2011年6月15日水曜日

免疫機能を持つタンパク質

病原虫の酵素が免疫抑制 トキソプラズマ、薬開発に

2体のトキソプラズマ原虫(国立感染症研究所・永宗喜三郎博士提供)
エイズやがん患者が感染するとけいれんなどを引き起こす「トキソプラズマ原虫」の持つ酵素が、病原体を排除する免疫機能を抑制することを大阪大免疫学フロンティア研究センターの竹田潔教授らのチームがマウスで解明し、13日付米医学誌(電子版)に発表した。
免疫が低下する結果、トキソプラズマ症が発症しやすくなる。健常者はほぼ発症しないが、妊婦が初めて感染すると流産することもある。竹田教授は「酵素の働きを抑える薬剤開発につながる」としている。
酵素はROP18。チームはROP18を持たない原虫を作製、マウス10匹に投与し、通常の原虫を投与したマウスと比べた。すると、通常の原虫ではマウスが9日後に全滅したのに対し、ROP18のない原虫では、9日後には全10匹が生き残り、20日後も4匹が残った。
チームは、ATF6βというタンパク質が免疫機能を持つことを発見。ROP18がこのタンパク質を分解し免疫を低下させることも突き止めた。
原虫は世界で数十億人、日本では数千万人が感染しているとの試算がある。チームの山本雅裕准教授は「原虫は免疫を抑制する他の酵素も持つ可能性があり、特定を進めたい」としている。
2011年6月13日 東京新聞