2011年3月14日月曜日

前立腺がん手術158件の病院

手術支援ロボットをいち早く導入 低侵襲治療を積極的に取り組む

★東京医科大学病院
近年、身体をなるべく傷つけない“低侵襲”の治療法が広がっている。内視鏡や鉗子(かんし)、レーザーメスなどを入れる小さな孔を数カ所あけて行う内視鏡手術は、低侵襲治療の代表格だ。

米国では、より微細な手術を可能にするロボットナビゲーションシステムによる「ロボット支援手術」も普及している。内視鏡からモニターに送られてくる3次 元画像を見ながら、医師はロボットアームに装着された先端5ミリの鉗子を遠隔操作で動かしていく。鉗子の先端は約180度曲がる関節機能がつき、人間の指 が届きにくいところでも治療が行いやすい利点がある。

この手術支援ロボットシステム「ダヴィンチ」を2006年に国内で初めて導入したのが、東京医科大学病院だ。08年10月には高度医療の承認を受け、通常の保険診療の治療と合わせて実施することができるようになった。

「従来から各種の泌尿器科疾患に腹腔鏡(内視鏡)による手術を行っていますが、モニターに映し出される画像は2次元で、遠近感がなかった。ロボット支援シ ステムの利点は、遠近感のある3次元画像で、10倍まで患部の拡大が可能です。また、人間の指先は無意識のうちに震えますが、手振れ補正機能もあるため、 超微小な血管や神経にも手術を行いやすくなりました」

こう話す同病院泌尿器科の橘政昭主任教授(60)は、低侵襲治療に積極的に取り組んできた。単に傷を小さくして腫瘍を摘出するだけでなく、機能温存にも力を入れている。

一般的に、前立腺がんで前立腺を摘出すると、排尿機能や性機能に副作用が起こりやすい。前立腺は骨盤や恥骨に囲まれ、細かい神経や血管が周辺に位置している。出血しやすく神経も傷つけやすいのだ。

膀胱がんでも、膀胱を摘出するときに多量の出血があったり、術後の勃起不全がつきまとう。

それらを解消すべく、橘教授は、腹腔鏡による細かい手術や自然排尿型の尿路再建術、神経温存&移植などさまざまな工夫をしている。

「私が最初に米国でロボット支援システムを見たときに、低侵襲治療の未来を担う技術だと思いました。それで導入を決めたのですが、高額(1台約3億円)のため、日本ではまだ広く普及していません」(橘教授)

東京医科大学病院には、治療用として現在2台のロボット支援システムがあり、トレーニング専用の1台も導入。未来を担う若い医師の育成にも力を入れている。

また、昨年9月には、東京薬科大学と工学院大学との「医工薬」の連携もスタートした。

「新しい創薬と新しい医療技術の開発に役立ちたい。近い将来、全自動の手術も夢ではないと思っています」と橘教授。その夢に向けてまい進中だ。

<データ>2010年実績

☆手術総数588件

<内訳>

☆前立腺がん手術158件

(内ロボット支援手術146件)

☆膀胱がん全摘出手術18件

(同5件)

☆精巣腫瘍手術15件

腎臓がん手術43件

☆腎盂・尿管がん手術21件など

☆病床数1015床

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