2011年3月8日火曜日

がん細胞は免疫細胞の貪食作用を促す

がん)細胞は自らの死滅を促すシグナル発信機能をもつ

癌(がん)細胞の多くが、免疫細胞の貪食作用を促す “eat me”シグナルを発する蛋白(たんぱく)をその表面に備えていることが、新しい研究により示された。今後の課題は、癌細胞にこのシグナルを発信させる方法を明らかにすることであると、研究グループは述べている。

医学誌「Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル医療)」オンライン版に12月22日掲載された今回の研究によると、細胞はカルレティキュリン calreticulinという蛋白を発現することによってこのシグナルを発信するという。一方、CD47と呼ばれる物質(細胞表面蛋白)は逆に貪食を拒 否する “don’t eat me”シグナルを発し、癌細胞を死滅から守る。過去の研究から、CD47を阻害する抗体が癌治療に有効であることが示されていた。「多くの正常細胞が CD47を有するが、これらは抗CD47抗体の影響を受けず、抗CD47抗体が細胞だけを選択的に死滅させる理由は不明であった」と、研究の筆頭著者である米スタンフォード大学(カリフォルニア州)のMark Chao氏は述べている。

今回の研究では、一部の白血病、非ホジキンリンパ腫、膀胱癌脳腫瘍卵巣癌な どのさまざまな癌にカルレティキュリンが存在することが示され、「CD47のシグナル阻害が癌治療に有効である理由はそのためであることが判明した」と、 共同研究者である同大学のIrving Weissman博士は述べている。また、ほとんどの正常細胞はカルレティキュリンを発現しておらず、抗CD47抗体に曝露しても死滅しないこともわかっ た。

「研究の次のステップは、カルレティキュリンが疾患経過にどのように寄与するのか、また細胞に何が起きてこの蛋白が細胞表面に移動するのかを明らかにすることである」と共同研究者のRavindra Majeti博士は述べている。

2010年12月22日 HealthDay News