2011年3月9日水曜日

1時間でがんを簡易診断

マイクロチップで1時間以内に癌(がん)検出が可能に

ベッドサイドで1時間以内に癌(がん)性腫瘍を診断できるマイクロチップが開発された。マイクロNMRと呼ばれるこのチップは、磁性ナノ粒子を用いて腫瘍内の蛋白(たんぱく)やその他の化合物を測定するも の。侵襲性の高い生検とは異なり、穿刺(せんし)吸引により細胞を採取するだけでよいという。米国立衛生研究所(NIH)の援助により実施された今回の研 究は、医学誌「Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル医療)」2月23日号に掲載された。

今回の研究では、iPhoneやブラックベリーなどのスマートフォンに接続できるマイクロチップを用いて、悪性腫瘍の疑われる患者50人の組織検体を分析した。その結果、60分以内に44人おいて、9種類の蛋白マーカーのうち4種類で96%の正確性で診断することができた。標準的な病理検査法では診断に3日以上要するのが一般的であり、正確度(accuracy)は84%にとどまるという。

被験者は平均64歳で、肺、大腸、膵臓、肝臓および乳房などさまざまな器官に疑わしい病変がみられ、すでに異常な組織の生検が予定されている患者。分析結果は、従来の病理検査法によって検証した。さらに20人の独立した患者集団を対象に検証を行った結果、この集団でのマイクロチップによる診断の正確度は 100%であったという。研究共著者の1人である米マサチューセッツ総合病院(ボストン)のJered B. Haun氏らは、今回の研究について金銭的な利害関係はないと報告している。

米メモリアル・スローン・ケタリングMemorial Sloan-Kettering癌センター(ニューヨーク)のMoritz Kircher博士は、いずれはこのマイクロチップを用いて多数の悪性腫瘍を診断できるようになると予測している。Haun氏もこのマイクロチップによっ て血液検体が分析可能になるとしており、このツールが市販されれば、1チップにつき数ドル(数百円)の安価なものになる見通しだという。

2011年2月23日 HealthDay News