2011年3月14日月曜日

50歳以上男性に増えるがん

増える前立腺がん 50歳以上の男性は毎年検診を 

近年、国内で食生活の欧米化などにより増えつつある前立腺がん。「がんをよく知るための講座」(兵庫県予防医学協会、神戸新聞社主催)が神戸市兵庫区の健康ライフプラザで開かれ、その診断や治療法について、神戸大大学院医学研究科腎泌尿器科学分野の三宅秀明准教授が解説した。

国立がん研究センターがん対策情報センターの調査によると、2005年に国内で新たに前立腺がんと診断されたのは4万2997人で、胃がん肺がんに次ぐ。「増加傾向にあり、2020年には、がんの中で2番目に多くなるという予測もある」(三宅准教授)。欧米諸国で患者が多く、食生活の影響が大きいとみられるという。

前立腺は膀胱(ぼうこう)の出口に位置する男性の生殖器。クリの実大で、中心を貫くように尿道が走っている。がん細胞は外側にある組織から発生するため、初めのうちは尿道を圧迫して尿が出にくいなどの自覚症状は少ない。

三宅准教授は「早期発見には検診が重要。1度で大丈夫だと思わず、50歳以上の男性は毎年受けてほしい」と訴えた。

検診では、血液中の前立腺特異抗原(PSA)を測る。前立腺で作られるタンパク質の一種で、値が大きくなるほどがんが見つかる確率も高くなる。ただ万能ではなく、値が小さくてもがんの場合があり、前立腺肥大症で高くなることも。診断を確定するためには、針を刺して組織を取り、顕微鏡で調べる

治療は手術から抗がん剤まで、さまざまな方法がある。進行が遅いため、早期なら手術や放射線治療で完治が可能。手術は前立腺を取り出して尿道を縫合す る。合併症として、周囲の神経が弱り、勃起(ぼっき)不全を起こすことがある。放射線には外から当てる方法のほか、放射性物質を出す小さな針を埋め込む 「小線源療法」も。ただ放射線が弱いため、前立腺が大きい人には向かないという。

一方、進行がんでも適切な治療を受ければ、ある程度の期間は良好な経過をたどる。三宅准教授は「男性ホルモンの影響を受けてがんが大きくなるので、それをブロックするのが有効」と説明。男性ホルモンは精巣と副腎から分泌されており、それぞれを抑えるために注射薬と飲み薬の抗ホルモン薬を併用する。しかし、ホルモン療法は時間がたつと効果が薄れてくる。効かなくなれば、抗がん剤を投与する。

三宅准教授は「治療は多岐にわたる。できるだけ幅広い治療を行うことができる施設で、専門医と十分相談して決めてほしい」と強調した。

2011年3月14日 神戸新聞