2011年3月3日木曜日

がん幹細胞治療に逆風

未承認の幹細胞治療、「関与なら除名も」 再生医療学会

がんや脊髄(せきずい)損傷、アルツハイマー病などに、患者自身の細胞を注射して治すとうたっている「幹細胞治療」について、日本再生医療学会は2日、会員の医師らに対して、関与しないよう求める勧告文を発表した。会員の関与が分かれば、除名も検討する。

人の脂肪や骨髄などにある幹細胞はさまざまな細胞に変化でき、けがや病気で欠けた細胞や組織の再生に使えると期待されている。一方で、その細胞を使った 治療については、まだ効果や安全性は確立していない。このため、国内で人に行う場合は、国は指針に基づき、慎重に進めるよう定めている。しかし、一部の民 間クリニックが、国の承認を受けずに独自の判断で、数百万円の費用で、様々な難病などの患者に実施している。

再生医療学会の声明では、この行為を「健康被害の発生や、幹細胞治療に対する誤った認識を国民に生じさせ、今後の幹細胞治療の推進の障害になる可能性が ある」と批判。会員に「断固容認しない態度を」と求めた。会員は約3500人おり、学会のウェブサイトや会誌で周知する。

記者会見した同学会理事長の岡野光夫(てるお)・東京女子医大教授は「行き過ぎた行為があれば、除名もありうる。行政サイドとも相談しながら、何か手を打ちたい」と話した。

2011年3月2日  朝日新聞