われており、医療事故も起きているという。

勧告文では、日本は幹細胞治療の規制が他国より緩く「タックスヘイブン」(租税回避地)のように利用される恐れがあると指摘。安全性などの課題が残る未承認の幹細胞治療は、再生医療全体の信用を失墜させかねないとし、断固容認しないよう求めた。

記者会見した岡野理事長は「日本では(医師の裁量権を認める)医師法により、手続きなしでの幹細胞治療も認められているが、何をやってもいいというわけではない。行政側と相談しながら適正化を図っていきたい」と話した。

未承認の幹細胞治療をめぐっては、英科学誌ネイチャーが昨年十一月、日本にある韓国企業の提携医療機関で幹細胞を注入する治療を受けた韓国人患者一人が死亡した事例などを紹介する記事を掲載。これを受け、同学会が生命倫理委員会内で対応を議論していた。

2011年3月7日 東京新聞

がん細胞は免疫細胞の貪食作用を促す

がん)細胞は自らの死滅を促すシグナル発信機能をもつ

癌(がん)細胞の多くが、免疫細胞の貪食作用を促す “eat me”シグナルを発する蛋白(たんぱく)をその表面に備えていることが、新しい研究により示された。今後の課題は、癌細胞にこのシグナルを発信させる方法を明らかにすることであると、研究グループは述べている。

医学誌「Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル医療)」オンライン版に12月22日掲載された今回の研究によると、細胞はカルレティキュリン calreticulinという蛋白を発現することによってこのシグナルを発信するという。一方、CD47と呼ばれる物質(細胞表面蛋白)は逆に貪食を拒 否する “don’t eat me”シグナルを発し、癌細胞を死滅から守る。過去の研究から、CD47を阻害する抗体が癌治療に有効であることが示されていた。「多くの正常細胞が CD47を有するが、これらは抗CD47抗体の影響を受けず、抗CD47抗体が細胞だけを選択的に死滅させる理由は不明であった」と、研究の筆頭著者である米スタンフォード大学(カリフォルニア州)のMark Chao氏は述べている。

今回の研究では、一部の白血病、非ホジキンリンパ腫、膀胱癌脳腫瘍卵巣癌な どのさまざまな癌にカルレティキュリンが存在することが示され、「CD47のシグナル阻害が癌治療に有効である理由はそのためであることが判明した」と、 共同研究者である同大学のIrving Weissman博士は述べている。また、ほとんどの正常細胞はカルレティキュリンを発現しておらず、抗CD47抗体に曝露しても死滅しないこともわかっ た。

「研究の次のステップは、カルレティキュリンが疾患経過にどのように寄与するのか、また細胞に何が起きてこの蛋白が細胞表面に移動するのかを明らかにすることである」と共同研究者のRavindra Majeti博士は述べている。

2010年12月22日 HealthDay News

2011年3月7日月曜日

肝臓がんの最新治療方針

肝臓がん治療 「ラジオ波焼均法」などの直し方が可能になる

肝臓がんの治療は、肝機能の状態とがんの進行度の2 つの因子から決定される。肝機能が中程度で腫瘍の大きさが3センチ以上、または多発性の場合、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などのIVR治療が行なわれる。肝臓がんに対するTACEは、開腹手術をすることなく造影剤で位置と大きさを特定し、カテーテルを用いて腫瘍部分のみを選択的に治療するため、患者に負担の少ない治療だ。

日本人の肝臓がんの約9割はB型・C型のウイルス性肝炎や、肝硬変から発症するため、肝機能自体が低下していることが多い。治療は肝機能と、がんの進行度を評価して方針を決定する。

肝機能は腹水や脳症の有無、血清ビリルビン値(胆汁排泄能)、血清アルブミン値(たんぱく合成能)、プロトロンビン活性値(血液凝固能)の5 項目の数値で、良い方からABCの3 段階に分けている。さらに腫瘍の大きさと数で総合的に治療法を決定する。

東京女子医科大学東医療センター外科の塩澤俊一医師に話を聞いた。

「肝機能がA、Bで腫瘍が単発ならば、大きさにかかわらず肝切除を勧めます。腫瘍が2~3個で、腫瘍径が3センチ以内なら、肝切除かラジオ波焼灼法を選択します。肝機能がA、Bで腫瘍径3センチ以上の場合や多発例では、IVR治療の対象となります。肝機能がCと判定されると、基準を満たせば肝移植の道が残されていますが、多くの場合、積極的な治療は難しくなります」

ラジオ波焼灼法は、皮膚の上から腫瘍直接針を刺入し、40~50センチのラジオ波で腫瘍を焼灼する局所療法だ。開腹の必要がなく患者の負担は少ないが、腫瘍焼灼が不十分だとがんが急速に増大することがあり、腫瘍径3センチ以上は適応外とされている。

そこで3センチ以上や多発性の場合はIVR治療を実施する。IVRはエックス線の透視を利用しながら行なう治療の総称で、肝動脈化学塞栓療法(TACE)や肝動脈動注化学療法(TAI)などが含まれる。

2010年11月22日 週刊ポスト

膀胱がんは90%以上が根治

 1989年、個性派俳優・松田優作が享年39という若さで急逝した。死因は膀胱がんだった。しかし、大阪医科大学泌尿器科の東治人准教授は「この治療法が確立し、施療できていれば、完治した確率は高いでしょう」と語る。

尿路(腎盂・尿管・膀胱)がんの中で、死亡数7割以上、罹患率も半数を占める膀胱がん。60歳代から罹患率が増加するが、男性は女性の約4倍も罹患率が 高い(国立がんセンター2006年統計)。悪性度が高く、進行した場合は手のうちようがなくなりがちだった膀胱がんに対し、大阪医科大学の東治人准教授 チームが“膀胱を取らずに、9割以上の確率で根治する”画期的な治療法を開発し、成果を上げている。その治療法が「大阪医科大式膀胱温存療法」だ。
大阪医科大式膀胱温存療法のポイントは3つ
・膀胱につながる動脈の血流を遮断し、膀胱内だけに抗がん剤を循環させる
・膀胱から出る静脈に透析を行い、抗がん剤を除去する(※)
・上記と同時に膀胱に放射線を照射し、がんを徹底的に死滅させる
※ただし、患者に体力がある場合は透析を行なわず、抗がん剤を全身に循環させ、がんの転移を未然に防ぐという措置をとることも。高濃度の抗がん剤も、全身に回れば濃度が下がるため、それほど重い副作用は出ない。
治療法が誕生して以来15年間で120例以上の患者がこの治療を受け、がんが膀胱内に留まっている患者の90%以上が根治。現在では、放射線科の 鳴海善文教授、山本和宏講師、血液浄化センターの井上徹准教授らとこの治療を行っている。初回治療で根治した患者では、施療から14年を経て、現在までほ とんど再発、転移は見られない。この治療を受けた患者の最高齢は98歳。この治療は短時間で済むので、体力の乏しい高齢者にも適用できる。

2011.02.03 週刊ポスト

抗がん剤単独の倍以上の奏効率

がん治療最前線の温熱療法「専門医が知らない」で設置率5%

抗がん剤の有効性と危険性が論争の的となるなか、その副作用を軽減し、従来の抗がん剤・放射線・手術によるがん治療の効果を高める「ハイパーサーミア温熱療法)」が注目を集めている。

ハイパーサーミアは、高周波を利用するサーモトロン-RF8という装置で、体の表面から深部まで加温する治療法だ。元来、熱に弱いがん細胞を摂氏 42~44度で死滅させる目的で開発されたが、最近ではがん周辺の正常な細胞を42度以下の低い温度で活性化させ、免疫力を高める働きのほうも注目されている。がん細胞内への薬剤の取り込み量が増大し、放射線の効果も増強されることも分かってきた。

福岡県北九州市の社会医療法人共愛会戸畑共立病院の今田肇・がん治療センター長は、放射線、化学療法併用のハイパーサーミアで効果を上げている。「最大の利点は、抗がん剤の量を減らしてその副作用から患者さんを解放し、長期にわたる治療が可能になることです」(今田氏)

肺がんに抗がん剤とハイパーサーミアを併用した場合、がんの消失・縮小効果を表わす奏効率は、薬剤単独の倍以上という。群馬大学第一外科の浅尾高行准教授は、直腸がんの手術前に行なう温熱化学放射線療法により、進行がんでも人工肛門がいらない肛門温存手術の可能性が高まるという。

「群馬大では術前の放射線療法に、温熱療法と化学療法を併用しています。3者併用では、顕微鏡で見てがんが消失した例が27.4%CTや内視鏡でがんが認められない例が54.9%になりました。新しい肛門温存手術により進行下部直腸がんの自然肛門温存率は90.2%に上っています」(浅尾氏)

ハイパーサーミアは脳と眼球を除くあらゆる部位のがんに適用可能で、副作用がほとんどない。しかし、治療施設は全国で約70か所と、まだまだ不足している。普及しない理由は、一連の治療をまとめたものに対して保険点数が決められており、何回治療しても定額で、医療機関にとって経営上のメリットが少ないこと。設置施設が全国のがん診療拠点病院中5%にも満たないため、がんの専門医がこの治療法を理解していないといったこともある。

2011年3月5日 週刊ポスト

2011年3月4日金曜日

肺がん手術に「代用気管支」

世界初「代用気管支」移植に成功=がん切除、肺の摘出回避-仏

パリ郊外にある公立アビセンヌ病院は3日、他人が提供した血管を加工して「代用気管支」とし、がんで一部切除した気管支の代わりに移植する手術に世界で初めて成功したと発表した。従来なら肺摘出が必要な患者でも、肺機能を残したまま患部だけ除去できるという。

AFP通信などによると、手術はエマニュエル・マルティノ医師らのチームが2009年10月、78歳の男性患者に行った。提供された大動脈の一部をステントと呼ばれる金属製の筒で補強してチューブ状の代用気管支とし、切り取った気管支の代わりに移植した。

この方法によって、術後の死亡率が高い肺摘出を回避できる。代用に大動脈を使うことで、拒絶反応を抑える薬を投与しなくても済むとされる。

マルティノ医師によれば、男性は「定期的な経過観察を受けているが、とても元気」で、呼吸機能も「喫煙歴のある80歳男性」程度にまで回復した。今後、同様の手術をさらに20~30件計画しているという。

2011年3月4日 時事通信

転移性乳がん患者の余命延長新薬

エーザイ、新規抗がん剤「HALAVEN」が後期転移性乳がん患者の全生存期間を延長

後期転移性乳がん患者様における「HALAVEN(R)」の主要臨床試験結果がLancet誌に掲載される
-臨床第III相試験でHALAVEN(R)は全生存期間である主要評価項目を達成-

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、当社創製の新規抗がん剤「HALAVEN(R)」(エリブリンメシル酸塩)の主要臨床試験結果が、 医学専門誌「The Lancet」に掲載される、と発表しました(1)。今回同誌に掲載されるのは、グローバル第III相試験 EMBRACE(Eisai Metastatic Breast Cancer Study Assessing Physician’s  Choice vs.Eribulin)試験の結果であり、「HALAVEN(R)」が統計学的有意差をもって、後期転移性乳がん患者様の全生存期間 (Overall Survival:OS)延長を実証したという内容です。掲載される試験の結果は、治験医師選択単剤療法患者様の全生存期間が 10.6ヶ月に対して、「HALAVEN(R)」投与後期転移性乳がん患者様の同中央値は13.1ヶ月であり、23%の中央値改善を示しました。これらの 結果は、後期転移性乳がん患者様に対する「HALAVEN(R)」の生存期間延長におけるベネフィットの可能性を示唆するものです。

「HALAVEN(R)」は、非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤であり、海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽 出された天然物ハリコンドリンから誘導された全合成類縁化合物です(2),(3)。すでに米国食品医薬品局、シンガポール保健科学庁より承認を取得してい ます。また、欧州医薬品庁の医薬品委員会より、承認勧告(positive opinion)を受領、日本においては優先審査品目に指定され、スイス、カ ナダとともにそれぞれ審査中です。

「HALAVEN(R)」の最も一般的な副作用(頻度25%以上)は、好中球減少(82%)、貧血 (58%)、無力症/倦怠感(54%)、脱毛(45%)、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ:35%)、吐き気(35%)、便秘(25%)でした。重 篤な副作用として報告されたのは、好中球減少(発熱を伴う症例:4%、発熱を伴わない症例:2%)でした。また「HALAVEN(R)」投与中止に至った 主な副作用は末梢神経障害(5%)でした。

「The Lancet」は1823年創刊、180年以上の歴史ある英国外科学会発行の医学誌で、世界5大医学雑誌の1つとされています。雑誌名は、手術用メスの一種であるランセット(Lancet)、および鋭尖窓(Lancet window)に因んでいます。

当社は、がん領域を重点領域と位置づけ、「HALAVEN(R)」をはじめとした新規抗がん剤や支持療法に用いられる薬剤の開発に注力しています。これら の取り組みにより、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

2011年3月3日 プレスリリース

陽子線がん治療施設が新規オープン

最先端の治療装置を備えた「陽子線がん治療センター」が7日、福井市の県立病院内にオープンする。既に県内外から17件の治療予約があり、患者の受け入れ態勢はほぼ万全。3日には、施設内が報道陣に公開された。

陽子線治療は、がん病巣を集中的に破壊でき、エックス線治療と比べて副作用が少ないのが特徴。治療対象は、病巣の位置がはっきりしている頭頸部(けいぶ)腫瘍、非小細胞肺がん、肝細胞がん、前立腺がん、転移性腫瘍の5疾患で、患者は通院して8~39回の治療を受ける。

この日は、上あごのがんの模擬患者を用い、山本和高センター長が治療の流れを説明。コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)でがんの位置や形状を詳しく調べ、照射する陽子線の方向や量などを定めた上で治療を進める手順を示した。
今後、より精度の高い陽子線治療ができる「積層原体照射システム」を世界で初めて導入する予定。山本センター長は「総合病院内にあることで、他の 治療法と組み合わせるなど、より高い効果が期待できる」と説明し、「実績を重ね、治療できる疾患を広げていきたい」と意欲を語った。
センターは、県が94億円をかけて整備。6日に開所式が行われ、7日から治療を開始する。

2011年3月4日 福井新聞

血液がん向けの新薬

日本新薬、血液がん薬11日発売 「骨髄異形成症候群」患者向け


日本新薬は血液がん向けの治療薬「ビダーザ(一般名アザシチジン)」を11日に発売する。骨髄で血液細胞を正常に作れなくなる「骨髄異形成症候群」の患者向け。注射薬として使う。同症候群は発病の原因が解明されていない難病で、これまで国内では有効な治療薬がなかった。同社は販売のピークと予測 する2015年度に52億円の売上高を見込む。
アザシチジンは米国の製薬会社セルジーン(ニュージャージー州)が生み出した。日本新薬は06年にセルジーン社と契約し、国内で臨床試験(治験) を進めてきた。セルジーンはすでに欧米などで同薬剤を販売している。今回販売するのは100ミリグラムのびん入りで、薬価は4万9993円。卸会社を通し て大学病院などに供給する。

2011年3月3日 日経産業新聞

2011年3月3日木曜日

次世代のがん治療法

筑波大など、最先端がん治療法BNCT」実用化へ産学官で新組織

筑波大学は最先端のがん治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の実用化を推進する産学官のコンソーシアムを今夏までに立ち上げる方針を固めた。

加速器から照射する中性子を使ってがん細胞だけを破壊する治療法で、他の放射線では治療が困難な多発性がん浸潤がんなどに有効とされる。コンソーシアムは小型加速器の開発と医療に利用するための薬事法に基づく登録、運用方法の確立に加え、臨床研究を重ねて次世代のがん治療法として「先進医療」の認定を目指す。

コンソーシアムは筑波大学のほか、茨城県、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構、重工メーカーなど、2010年4月に立ち上げた研究会 を母体に産学官が連携。コンソーシアムの下に人材育成、加速器やその電源に関係する設備整備、開発した加速器の維持管理を行う設備管理の3部会を置く。組 織代表には筑波大付属病院副病院長の松村明氏が選ばれる見通し。

2011年03月03日 日刊工業新聞

がん幹細胞治療に逆風

未承認の幹細胞治療、「関与なら除名も」 再生医療学会

がんや脊髄(せきずい)損傷、アルツハイマー病などに、患者自身の細胞を注射して治すとうたっている「幹細胞治療」について、日本再生医療学会は2日、会員の医師らに対して、関与しないよう求める勧告文を発表した。会員の関与が分かれば、除名も検討する。

人の脂肪や骨髄などにある幹細胞はさまざまな細胞に変化でき、けがや病気で欠けた細胞や組織の再生に使えると期待されている。一方で、その細胞を使った 治療については、まだ効果や安全性は確立していない。このため、国内で人に行う場合は、国は指針に基づき、慎重に進めるよう定めている。しかし、一部の民 間クリニックが、国の承認を受けずに独自の判断で、数百万円の費用で、様々な難病などの患者に実施している。

再生医療学会の声明では、この行為を「健康被害の発生や、幹細胞治療に対する誤った認識を国民に生じさせ、今後の幹細胞治療の推進の障害になる可能性が ある」と批判。会員に「断固容認しない態度を」と求めた。会員は約3500人おり、学会のウェブサイトや会誌で周知する。

記者会見した同学会理事長の岡野光夫(てるお)・東京女子医大教授は「行き過ぎた行為があれば、除名もありうる。行政サイドとも相談しながら、何か手を打ちたい」と話した。

2011年3月2日  朝日新聞

2011年3月2日水曜日

生きたウイルスが抗がん剤を運ぶ

飛躍明日への処方箋(4)希望も運ぶナノテクDDS

極小のカプセルが次々とがん細胞の中に運ばれると、プチプチと破裂し、薬を放出していた。

「予想以上だ。これなら新薬になる」。東京大学の片岡一則教授(マテリアル工学)は昨年、のぞき込んだ顕微鏡画面で、自ら作ったカプセルの働きを目の当たりにした。

抗がん剤を包むカプセル。大きさは10ナノメートル~100ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)という小ささだ。肉眼では見えない。

片岡教授は、医療の専門家ではない。だが、日本が世界に誇るナノテクノロジーを創薬に応用することで、医療を進歩させようとしているのだ。

がん細胞は増殖が早い。増殖するがん細胞の周囲では、血管の形成が追いつかず、小さな隙間がある未発達な血管になっている」という。わずか数百ナノメートルという血液すら通さぬ隙間だが、ナノカプセルならば楽々、通過できる。

つまり、ナノカプセルに入れた抗がん剤を血管内に入れれば、がん細胞の近くでのみ、薬が血管から細胞に漏れ出すのだ。

正常な細胞に薬が行くことはなく、がん細胞だけを攻撃するので副作用が少なくなる。これまで副作用が強くて使えなかった有効成分も新薬として使えるかもしれない」。片岡教授はそう話す。

狙った場所に、必要な量の薬を必要な時間だけ届ける-。片岡教授のこうした研究は、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)と呼ばれる。

薬などの異物が体内に入ると、人の体では異物を排除しようとさまざまな免疫作用が働き、せっかくの有効成分が壊されてしまうことがある。患部とは無関係 の部位に薬が行けば、深刻な副作用につながりかねない。DDSは有効成分を免疫作用から守り、患部に直接届けることを助ける技術なのだ。

新薬開発では、年間数十兆円を売り上げるような欧米の巨大企業が、莫大(ばくだい)な開発費を背景に世界をリードしている。資金力に劣る国内企業は後塵 (こうじん)を拝しているのが実情だ。しかし、DDSは薬を改良する技術のため、開発費は少なくて済む。日本が誇る技術力やアイデアにより、飛躍が期待で きる分野なのだ。

実用化されているDDSもある。代表例が前立腺がんなどに使われるホルモン剤「リュープリン」(武田薬品工業)。この薬のDDSの特長は「時間差」だ。

薬の成分は、同薬が発売される20年前には見つかっていた。ただ、毎日の注射が必要なことがネックとなり、平成4年まで国内では発売されずにいた。

武田は有効成分を体内で溶ける成分と混ぜて0・02ミリの粒に固形化した。粒は3カ月かけて少しずつ溶けながら有効成分を放出する。3カ月に1回の注射で済むようになった。

「成分の効果は分かっていたので、待ちに待った薬だった」。東京厚生年金病院泌尿器科の赤倉功一郎部長は振り返る。

生きたウイルスを“運び屋”として利用する研究も進められている。

バイオベンチャー「ディナベック」(つくば市)は、人に害をもたらさないとされるセンダイウイルスをDDSとして使い、日本発のエイズウイルス(HIV)を予防するワクチンの製品化を目指している。

「ウイルスは生物の細胞に効率良く入り増殖する性質を持っている。それを利用しない手はない」(長谷川護社長)という発想だ。

センダイウイルスの中に、HIV遺伝子の一部を入れて体内に注射すると、ウイルスがその力を発揮して細胞内に侵入。その結果、体内でHIVへの免疫が作られ、本物のウイルスが入ってきたときの発症が予防できるのだという。

日本が得意とする緻密、精密な技術力を駆使したDDS。その開発には、日本の創薬の牽引(けんいん)役になることだけでなく、一人でも多くの患者に希望を運ぶことへの期待が込められている。

2011年3月2日 産経新聞

2011年3月1日火曜日

静岡がんセンターが通院治療拡充

県立静岡がんセンター 通院治療センターを拡充

最近のがんの治療は入院しないで外来通院で済む方法が増えているが、長泉町にある「県立静岡がんセンター」はこうした外来患者の増加に対応するため、通院治療センターを拡大し、3月1日にオープンする。

最近のがん治療の進歩で、入院せず外来通院で済む治療法が増えている。これに伴い静岡がんセンターでも、日帰りで抗がん剤を点滴治療する患者が増えてきていることから、外来通院治療センターを拡大するもの。ベッドは、従来の34から国内最大の70に増やした。またフロアの中央には、抗がん剤の調合などが行なわれる「ハザード室」が設けられていて、外に薬が漏れ出さないよう気圧が下げられている。新しい通院治療センターは、3月1日にオープンし、スタッフが増強されるまでは当面50床で対応する予定。

2011年2月28日 静岡第一テレビ

韓国の抗がん剤新薬

バイオシミラー、数年内に「金の卵」になるか

●急成長するバイオ医薬品市場

細胞培養や人体ホルモンの遺伝子組み換えなどの方法で開発するバイオ新薬は、従来の合成医薬品では難しかった病気を治療し、急成長を遂げてきた。最初のバ イオ新薬は1982年、米ジェネンテックが遺伝子組み換え技術で開発したインスリン。その後、ホルモン剤やインターフェロン、予防ワクチンなど、様々なバ イオ医薬品が登場した。

バイオ医薬品市場が猛スピードで成長を遂げている。06年、世界医薬品市場規模6430億ドル(約723兆ウォン)のうち、バイオ医薬品は762億ドル と、11.9%占めた。その割合は昨年9000億ドルのうち、16.0%(1442億ドル)へと高まった。20年は21.8%へと高まるものと見られる。

バイオ医薬品の成長スピードは、国内でも相当速い。09年基準の従来製薬業の生産規模伸び率は6.4%に止まったが、バイオ医薬品は37.0%成長し、5倍以上の成長スピードを見せた。

三星(サムスン)は、バイオ医薬品市場に進出し、バイオ新薬よりバイオシミラーの開発を先に進めることにした。バイオ新薬に比べ、バイオシミラーはコストが少なく、成功確率が高いからだ。バイオシミラーの平均開発費用は、新薬の10分の1レベルであり、開発期間も半分程度で、成功確率は約10倍高い

医薬品市場で大ヒットした多くのバイオ新薬の特許期間が12年以降切れるこ とも、バイオシミラー事業の先行きを明るくさせる要因となっている。08年、64億ドルの売上を上げたアムジェン社のリウマチ関節炎の治療剤「エンブレ ル」の特許期限が12年に切れることを皮切りに、13年は「レミケード」(08年売上=53億ドル)、「エポジェン」(08年売上=51億ドル)など、有 名な新薬の独占販売が期限切れを迎える。

●バイオシミラー開発に乗り出した国内企業

国内企業は1990年代初頭、人体成長ホルモンや貧血治療剤「EPO」(エリスポロエチン)など微生物を利用した第1世代バイオシミラーを開発したが、内需向けに止まった。

今は、単一クローン抗体などを利用して作る第2世代バイオシミラーの開発段階。設備容量基準では世界3位のバイオ医薬品の生産施設を備えているセルトリオンは、乳がん治療剤「ハーセプチン」、リウマチ関節炎治療剤「レミケード」などのバイオシミラーを開発している。LG生命科学やハンファケミカルは、エンブレルのバイオシミラーに対し、臨床試験を行っている。三星は、血液がんリンパ種治療に使用される「リツキサン」バイオシミラーを巡り、臨床試験計画承認を申請している。リツキサンは、15年に特許期限が切れる。

知識経済部の関係者は、「現在は技術や経験などで、米国や欧州などに後れを取っているが、バイオシミラーで、開発経験を蓄積し、販売力量などを強化すれば、自然にバイオ新薬の開発へと移行することになるだろう」と話した。

2011年3月1日 東亜日報

抗がん剤新薬候補へ760億円

第一三共、米抗がん剤VBを買収 最大760億円

第一三共は1日、米医薬品ベンチャーのプレキシコン(カリフォルニア州)を買収すると発表した。プレキシコンの全株式を8億500万ドル(約660億 円)で取得する。第一三共は臨床試験(治験)中の新薬の発売に成功した場合、売り上げに応じて追加で最大1億3000万ドル(約106億円)を支払う可能 性がある。プレキシコンは抗がん剤を得意としており、第一三共は買収で抗がん剤を中心に新薬候補を拡充する。

プレキシコンは2001年に設立。非上場で、従業員数は約45人。皮膚がんの一種であるメラノーマの治療薬が欧米で治験の最終段階に入っているほか、乳がんの治療薬と関節リウマチの治療薬も治験をしている。

メラノーマの治療薬はスイスの製薬大手ロシュと共同で治験中で、米国で承認された場合、第一三共はロシュ子会社のジェネンテックと共同で営業をする。

第一三共は抗がん剤を重点分野の一つに掲げており、08年にドイツの医薬品ベンチャー、ユースリー・ファーマを買収した。プレキシコンを買収することで世界最大市場である米国でのがん新薬候補を増やすとともに、物質を化学合成して作る低分子医薬品の研究拠点も獲得する。

世界の製薬大手は今後の需要が見込める抗がん剤の品ぞろえを拡充しており、武田薬品工業やアステラス製薬、エーザイなど日本の製薬大手もこの2~3年、抗がん剤の研究開発を強みとする海外の医薬品ベンチャーの買収を積極化している。

2011年3月1日 日本経済新聞

バイオ医薬品とは

バイオ医薬品とは

ヒトが体内に持つ成分を応用した医薬品の総称。遺伝子組み換え技術や細胞の培養など、最新のバイオ技術を使ってつくる。異物を排除するヒトの免疫機能を応用した抗体医薬品が代表的で、がんや関節リウマチの治療薬が実用化されている。抗体医薬品は標的の異物にだけ作用して正常な細胞を傷つけないため、副作用が少ないのが特徴だ。

化学合成で作り出す従来型の低分子医薬品は技術の成熟化が進み、画期的な薬を生み出しにくい。

2011年2月28日 日本経済新聞