2012年1月23日月曜日

世界トップ水準の骨軟部腫瘍治療

“骨軟部腫瘍”治療で世界トップの水準!

がん研有明病院整形外科

骨、筋肉、脂肪など身体を支えるさまざまな組織にも腫瘍はできる。それらを総称して「骨軟部(こつなんぶ)腫瘍」という。その多くは良性であり、簡単な手術をするか、経過観察するだけでことが足りる。
 一方、放置すると死に至る悪性のものを「肉腫」と呼ぶが、国内のがん患者全体の1%以下と発症頻度が低いだけに、診断と治療をトータルで行える医療機関は極めて少ない。また、骨の肉腫の場合は、レントゲン撮影でも異常を発見できるが、筋肉や脂肪などにできる軟部肉腫は、レントゲンなどの画像検査で特徴がなく診断が困難である。
 そんな骨軟部腫瘍の診断と治療で世界の頂点を極めているのが、がん研有明病院整形外科だ。「迅速細胞診」という診断技術を駆使し、9割以上の患者で、受診したその日に良性か悪性かの診断をつけ、素早く治療スケジュールを決定するのが特徴である。
 「骨軟部腫瘍は、身体を支える骨や筋肉、脂肪などの組織を模倣して増殖し、さまざまな発育様式を示すため診断が難しい場合が多い。当科には遠方から来ら れる方が多いので、即日に診断するというのはとても大事なことだと思っています。それが専門病院としての使命ともいえる」とは、同科の松本誠一部長 (60)=写真。
 骨軟部腫瘍は、全身のいろいろなところに発症する。しかも、大事な血管や神経の近くということもあり、がんをどこまで取り除くか、さらには、切除後の皮膚や骨などの再建をどうするのか。
 加えて、患者の年齢も乳幼児から高齢者まで幅広い。1例ごとに異なる治療法が要求されるので、診療技術を身につけるのには長い研修期間が必要とされる。そのため、世界的にも専門医が少ない状況が続いている。
 「夢は骨軟部腫瘍の治療を総合的に行えるようなセンターを作ることです。現在は外科治療が中心ですが、新たな薬剤が登場すれば、もっと治療も行いやすくなるでしょう。また、若い医師の育成も、症例が多く集まるセンター化によって円滑になると思います」(松本部長)
 現在、いろいろな施設に分散している患者をセンターに集めれば、患者も迷うことなく、そこで的確な診断と治療を受けることが可能になる。同科には、毎年各大学から研修にくる若手医師を含め、現在9人の医師がセンター化に向けて力を注いでいる。
 「骨軟部腫瘍の患者さんの中には、まれな病気になったということで、ひどく落ち込む方がいます。そんな方々に笑顔を取り戻していただきたい。私たちは、 診断から治療終了までをなるべく短い期間で行うように努力しています。その一方で、短期間に良好な人間関係を構築しなければならないという難しい問題もあ ります。診断と治療の技術レベルの向上だけでなく、患者さんとの意思の疎通も重要なのです。そのための若い医師の教育も必要不可欠といえるのです」と松本 部長は言う。
 まれな病気になっても、患者が安心して治療を受けられるために、今もまい進中だ。


<データ>2010年度実績
☆手術総数369件(内悪性腫瘍手術148件)
☆骨原発悪性腫瘍26例
☆軟部肉腫108例
☆骨良性腫瘍87例
☆病院病床数700床
〔住所〕〒135-8550
東京都江東区有明3の8の31 
(電)03・3520・0111
2012年1月22日 ZAKZAK